“課題分析の結果”をどう考える? 文例で押さえるケアプラン第1表作成のポイント
2023/04/21

『月刊ケアマネジャー』2023年2月号の特集では、「“課題分析の結果”をどう考える? 文例で押さえるケアプラン第1表作成のポイント」と題し、ケアプラン第1表作成のポイントを紹介しました。
本記事では、その一部を抜粋し、ケアプラン新様式における第1表「課題分析の結果」※をどのように考え、書けばよいのか、そのヒントを紹介します。
※本記事では、「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」欄を指して第1表と表現します
ケアプラン点検者が解説!
ケアプラン第1表のよくあるNGな書き方と適切な書き方
現場でよくあるNGな第1表の書き方を取り上げ、表現などをどのように改めればよいか、そのポイントをケアプラン点検者である阿部充宏氏が解説します。
ケアプラン第1表を書くための6つの極意
極意1
利用者や家族の意向を具体的に記載する
利用者や家族の意向(希望)は、具体的に聞き取れるほど、本人たちが描く具体的な生活像に基づいたケアプランの立案をしやすくなります。次のように意向を掘り下げる聞き方を心がけましょう。
【例】
- 長女:「母親らしく暮らしてほしい」
- ケアマネジャー:「長女さんが考える『お母さんらしさ』とはどういうことですか」
- 長女:「母は清潔好きで、常に家の中も、自分の身だしなみも綺麗にしていました」
極意2
利用者が受ける印象に配慮した言葉づかいを意識する
「課題分析」という言葉に利用者がどのような印象を受けるかを考えることが重要です。
たとえば、アセスメント面接を行う際に、「これから〇〇さんの課題を抽出し、その内容を分析していきますね」と伝えているケアマネジャーはいないはずです。利用者が受ける印象などを考慮して、多くの人が「これからさまざまなお話や状況を聞かせていただきながら、一緒に今後のことを考えさせてください」などと伝えているでしょう。
ケアプランに記載する文章もこれと同様です。筆者は「課題分析の結果」という文言を避け、「今後の方向性」という見出しをつけるようにしています。利用者が受ける印象に配慮した言葉づかいを意識しましょう。
フェルトニーズとノーマティブニーズが合致している場合
現場でよくあるNGな記載例
【利用者及び家族の意向を踏まえた課題分析の結果】
本人:ここ最近になり、歩きがよたよたしている。腰が痛くて動くのがつらい。これからも楽しく元気に暮らしていきたい。
家族:本人なりに自分のことをしている。本人には自分らしく暮らしてほしい。今後も家族としてできることはしていく。
【今後の方向性(課題分析の結果)】
ご本人・家族の意向をふまえ、外出の機会をつくり身体を動かすことで体力の維持を図り、元気に過ごしていけるよう支援する。
課題分析の結果のココがNG!
具体的な支援の内容が書かれていない
Aさんは歩行時のふらつきに自覚があり、かつ、自分のことは自分で行いたいと考えています(フェルトニーズ)。一方、ケアマネジャーは、Aさんの様子から「腰痛等があり、身体を動かす機会が低下している」とアセスメントするでしょう(ノーマティブニーズ)。この部分を具体的に「課題分析の結果」として落とし込む必要があります。
しかし、記載例の「課題分析の結果」には、利用者や家族の意向が書かれておらず、支援の内容も抽象的で、不十分なものとなっています。
こんなところもNG!
①抽象的な表現が多用されている
たとえば、「ここ最近」という表現を用いていますが、本人の自覚する「最近」とはいつかがわかりません。具体的にいつ頃を指すのか、「○年○月頃より」など、具体的な表現が必要です。
②利用者の意向を把握できない
「楽しく元気に暮らしていきたい」との記載はありますが、本人が考える「楽しさ」「元気な暮らし」とは何かがわかりません。利用者本人がどのような意向(どうしたい・〇〇はしたくない)を抱えているかを具体的に表現する必要があります。
適切な考え方と書き方の例
【利用者及び家族の意向を踏まえた課題分析の結果】
本人
1. 令和4年10月頃よりふらつくことがあるが、自分の身の回りのこと(特にトイレと洗濯)は自分でやりたい。
2. 寒い時期は腰が痛くて動くのがつらいが、運動をする機会は減らしたくない。
3. 月に数回の友人との趣味の時間を大切に続けていきたい。
長男の妻
1. 共働きなので、今も本人が頑張ってくれている身の回りのことは継続してほしい。
2. 寒い時期(冬)になると、腰痛もあるが運動量が減り、元気もなくなることが2~3年前からあるので、その部分をサポートしてほしい。
【今後の方向性(課題分析の結果)】
ご本人の「自分の身の回りのことは自分がする」「友人との趣味の時間が大切」という思いを継続していくため、体を動かす機会(自宅・通所介護)を減らさないようにします。その際、腰痛の状況と運動の量については医師とも相談していきましょう。
課題分析の結果はこう書く!
まずは意向を整理。
次にケアマネの判断を記載する
Aさんは、「自分のことは自分で行いたい」と考えており(フェルトニーズ)、これは「身体を動かす機会が必要」というケアマネジャーの判断(ノーマティブニーズ)と矛盾するものではありません。そのため、腰痛を加味して活動性を高める方法を具体的に記載するのがよいでしょう。
ここでは、まずは「自分の身の回りのことは自分がする」「友人との趣味の時間が大切」という利用者の意向を整理しました。そのうえで、ケアマネジャーによる課題分析の結果と利用者の意向を照らし合わせ、今後の方向性として具体的に記載しています。こうすることで、「本人が真に望む暮らし」をふまえた支援となります。
こんなところもGOOD!
①具体的な表現を多用している
「歩きがよたよたしている」という表現が「ふらつくことがあるが、自分の身の回りのことは自分でやりたい」に置き換わったことで、利用者の具体的な状態像が浮かび上がってきます。
②意向に対する状態像が明確である
具体的にいつからふらつくようになったのか、自分でやりたいことは何か、その障害となることは何かなど、利用者や家族の意向を具体的に引き出したことで、意向に対する状態像が明確になっています。
月刊ケアマネジャー 2023年2月号 特集
Chapter 1
アンケートで見る
ケアプラン第1表の悩みと不安
Chapter 2
ベテランケアマネに聞く!
ケアプラン第1表 考え方と記載例
Chapter 3
ケアプラン点検者が解説!
ケアプラン第1表のよくあるNGな書き方と適切な書き方