13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第30回 三宿則子さん
小規模多機能型介護事業所 介護職員
三宿さんが使った参考書
介護福祉士国家試験過去問題集
三宿さんの合格までの道のり
斜に構えて介護を捉える
介護は生活を支えるものとは言いますが、ともすると保険適用の範囲内でのサービスに留まり、広く生活を捉えることは介護とは別の問題になってしまうことも多いものです。これを捉え直すには、どこか俯瞰的に介護を眺める眼が必要なのかもしれません。
今回ご登場いただく三宿さんは、福祉系大学にて福祉の全体像を学んできた方です。三宿さんはお母さんの影響もあって、高齢者福祉が自分の進むべき道と、進学先を選ぶ段階から決めていました。大学の実習では障害者施設、高齢者施設、行政福祉窓口など、様々な福祉系の職場を経験します。その中で、介護においてもただ介護職が介護すれば生活の支援が成り立つと考えるのではなく、様々な社会資源の支援があって初めて、介護が豊かなものとなり、それこそが本当の生活支援であることを理解していたのでした。
三宿さんは、卒後は迷わず高齢者介護の道に進みます。そこで訪問介護、デイサービス、有料老人ホームと経験したのですが、腰痛を患ったことから休職。休職期間が長くなって、家でぶらぶらしていたところ、お母さんの知り合いであった現事業所の理事長さんから、「もてあましているより来て手伝って」と請われて、再び介護の仕事に戻ったのでした。現在の職場は、郊外型の住宅地の一角に設けられた小規模多機能型のホームです。要介護状態にあっても、住み慣れた土地で暮らしてもらいたいとの地域住民の働きでできた施設で、一部はケア付きの有料老人ホームとなっています。
三宿さんの介護への姿勢は、自分の趣味などの生き方を大事にしながら、その上で仕事に取り組むといったもの。バーンアウトしやすい職業だけに、この少し「斜に構えた」姿勢(理事長さんの言葉)が、10年にわたって継続して介護の仕事に就いてこられた秘訣と本人も思っています。今後もそのスタイルは変えないつもりです。
今回ご登場いただく三宿さんは、福祉系大学にて福祉の全体像を学んできた方です。三宿さんはお母さんの影響もあって、高齢者福祉が自分の進むべき道と、進学先を選ぶ段階から決めていました。大学の実習では障害者施設、高齢者施設、行政福祉窓口など、様々な福祉系の職場を経験します。その中で、介護においてもただ介護職が介護すれば生活の支援が成り立つと考えるのではなく、様々な社会資源の支援があって初めて、介護が豊かなものとなり、それこそが本当の生活支援であることを理解していたのでした。
三宿さんは、卒後は迷わず高齢者介護の道に進みます。そこで訪問介護、デイサービス、有料老人ホームと経験したのですが、腰痛を患ったことから休職。休職期間が長くなって、家でぶらぶらしていたところ、お母さんの知り合いであった現事業所の理事長さんから、「もてあましているより来て手伝って」と請われて、再び介護の仕事に戻ったのでした。現在の職場は、郊外型の住宅地の一角に設けられた小規模多機能型のホームです。要介護状態にあっても、住み慣れた土地で暮らしてもらいたいとの地域住民の働きでできた施設で、一部はケア付きの有料老人ホームとなっています。
三宿さんの介護への姿勢は、自分の趣味などの生き方を大事にしながら、その上で仕事に取り組むといったもの。バーンアウトしやすい職業だけに、この少し「斜に構えた」姿勢(理事長さんの言葉)が、10年にわたって継続して介護の仕事に就いてこられた秘訣と本人も思っています。今後もそのスタイルは変えないつもりです。
介護福祉士資格取得を勧められる
福祉系の大学の出身ではありますが、三宿さんの進学した大学では、介護福祉士資格取得のコースは設けられていませんでした。
三宿さんが介護福祉士資格取得を考えるようになったのは、理事長さんの勧めでした。それまで資格はあってもよいかとは思ってはいたのですが、それほど真剣に考えていたわけではありませんでした。実は、5年ほど前に一度、受験の申し込みをしたことがあるのですが、そのときは積極的に勉強するでもなく、試験当日も仕事が入ったのでキャンセルしてしまったといった経緯があります。しかし、改めて理事長から「そろそろ、どう」と言われ、今回は、この仕事をやっていく以上は、資格があってもよいかと、少し積極的な動機付けができたのでした。
