精神保健福祉士 わたしの合格体験記(第5回)

2025.12.26

今年の合格者にご登場いただきました。

ペンネーム:馬刺しさん(田園調布学園大学人間福祉学部社会福祉学科令和7年卒業)


受験の動機

小さい頃から身近だった「福祉」への道

 私は小さい頃から人と関わることが好きで、将来はそれを生かせる仕事に就きたいと考えていました。高校3年生での進路選択の際には、心理学などを学ぶことも考えましたが、親の職業や、家族が精神疾患で苦しんでいた影響から、精神保健福祉士になって、実践的な仕事がしたいと思うようになりました。

 私の周りには、保健所で働いていた父、ダウン症の叔母、統合失調症の祖父、そして認知症の祖母がおり、常に福祉を身近に感じる環境でした。特に祖母の介護では、もともと「人のことが気になる性格」だったこともあり、介護を主に担っていた母を放っておけず、私自身がヤングケアラーのような役割を果たす時期もありました。このような経験を積み重ねるなかで、「まずは身近な人の役に立ちたい」という思いが芽生え、精神保健福祉士を志すに至りました。

 進学先を決める際には、社会福祉士とのダブル受験が可能であることから田園調布学園大学を選びました。「両方取れればいいな」という前向きな気持ちで、挑戦することを決めました。


試験当日までの道のり

まずはできることから

本格的に試験対策の勉強を始めたのは、大学4年生の7月頃です。それまで受験勉強の経験があまりなかったため、やる気はあってもなかなか動けない時期が続きました。当初は「1日8時間勉強」という高い理想を掲げていましたが、まずは電車内で一問一答形式の書籍を使って問題を解くなど、できることから始め、徐々に1日3~5時間の学習リズムを作っていきました。

今日は分からなくても…

試験対策は、大学の授業で指定されていた受験対策書4冊(『過去問解説集』、『ワークブック』、『一問一答+α(共通科目)』、『合格一問一答(専門科目)』(いずれも中央法規出版))を使用して進めました。『過去問解説集』は3周解いて、単なる暗記ではなく「なぜこうなるのか」という理屈を理解することに重点を置きました。また、学習中は、「今日は分からなくても試験当日までに分かっていればいい」と楽観的に考えるようにしました。「精神保健福祉制度論」などの難しい科目で煮詰まった時は、好きな科目の勉強を挟んで気分転換するなど、真正面からぶつかりすぎて燃え尽きないようにしました。

徹底的に使い込んだ4冊

 

反骨精神をバネに

学内での成績の低さから、周囲から冗談半分で「ダブル合格は無理」と言われたこともありましたが、それが「見てろよ!」という自分の反骨精神に火をつけました。満点を目指すつもりで勉強しようと決意し、『ワークブック』を隅々まで読み込みました。最終的に、本の内容をほぼ全体覚えるほどまで読み込みました。こうしたことが、社会福祉士と精神保健福祉士のダブル合格につながったのだと思います。


合格の秘訣

自分を追い込む

1日のスケジュールを立てる時、あえて夜にアルバイトのシフトを入れることで、昼間のうちに勉強をしなければならない環境に自分を追い込みました。そして、図書館や喫茶店をハシゴして集中力を維持しつつ、アルバイトまでの限られた時間で勉強をこなしていきました。

 

適度に気分転換も

 勉強に行き詰まった際には、運動をすることで気分転換をしていました。星野源さんのラジオ番組で聴いた「頭が疲れたら体を動かせ」というアドバイスに従い、腕立て伏せやランニング、散歩を取り入れました。

 また、映画鑑賞も時間が決まっているためダラダラせず、脳をスッキリさせるのに効果的でした。サウナも、閉鎖された空間で、強制的に休息が取れる環境なのでオススメです。逆に、SNSやゲームは終わりがなく、脳が休まらないため控えたほうが良いと思います。

      トレーニングの必需品
        愛犬とお散歩

精神保健福祉士として働く

「板挟み」だからこそできる寄り添い

 現在は精神科病院で、院内勤務のケースワーカーとして働いています。入院患者さんの支援から外来の相談対応までこなす、いわば「何でも屋」です。面談以外の突発的な業務も多く、仕事が溜まりがちで苦労することもあります。就職する前は面談中心の業務と思っていたので、ギャップを感じています。

 先輩からは「医者と患者・家族の間で板挟みになるのが仕事」と言われました。患者さんの治療方針を決める際など、精神保健福祉士に最終的な決定権があるわけではないからです。そこはモヤモヤするところですが、決定権がないからこそ、退院支援の業務などで、患者さんと楽しい話をしたり、自由に関わったりできる良さがあると感じています。患者さんからは厳しいお言葉をいただくこともありますが、感謝されることも多く、やりがいのある仕事です。

 

専門職としての自覚

今はまだ、目の前の業務をこなすのに精一杯で、正直なところ、専門職として働いている自覚があまりなく、精神保健福祉士の資格を生かし切れていないように思います。今後は、自分で患者さんの「見立て」をしっかりできるようになることを目標に、精神保健福祉士としての専門性を意識し、制度や知識の理解を深めていきたいと考えています。


受験者へのエール

コツコツやった人が勝つ!

 国家試験とはいえ、あまり重く捉えすぎないでください。今使っている教材を信じて、試験前日までコツコツ勉強を続けていれば合格できます。高度なセンスは必要ありません。実際に精神保健福祉士になってからの仕事も地味なことの積み重ねですので、今の努力は将来必ず役に立ちます。

 今、「自分は十分に頑張れていない」と感じている人も、ラストスパートでまだ間に合います。新しいことには手を出さず、今まで使ってきた教材で繰り返し勉強してください。「最後は運だ」という感じで気楽に考えて、気負いすぎずに挑んでください。

 

初心を忘れないで!

福祉の世界は、多くの人の人生に触れることができる、とても魅力的な場所です。皆さんが抱いている「人が好き」「誰かのために」という初心を忘れずに、ぜひこの業界に飛び込んできてください。同じ業界で皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!