◎令和6年前期・後期 保育士試験「造形」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント

2025.04.09

 

喜多﨑 薫(きたざき かおる)
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ東京校非常勤講師、あさか保育人材養成学校講師


近年の出題傾向

令和5年、6年とも、前期日程では造形の出題数は4問、後期日程では5問となりました、
前期の4問では「表現技法」についての問題が出題されませんでしたが、 『合格テキスト』 の5つのテーマすべてをしっかり学習しておくことが望まれます。
近年の傾向は大きく変わった印象はありませんので、これまでとおりの学習でじゅうぶん答えられる問題となっています。

 

(1)発達年齢と造形表現の特徴

令和6年の前期・後期では、「前図式期」や「図式期」の記述について出題されましたが、同時に、発達年齢と造形表現の関係性については、
・経験によって影響され個人差があること
・世界的に共通性があること
等が問われるなど、より深い理解度が求められています

 

子ども達の造形表現は、発達の指標として技術指導を行うようなものではなく、自身の運動的機能の発達、コミュニケーションや経験による知的発達と関係が深いことなど、子ども達一人ひとりに寄り添う学習が求められています。

 

(2)色彩の知識

令和6年の前期<問題9>は、色相環で近しい場所にある類似色や離れた場所にある反対色、完全に180度の位置にある補色など、それぞれの混色結果の知識とあわせて解答する問題でした。
令和6年の後期<問題9>は、水彩絵の具の単一の色相(試験では青)について、彩度や明度を変化させる混色の知識について解答する問題でした。
どちらも保育の現場での事例に基づいた出題でした。必要とされる知識として、「三属性」「色相環」「混色」のみの単独の知識ではなく、「混色による三属性の変化」や「色相環と色の性質」など、複数の項目での学習を応用した理解度が求められています

 

(3)表現技法

令和6年後期<問題10>は、「コラージュ」「デカルコマニー」「フロッタージュ」「スクラッチ」「スタンピング」の技法に対して名称の正誤を問う問題でした。
令和4年後期、令和5年前期、令和6年前期では、表現技法として単独の知識が問われる出題はありませんでしたが、これまでも「バチック」「コラージュ」「スタンピング」「フロッタージュ」「デカルコマニー」「フィンガーペインティング」「モノタイプ」等々のモダンテクニックについて、名称と技法を結びつける問題や、用いる材料の準備や制作手順、絵本で用いられている例など、幅広く出題されています

 

表現技法では、画材や素材、用具や道具などの表現活動の材料の特徴がそのまま技法の特徴となることがあります。また、身近な絵本の中で用いられている表現技法についての出題もあります。
「造形」の分野を単独で考えるのではなく、「表現」のひとつとして大きく捉えることも必要です。

 

(4)表現活動の材料

画材や素材、用具や道具などの知識は毎年必ず出題されているので、とても重要なテーマです
令和6年前期<問題10>の「でんぷん糊」は代表的な画材のひとつで、描画材、はさみ、のこぎりなどの用具、粘土とならび保育の現場では欠かせない画材です。

 

一方で、令和6年後期<問題11>は、自然の造形素材として使われる「どんぐり」についての○×問題で、「コナラやクヌギ等の木の果実である(○)」「虫食い穴があると水に沈む(×)」「縄文時代に食料だった(○)」など、造形素材としての必要な性質とは少し離れた知識が問われました。

 

過去には「牛乳パック」や「ビニール紐」など身の回りの素材の知識が出題されることもありました。
実際に子ども達と表現活動をする場面を想像し、学習した知識だけではない、子ども達とのコミュニケーションも含めた、より実践的で応用的な考え方が求められています。

 

(5)形態と構成の理解

令和6年前期<問題12>の「切り紙あそび」に見られるような立体造形についての問題は、紙を折った時と広げた時の形の関係を想像する力が求められ、過去10年でも出題回数が多い傾向にあります
令和6年後期<問題12>は、劇遊びにおける大道具の前後関係を正しく解答する問題でした。この二つの問題は一見全く違う傾向の出題に見えますが、どちらも形の変化を空間的に想像する力が求められるものです。

 

造形の出題には折り方や切り方などの構造や、動きの仕組みなどが理解できないと解答できない問題が例年出題されています。
一方向からでなく上下左右や裏側など、形態を空間的に想像する力、応用的な造形感覚が求められる傾向が続いています

 

今後の試験に向けた受験対策、勉強の進め方

基本的な学習の仕方

造形の分野では、5つの項目についての基礎知識がもっとも重要です。
特に「発達年齢と造形表現の特徴」は、造形の分野の中では応用的な出題が少なく、知識でほとんどカバーできる部分です。

 

近年の特徴としては、保育の現場で起こりうる事例形式の出題が多くなってきました。
また、穴埋め問題では、まったく関連性のない語句が記載されていることもありますので惑わされず、前後の文章にも注意して読み解きましょう。

 

問題文の事例のように、実際の現場では、基本的な知識だけでは解決できない、わからないことが多くあります。その時に大切なのが知識に基づいた応用力です。表現のひとつである造形は子どもの内面からの表出ですから、心理に関わることもあり複合的な理解が必要です。

 

『合格テキスト』 では5つのテーマに分けられていますが、ひとつのテーマやジャンルにこだわらず、広く「表現」について考えられる柔軟性をもちましょう

 

覚えるだけでなく体験する

「表現」は、文字で覚える以上に、実際の体験がとても力になります
テキストだけに頼らず、少しでも実際に絵の具を使って混色したり、糊で貼ったり、はさみで切ってみたりすることを心がけましょう。手の感触、視覚的な刺激は何よりも心に残ります。

 

また、モダンテクニックも実際に表現してみると、手順の重要さや注意点が理解できます。小さくてもよいのでまずは気軽にやってみてみましょう。
その時に「うまくできない」体験ができたらとてもラッキーです。「どうしてだろう」という疑問をもつこと、「こうやったら?」の解決策を考えたことは、いちばんの力になります。

 

造形感覚を養う

例年出題される「形態と構成の理解」の応用問題は、「構造や仕組み」「加工の前と後の変化」が大きな特徴です。
試験問題では、実際にその場で動かしたり、切ったりできるわけではないので、どうしても図だけを頼りに「頭の中で想像する力」が必要になります
知らないこと、体験したことがないことはなかなか想像しづらいので、一度やってみましょうと言いたいところですが、出題される領域があまりに広いので現実的には難しいです。

 

ここで助けになるのが、「ものを見る力」です。日常生活で目にするもの、さわったり、動かすものを、少しゆっくり角度を変えて観察してみましょう。
牛乳パックやアイスクリームのカップ、ヨーグルトの容器など、リサイクルのために広げたら、どんな形になっているでしょうか。ドアのレバーを下げたらどうして開くのでしょうか。
こうしたちょっとした観察での「へえ〜こんな形なんだ」とか、「こうなっているんじゃないか?」という経験や想像が「造形感覚」を養います。

 

また、空間的な感覚は、実は折り紙でも養われます。
子ども達と折るような基本的なものだけでなく、少し複雑な難しい折り方に挑戦していくと、解説図(平面)と折っている紙(立体)の関係を考えることで空間的な感覚が身につき、応用力がついてきます。

 

もっと問題を解きたい人は合格アプリ!

    保育士 合格アプリ2025
   一問一答+穴埋め

   『よく出る!保育士試験<過去問>一問一答2025』のアプリ版!
    保育士試験10回分から頻出問題1,456問を収載。繰り返しの学

    習に最適です。

  •     詳細は こちら から
  •                     ダウンロードはこちらから

  •   
  • ※この商品は、スマートフォンとタブレットでご利用いただけます。パソコンでは操作できません。
  •  

  • 受験対策図書 の情報はこちら!

受験対策コンテンツによりアクセスしやすい! けあサポ・アプリ版

けあサポ ―介護・福祉の応援アプリ―

                 

 受験対策コンテンツを資格ごとに見やすく配置し、「今日の一問一答」や「今

 週の穴埋め問題」「受験対策講座」にスムーズにアクセス!受験対策書籍の新

 刊やセミナー情報も配信。

  •  ダウンロードはこちらから
     

  • ※ 上記リンクから閲覧端末のOSを自動的に判別し、App StoreもしくはGoogle playへと移動し、ダウンロードが可能です。