受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
ギルバート・グレイプ(映画)
監督:ラッセ・ハルストレム
きれいごとだけではないけれど、前向きになれる映画
障害のある人が登場する映画(映画に限らずですが)というと、「感動」「涙」「心温まる」など、きれいごとを並べているだけの印象があり、正直、苦手意識がありました。が、この作品は友人の強い薦めもあって観てみたところ、とても爽やかな気持ちになったので、今度は私から皆さんにこの映画をお薦めしたいと思います。この映画は、父親が自殺して以来、家族4人の面倒をみているギルバートという青年が主人公です。過食症で太った母親と、知的障害があり目を離すとすぐに騒動を起こす弟の面倒をみるギルバートには、自由な時間があるわけもなく、「家族の面倒をみる」という重圧に疲弊しています。そんなとき、トレーラーで旅をしている少女ベッキーと出会い、自由なベッキーに惹かれていく…という話です。
この映画のよさは、障害のある当事者ではなく、その兄を中心に描かれていることだと思います。「家族のために自分を犠牲にしているギルバート」という重い設定にも関わらず、ギルバート役のジョニー・デップの名演とアイオワののどかな風景が相まって、自分のなかにすんなりと入ってくるのが分かりました。さらに、ベッキーの「『大きい』なんて言葉、空には小さすぎる」という名言によって、自分のなかのもやもやした気持ちが風にのってさっと流れていくように感じました。
利用者の家族のなかには、ギルバートのように自分を犠牲にしていると感じている人も少なからずいると思われます。その一方で、「家族だから面倒をみなければ」という葛藤もあるでしょう。家族は、かけがえのない「絆」であると同時に、自分を束縛する「足かせ」にもなり得るということを感じざるを得ませんでした。
自分は今、「仕事」として介護を行っていますが、いざ自分の家族の介護に直面した場合、家族を「足かせ」と感じてしまうのではないか。でも、そんな自分も受け入れて、家族とともに前を向いて歩いていこう。この映画はそのように前向きな気持ちにさせてくれます。
「疲れたなぁ」「気持ちがもやもやするなぁ」と感じている人に、ぜひこの映画を観てもらいたいです。
(ジョニデさん・介護施設職員)
内容紹介
生まれてから一度も町を出たことがない青年ギルバートは、知的障害のある弟アーニー、過食症でクジラのように太った母親、2人の姉妹の面倒を見ている。亡き父の代わりに一家を支えなければならないギルバートは、夢や希望をもたず、ただ毎日を生きるだけ。そんなギルバートの前に、ある日トレーラー・ハウスで祖母と旅をする少女ベッキーが現れる。ベッキーとの出会いにより、ギルバートの心に少しずつ変化が…。主役のギルバートをジョニー・デップが、弟のアーニーを当時19歳のレオナルド・ディカプリオが演じ、ディカプリオは本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされた。