平成19年22.8%、18年20.5%。ここ数年、介護支援専門員実務研修受講試験の合格率は約20%で推移しています。いまや社会福祉士国家試験よりもハードルの高い、介護・福祉関係の資格試験では最難関のものといえるでしょう。晴れて合格─の後にも、ケアマネジャーの基本となる業務への姿勢、技術などを学ぶ「介護支援専門員実務研修」が控えています。実務に就く前の最後の頑張りどころ、実務研修について概説します。
Vol.41 難関突破の後は─介護支援専門員実務研修を知ろう!(7)ケアマネジメントの展開技術
特定非営利活動法人神奈川県介護支援専門員協会理事
社会福祉法人いきいき福祉会 ラポール三ツ沢開設準備室長
荻原満寿美
最終回となる今回は、実務研修カリキュラムの「ケアマネジメントの展開技術」についてお話したいと思います。
ご存じのとおり、ケアマネジメントはソーシャルワーク・相談援助の手法の一つです。ケアマネジメントの理解だけでは、本来的な相談支援の目的を達成するのは難しいことです。特に、面接が基本となるケアマネジャーにとって、「面接技術」を習得することは重要なことです。
この講義は、ケアマネジャーに必要なケアマネジメントに関連した技法・手法を学ぶことを目的としています。関連技術にはさまざまなものが挙げられますが、その例として、『四訂介護支援専門員実務研修テキスト』(財団法人長寿社会開発センター)では、以下の3つの内容をケアマネジメントの展開技術の例として紹介しています。
(1)相談面接技術の理解
面接とは何か、そして、コミュニケーション技術などを学びます。
(2)チームアプローチ演習とサービス担当者会議
介護サービス担当者や医療分野の関係者との連携やチームでの協働を考え、連絡方法やサービス担当者会議を円滑に行う方法などを学びます。
(3)意見交換・講評(ファシリテーターの役割など)
ケアマネジャーの研修には、グループワークは欠かせません。グループワークを円滑に実施するための手法を学びます。
ご存じのとおり、ケアマネジメントはソーシャルワーク・相談援助の手法の一つです。ケアマネジメントの理解だけでは、本来的な相談支援の目的を達成するのは難しいことです。特に、面接が基本となるケアマネジャーにとって、「面接技術」を習得することは重要なことです。
この講義は、ケアマネジャーに必要なケアマネジメントに関連した技法・手法を学ぶことを目的としています。関連技術にはさまざまなものが挙げられますが、その例として、『四訂介護支援専門員実務研修テキスト』(財団法人長寿社会開発センター)では、以下の3つの内容をケアマネジメントの展開技術の例として紹介しています。
(1)相談面接技術の理解
面接とは何か、そして、コミュニケーション技術などを学びます。
(2)チームアプローチ演習とサービス担当者会議
介護サービス担当者や医療分野の関係者との連携やチームでの協働を考え、連絡方法やサービス担当者会議を円滑に行う方法などを学びます。
(3)意見交換・講評(ファシリテーターの役割など)
ケアマネジャーの研修には、グループワークは欠かせません。グループワークを円滑に実施するための手法を学びます。
面接技術を学ぶために
先に述べたように、ケアマネジャーの仕事の基本は面接による相談援助です。上記の3つのなかで核となるのは、「(1)相談面接技術の理解」といっていいでしょう。皆さんは、ケアマネジャーの業務の中で、面接がどの程度大切なものか考えてみたことはありますか? ケアマネジャーの仕事にはさまざまな側面があり、多様な能力が求められますが、常に中心にあり、また出発点となるのが面接です。面接の質は仕事の質に直結すると言っても過言ではありません。
とはいえ、面接技術は研修を受けたからといって簡単に身につくものではありませんし、ベテランのケアマネジャーでも難しさを感じるものです。神奈川県介護支援専門員協会が実施したケアマネジャーの実態調査のアンケートでも、研修を受けたい講義として「面接技術」を挙げる回答が最も多く寄せられました。
その理由としては、
・利用者や家族の気持ちをうまく聞き出せるようになりたい。理解を深めたい。
・利用者、家族や関係機関との信頼を得たい。
・ケアプランを作成し利用者に伝えるために、アセスメントが上手になりたい。
・利用者や家族の意見が違い、困ることがある。なんとか解決したい。
・本当は介護サービスを使ってほしいが、理解してくれない。
など、さまざまなものがありました。
多くの人が難しさを感じている面接技術をどのように学んでいけばよいのでしょうか?