三宿さんが介護福祉士資格取得を考えるようになったのは、理事長さんの勧めでした。それまで資格はあってもよいかとは思ってはいたのですが、それほど真剣に考えていたわけではありませんでした。実は、5年ほど前に一度、受験の申し込みをしたことがあるのですが、そのときは積極的に勉強するでもなく、試験当日も仕事が入ったのでキャンセルしてしまったといった経緯があります。しかし、改めて理事長から「そろそろ、どう」と言われ、今回は、この仕事をやっていく以上は、資格があってもよいかと、少し積極的な動機付けができたのでした。
短期間での効率的な勉強法は
この時点で、三宿さんが大学を出て8年が経っていました。それでも、授業で一通り福祉の学問体系を勉強していましたので、まったく一から勉強するのとは異なります。また、先の訪問介護の事業所では、事務の仕事も行っていたので、制度の運用についても、その後の法改正等を押さえればかなりの程度、得点できそうです。
8月に試験センターへの受験申し込みはしていましたが、そんな背景もあってか、実際に勉強体制に入ったのは10月になってから。事業所の紹介で民間の受験対策講座を受講することにしたのでした。この講座には、介護福祉士養成の専門学校から講師が来て、1日1〜2科目ずつ、3か月間に渡り各課目の受験のポイントを的確に指導していきます。
三宿さんは、試験本番まで4か月を切るという短期間に、14科目を網羅して深く勉強することは不可能だと考えました。それならば講師の先生の言葉を信用して、「教えられたことを徹底して確実に覚える」ことで、効率的な学習をしていこうと決めました。介護福祉士の養成課程のテキストを紐解けばわかりますが、深く学び出したらどこまでも勉強しないとなりません。それでは、「勉強すればするほど、十分な勉強ができているのか不安になるばかり」だと思ったのです。もちろん、短期間でそこまでの勉強ができるはずもありません。不安な気持ちのままでいると、気分転換もできずに、またどの知識も中途半端になるように思えます。そこで割り切って考えることにしたのでした。
8月に試験センターへの受験申し込みはしていましたが、そんな背景もあってか、実際に勉強体制に入ったのは10月になってから。事業所の紹介で民間の受験対策講座を受講することにしたのでした。この講座には、介護福祉士養成の専門学校から講師が来て、1日1〜2科目ずつ、3か月間に渡り各課目の受験のポイントを的確に指導していきます。
三宿さんは、試験本番まで4か月を切るという短期間に、14科目を網羅して深く勉強することは不可能だと考えました。それならば講師の先生の言葉を信用して、「教えられたことを徹底して確実に覚える」ことで、効率的な学習をしていこうと決めました。介護福祉士の養成課程のテキストを紐解けばわかりますが、深く学び出したらどこまでも勉強しないとなりません。それでは、「勉強すればするほど、十分な勉強ができているのか不安になるばかり」だと思ったのです。もちろん、短期間でそこまでの勉強ができるはずもありません。不安な気持ちのままでいると、気分転換もできずに、またどの知識も中途半端になるように思えます。そこで割り切って考えることにしたのでした。
過去問題集で自信をつける
講習では、テキストが特別に用意されているわけではありませんでした。各講師が必要な内容を整理して、講義のたびにペーパーを配布します。三宿さんはその都度、しっかりと講義内容をノートに書き留め、次の講義までの間、復習としてペーパーとノートを読み返して覚えました。また、それだけでは不足と考え、介護福祉士国家試験の過去問題集を購入し、早速全問を解いてみました。できている問題、得点率の高い科目はそのままにして、まずはできなかった科目に集中して改めて学習し直します。この過去問題集には、詳しい解説がついていて、講義内容と併せてそれを読み込みました。
1日の勉強時間は1時間程度。それも毎日というわけではなく、仕事の休憩時間や休みの日などを利用しました。休日も平日と同じ時間を当てました。というのは、試験一辺倒になってしまっても、気分転換ができずに、かって勉強の効率が悪くなると思えたからでした。集中するときには集中し、気分を切り替えて自分の趣味などを大切にする、それが三宿さんの流儀でもあるのです。
さて、過去問題集を解いてみて、特に得点率の悪かったのは、法制度系の科目と家政学だったので、そこに集中して勉強しました。ただし、福祉の歴史上の人物やその功績といった事柄については、大学時代に下地ができていましたので、この面ではかなり有利です。その他の科目については、仕事を通して制度を学んでいたので、講習で整理されることで試験のポイントがより把握できるようになりました。技術系の科目についても同様で、講師の解説と問題集の解説とで日々の仕事の裏打ちができました。
この講習会では、仕上げに模擬試験が行われました。三宿さんはほぼ満点近い得点が取れたので、筆記試験についてはある程度自信をもてたのですが、それでも直前になって、改めて過去問題集を全問を解き直してみました。ここでもほぼ得点ができたので、本番も落ち着いてやればできるとの感触をもっていました。マークシート方式による解答の仕方といったことも、学生時代に馴染んでいたので違和感はありません。むしろ、風邪など引かないように体調を管理することに気を遣いました。また、筆記試験会場は以前に訪れたことがあり、道順も知っていたので特に下見はしませんでした。
1日の勉強時間は1時間程度。それも毎日というわけではなく、仕事の休憩時間や休みの日などを利用しました。休日も平日と同じ時間を当てました。というのは、試験一辺倒になってしまっても、気分転換ができずに、かって勉強の効率が悪くなると思えたからでした。集中するときには集中し、気分を切り替えて自分の趣味などを大切にする、それが三宿さんの流儀でもあるのです。
さて、過去問題集を解いてみて、特に得点率の悪かったのは、法制度系の科目と家政学だったので、そこに集中して勉強しました。ただし、福祉の歴史上の人物やその功績といった事柄については、大学時代に下地ができていましたので、この面ではかなり有利です。その他の科目については、仕事を通して制度を学んでいたので、講習で整理されることで試験のポイントがより把握できるようになりました。技術系の科目についても同様で、講師の解説と問題集の解説とで日々の仕事の裏打ちができました。
この講習会では、仕上げに模擬試験が行われました。三宿さんはほぼ満点近い得点が取れたので、筆記試験についてはある程度自信をもてたのですが、それでも直前になって、改めて過去問題集を全問を解き直してみました。ここでもほぼ得点ができたので、本番も落ち着いてやればできるとの感触をもっていました。マークシート方式による解答の仕方といったことも、学生時代に馴染んでいたので違和感はありません。むしろ、風邪など引かないように体調を管理することに気を遣いました。また、筆記試験会場は以前に訪れたことがあり、道順も知っていたので特に下見はしませんでした。
実技試験は受験対策講座が有効
予想にたがわず1次試験は合格しましたが、三宿さんは介護技術講習会を受講していなかったので、2次試験を受験する必要がありました。実技試験については、普段の介護で行っていることなので、落ち着いてやればできると、当初は安易に考えていました。過去問題集には実技試験の過去問題も掲載されていたので、それを見る限りは難しいことはないと思ったのです。しかし友人の勧めで、友人の知り合いの勤務先で実技試験の受験対策講座が開かれるというので、それに参加したところ、そこで初めて実技試験で問われる事柄の実際が理解できたのです。
実技試験では、普段の介護では手を抜いてしまうような基本の基本といったことも、意識して突き詰めて行わなくてはなりません。声かけひとつ、また同意の一つを確認し、そして次の動作に進んでいきます。日々の介護ではともすると欠けてしまう事柄です。あえてそれを演じないと得点に結びつきません。これは指導してもらわないと分からない事柄でした。読み返してみると、実技試験の過去問題の解説にもそのことは書かれているのですが、意識しないと読み飛ばしてしまいます。
そして、人前で演技するということも、実技の講習はこれは効果が絶大でした。もしいきなり本番に入っていたならば、想定した手順どおりに演技はできなかったと思いました。
実技試験では、普段の介護では手を抜いてしまうような基本の基本といったことも、意識して突き詰めて行わなくてはなりません。声かけひとつ、また同意の一つを確認し、そして次の動作に進んでいきます。日々の介護ではともすると欠けてしまう事柄です。あえてそれを演じないと得点に結びつきません。これは指導してもらわないと分からない事柄でした。読み返してみると、実技試験の過去問題の解説にもそのことは書かれているのですが、意識しないと読み飛ばしてしまいます。
そして、人前で演技するということも、実技の講習はこれは効果が絶大でした。もしいきなり本番に入っていたならば、想定した手順どおりに演技はできなかったと思いました。
実技試験は、順番を待つ忍耐力も問われる
