「適切なケアマネジメント手法」と何か? ―正しい理解と実践現場での活用法―
2023/04/21

2021年に厚生労働省が公表した 「適切なケアマネジメント手法」 は、介護現場で指摘されているケアマネジメントの質のばらつきを改善し、一定の水準以上に保つことを目的とした手法です。
『月刊ケアマネジャー 2023年5月号』では、この手法がどのようなもので、現場でどう活かしていけばよいかについて解説した特集「『適切なケアマネジメント手法』と何か? ―正しい理解と実践現場での活用法―」を掲載いたしました。
ここでは、その内容を一部ご紹介いたします。
「適切なケアマネジメント手法」の基本を理解しよう
「適切なケアマネジメント手法」3つの疑問
ケアマネジメントの目的は、利用者の尊厳を保持し、その人らしい生活の継続を支えることです。その目的を達成するため、現場のケアマネジャーの諸先輩は「想定される支援内容」を見立てるための知見(手法)を積み上げてきました。
そうした知見によって得られた「想定される支援」のなかから「共通化できるもの」を体系化し、アセスメント・モニタリングの項目に整理したのが「適切なケアマネジメント手法」です。従来のケアマネジメントを否定したものではありません。
この「手法」は、「基本ケア」と「疾患別ケア」で構成されています。「基本ケア」は、すべての利用者に共通して「想定される支援」をまとめたもの。「基本ケア」に、疾患ごとに共通する知見を上乗せしたのが「疾患別ケア」です。
この「基本ケア」と「疾患別ケア」により、「想定される支援」を見立てる力の水準アップが期待されます。一定の水準が保持できれば、利用者ごとに異なる尊厳や生活のあり方をとらえるスキルも高まります。その点では、プランの標準化を目指すものではなく、むしろ利用者の個別性をきちんと反映させたプラン作成に必要なものです。
ケアマネジャーの知見の多くは、「個人の仕事のやり方」というレベル(暗黙知)にとどまり、後進のケアマネジャーに共有されづらいのが現実です。そのため、利用者の生活機能の維持・向上を図るのに、ケアマネジャーごとに「想定される支援」の見立てに抜け漏れが生じやすくなります。
ケアマネジャーの支援に抜け漏れが生じると、多職種によるケアチーム内でもサービス担当者会議等で「生活の継続のために何が必要か」を検討するための前提がバラバラになりがちです。
そこで、「適切なケアマネジメント手法」を通じて多職種が同じ方向を向いて検討を進めやすくするための「共通言語」が目指されました。
「適切なケアマネジメント手法」は、①アセスメント、モニタリング、プラン原案の作成時、②事業所内や同行訪問での指導の際、③研修や地域ケア会議の開催時、④保険者が多職種連携やケアマネジメント支援のしくみを検討する際、これら4つの場面での活用が想定されています。
ケアマネジャーにとっては、①が日々の実務での活用場面となります。気になるのは、アセスメントやモニタリングの詳細項目が膨大な数に上ること。もちろん、これらの情報を一気に収集するとなれば、利用者や家族にも大きな負担です。
この詳細項目は、たとえば、アセスメント等の後に目を通して自己点検に活用します。そして、未収集の情報(抜け漏れ)に気づいたら、そのなかから優先すべき項目を選び、随時追加の情報収集に活用します。
現場は「適切なケアマネジメント手法」をどのように受け入れている?
地域、事業所、ケアマネジャー、それぞれに温度差はあるが……
「適切なケアマネジメント手法」が示されてから、2年以上が経過しています。しかし、本誌のモニターアンケートでは、「知らない」「詳しくは読んでいない」という回答が目立ちます。
一方で、保険者によっては、すでに任意の研修を繰り返し行ったり、地元のケアマネジャーの連絡会で冊子を取り寄せたり、講師を招きながら勉強会を行っているケースもみられます。
ケアマネジャーごとに取り組み方に温度差があるようですが、なかには、「この膨大な項目を確認するのは、業務負担増につながるのでは?」という声もあり、そうした印象が前向きな取り組みを阻んでいる可能性もあります。
とはいえ、2024年度からの法定研修カリキュラムでは、「適切なケアマネジメント手法」に基づいて新たな科目内容が加わります。また、厚労省は保険者のケアプラン点検マニュアルの見直しを進めていて、同手法が反映される可能性は高いでしょう。現場の対応は待ったなしです。