まず、面接をいくつかの要素に整理してみましょう。これによって何がポイントなのかが見えやすくなります。私自身は、以下の3つに整理してとらえています。
1 ケアマネジメント(プロセス)の意義に沿った面接
2 コミュニケーション技術
3 面接の環境整備と設定
1は、ケアマネジャーが支援する過程で、ケアマネジメントプロセスに沿いながら、その時々の目的に応じた面接を行わなければならないということです。
例えば、インテーク(初回)面接は、とてもデリケートです。ケアマネジャーが信頼を得られるかどうかのとても大切な場面。どのように耳を傾けるのか、何を質問するのか─インテーク面接という目的を考えて実施することが必要です。
また、モニタリングの面接は、本来はケアプランの目標が達成されているか、または新たな課題がないかを確認する面接になります。しかし─私自身も経験したことですが─定期的なモニタリング訪問は、次第に本来の目的からそれてADLの確認や利用票を渡すだけとなってしまうことがあります。利用者や家族が本来のモニタリングの意味を理解していない訪問面接はお互いに負担となり、信頼関係が壊れてしまったり、新たな課題を見逃すといった危険性もあります。「今日の面接の目的は…」と常に念頭に置くことも、ひとつの技術と言えるのではないでしょうか。
2のコミュニケーション技術は、多くの方が興味のあるところだと思います。利用者への声掛け、質問の仕方、話の聴き方……前職でも、皆さんが日頃から注意して実施していたことだと思います。
コミュニケーションの技法はさまざまな分野で、多くの手法が開発されています。それらを習得し使えるようになるにはトレーニングも必要で、一朝一夕にはできません。講義でもすべてを学ぶことはできないと思いますが、まず、基本となる「うなずき」の技法や「オープンクエスチョン(相手がより話しやすい、語りやすい質問の仕方)」や「クローズドクエスチョン(イエス・ノーをはっきり引き出す質問の仕方)」などを習得しましょう。
3は、面接を行ううえでの「配慮」ともいえる事項です。
例えば、
・面接時間の長さはどのくらいが適当か?
・面接場所はどこか? プライバシーに配慮しているか?
・面接の際、利用者(家族)はどこに位置し、ケアマネジャーはどこに位置しているか?
などの、利用者の負担や話をしやすい環境への心配りです。
目的、技術、環境、この3つの要素を意識していくことで、自分の課題が明確になり、どこを補っていけばよいのかがはっきりすると思います。
また、面接でもうひとつ大事なのが「振り返り」です。
・面接の目的を達成し、残されている課題を整理・共有できたか?
・次回の面接の予定と内容を伝えたか?
・面接で、相談者を安心させることはできたか?
常にこうした点について自分の実施した面接について振り返り、評価することもケアマネジャーにとって大切なことだといえるでしょう。
ケアマネジメントにはどんな課題でも解決できる公式はありません。利用者や家族は一人ひとりが異なる人生を歩み、それぞれの価値観を持っています。だからこそ支援するケアマネジャーも面接技術を深め、どのような人にでも対応できるようにしなければならないのです。
各都道府県で、実務研修が始まっていることと思います。研修のグループワークでは、参加する仲間の色々な意見が交わされると思います。日頃感じていることを出しあい、共有することをぜひ、楽しんでいただきたいと思います。連載の最後に、これから仕事をするうえで参考になる本をご紹介します。
◆『四訂介護支援専門員実務研修テキスト』財団法人長寿社会開発センター
◆NPO法人 神奈川県介護支援専門員協会編集『介護支援専門員実践ハンドブック―実務従事者基礎・専門・更新研修対応』 中央法規出版
基本テキストはケアマネジャー試験をくぐり抜けてきた皆さんにはおなじみのものですが、大切な部分を網羅しているので、迷った時に開いてみると役立つことも少なくありません。後者は基本テキストに比べ、より実践的な内容となっています。ソーシャルケースワークまで幅を広げているので、ソーシャルワークの経験のないかたに特にオススメです。
とはいえ、面接技術は研修を受けたからといって簡単に身につくものではありませんし、ベテランのケアマネジャーでも難しさを感じるものです。神奈川県介護支援専門員協会が実施したケアマネジャーの実態調査のアンケートでも、研修を受けたい講義として「面接技術」を挙げる回答が最も多く寄せられました。
その理由としては、
・利用者や家族の気持ちをうまく聞き出せるようになりたい。理解を深めたい。
・利用者、家族や関係機関との信頼を得たい。
・ケアプランを作成し利用者に伝えるために、アセスメントが上手になりたい。
・利用者や家族の意見が違い、困ることがある。なんとか解決したい。
・本当は介護サービスを使ってほしいが、理解してくれない。
など、さまざまなものがありました。
多くの人が難しさを感じている面接技術をどのように学んでいけばよいのでしょうか?