実技試験では、試験問題の漏洩対策として、受験生を閉じ込めてしまいます。そのため、いつ自分の順番が回ってくるのかもわからずに、ひたすら待つことになるのですが、それが辛かったと三宿さん。予備会場でまず試験会場に入るまで待機させられ、さらに本会場で控え室に入ってからも、自分の順番がいつなのか分かりません。心構えができないうちに、突然、呼び出されるといった感じで、精神的に追い詰められるので、そこにはリラックスの仕方を工夫するなど対策が必要なようです。ときとして、頭が真っ白になって、自分がどのように演じたのかもわからないといった人がいますが、もしかしたなら、突然に番が回ってきて、あたふたとしたまま演技することになってしまった、といったこともあるかもしれません。
さて、本番ではやはり講習会での勉強が役立ちました。介助動作の支援には、声をかけながらこれから行う支援の仕方を説明しながら進行していきますが、当日、利用者モデルとなったのは、なんと男子学生でした。この学生さん、三宿さんの前に既に何人もの受験者が演技を終えており、それらに疲れたのか、こちらが特に説明しなくても、自分で勝手に指示される形になってしまっていたそうです(でも、モデルの心情にまで思い至ることができたのですから、三宿さんはかなり落ち着いていたと想像されもしますが)。
三宿さんは演題の全てを終え、会場を後にすることができました。日々に行っている介護ではあっても、試験で問われるような形で介護していることは、実際にはほとんどありません。介護福祉士養成課程を出た学生ならば、そのような介護を行うことができるのかもしれませんが、そうした下地がなく現場経験だけの場合は、是非ともこうした講習会を受講することをお勧めしたいと三宿さん。それだけに、実技試験の経験者から「実際の状況を聞くことも大切だ」とのこと。
こうして介護福祉士資格を取得した三宿さんですが、今後は社会福祉士資格をとり、そしてケアマネジャーの資格なども必要に応じて取得しなくてはならないと思っています。実は、仕事の上でもこうした資格を求められる立場になってきてしまったからでもあるのですが……。
介護の世界は、とかく器の中で完結してしまいがちです。地域社会と隔絶し、特定の介護を提供することだけに日々汲々としていると、実は利用者本人だけでなく、介護する人も息苦しくなっていきます。特にこれからの高齢者は、自分の生活スタイルを大事にしながら、個別性を大切にした生き方を望むようになっていきます。そうした視点が、介護の場でも求められるようになっていくのです。そんなとき、ちょっと三宿さんのように斜に構えて、地域社会や自分自身の生活そのものを見渡してみると、介護に対する姿勢も変わっていくのではないでしょうか。
さて、本番ではやはり講習会での勉強が役立ちました。介助動作の支援には、声をかけながらこれから行う支援の仕方を説明しながら進行していきますが、当日、利用者モデルとなったのは、なんと男子学生でした。この学生さん、三宿さんの前に既に何人もの受験者が演技を終えており、それらに疲れたのか、こちらが特に説明しなくても、自分で勝手に指示される形になってしまっていたそうです(でも、モデルの心情にまで思い至ることができたのですから、三宿さんはかなり落ち着いていたと想像されもしますが)。
三宿さんは演題の全てを終え、会場を後にすることができました。日々に行っている介護ではあっても、試験で問われるような形で介護していることは、実際にはほとんどありません。介護福祉士養成課程を出た学生ならば、そのような介護を行うことができるのかもしれませんが、そうした下地がなく現場経験だけの場合は、是非ともこうした講習会を受講することをお勧めしたいと三宿さん。それだけに、実技試験の経験者から「実際の状況を聞くことも大切だ」とのこと。
こうして介護福祉士資格を取得した三宿さんですが、今後は社会福祉士資格をとり、そしてケアマネジャーの資格なども必要に応じて取得しなくてはならないと思っています。実は、仕事の上でもこうした資格を求められる立場になってきてしまったからでもあるのですが……。
介護の世界は、とかく器の中で完結してしまいがちです。地域社会と隔絶し、特定の介護を提供することだけに日々汲々としていると、実は利用者本人だけでなく、介護する人も息苦しくなっていきます。特にこれからの高齢者は、自分の生活スタイルを大事にしながら、個別性を大切にした生き方を望むようになっていきます。そうした視点が、介護の場でも求められるようになっていくのです。そんなとき、ちょっと三宿さんのように斜に構えて、地域社会や自分自身の生活そのものを見渡してみると、介護に対する姿勢も変わっていくのではないでしょうか。