まず、面接をいくつかの要素に整理してみましょう。これによって何がポイントなのかが見えやすくなります。私自身は、以下の3つに整理してとらえています。
1 ケアマネジメント(プロセス)の意義に沿った面接
2 コミュニケーション技術
3 面接の環境整備と設定
1は、ケアマネジャーが支援する過程で、ケアマネジメントプロセスに沿いながら、その時々の目的に応じた面接を行わなければならないということです。
例えば、インテーク(初回)面接は、とてもデリケートです。ケアマネジャーが信頼を得られるかどうかのとても大切な場面。どのように耳を傾けるのか、何を質問するのか─インテーク面接という目的を考えて実施することが必要です。
また、モニタリングの面接は、本来はケアプランの目標が達成されているか、または新たな課題がないかを確認する面接になります。しかし─私自身も経験したことですが─定期的なモニタリング訪問は、次第に本来の目的からそれてADLの確認や利用票を渡すだけとなってしまうことがあります。利用者や家族が本来のモニタリングの意味を理解していない訪問面接はお互いに負担となり、信頼関係が壊れてしまったり、新たな課題を見逃すといった危険性もあります。「今日の面接の目的は…」と常に念頭に置くことも、ひとつの技術と言えるのではないでしょうか。
2のコミュニケーション技術は、多くの方が興味のあるところだと思います。利用者への声掛け、質問の仕方、話の聴き方……前職でも、皆さんが日頃から注意して実施していたことだと思います。
コミュニケーションの技法はさまざまな分野で、多くの手法が開発されています。それらを習得し使えるようになるにはトレーニングも必要で、一朝一夕にはできません。講義でもすべてを学ぶことはできないと思いますが、まず、基本となる「うなずき」の技法や「オープンクエスチョン(相手がより話しやすい、語りやすい質問の仕方)」や「クローズドクエスチョン(イエス・ノーをはっきり引き出す質問の仕方)」などを習得しましょう。
3は、面接を行ううえでの「配慮」ともいえる事項です。
例えば、
・面接時間の長さはどのくらいが適当か?
・面接場所はどこか? プライバシーに配慮しているか?
・面接の際、利用者(家族)はどこに位置し、ケアマネジャーはどこに位置しているか?
などの、利用者の負担や話をしやすい環境への心配りです。
目的、技術、環境、この3つの要素を意識していくことで、自分の課題が明確になり、どこを補っていけばよいのかがはっきりすると思います。
また、面接でもうひとつ大事なのが「振り返り」です。
・面接の目的を達成し、残されている課題を整理・共有できたか?
・次回の面接の予定と内容を伝えたか?
・面接で、相談者を安心させることはできたか?
常にこうした点について自分の実施した面接について振り返り、評価することもケアマネジャーにとって大切なことだといえるでしょう。
ケアマネジメントにはどんな課題でも解決できる公式はありません。利用者や家族は一人ひとりが異なる人生を歩み、それぞれの価値観を持っています。だからこそ支援するケアマネジャーも面接技術を深め、どのような人にでも対応できるようにしなければならないのです。
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各都道府県で、実務研修が始まっていることと思います。研修のグループワークでは、参加する仲間の色々な意見が交わされると思います。日頃感じていることを出しあい、共有することをぜひ、楽しんでいただきたいと思います。連載の最後に、これから仕事をするうえで参考になる本をご紹介します。
◆『四訂介護支援専門員実務研修テキスト』財団法人長寿社会開発センター
◆NPO法人 神奈川県介護支援専門員協会編集『介護支援専門員実践ハンドブック―実務従事者基礎・専門・更新研修対応』 中央法規出版
基本テキストはケアマネジャー試験をくぐり抜けてきた皆さんにはおなじみのものですが、大切な部分を網羅しているので、迷った時に開いてみると役立つことも少なくありません。後者は基本テキストに比べ、より実践的な内容となっています。ソーシャルケースワークまで幅を広げているので、ソーシャルワークの経験のないかたに特にオススメです。