13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第29回 加藤良子さん
訪問介護員
加藤さんが使った参考書
介護福祉士受験ワークブック(上)
中央法規出版
中央法規出版
介護福祉士受験ワークブック(下)
中央法規出版
中央法規出版
介護福祉士国家試験過去問題集
加藤さんの合格までの道のり
整った受験体制をもった事業所で
訪問介護の事業所は、中堅以上の事業体では、かなり研修体制が整っているところが多いようです。それは介護福祉士国家資格の受験講習も同様で、組織的にスタッフの資質を高めるために、様々な機会を提供しています。今回ご登場いただく加藤良子さんの所属する事業所もそんな取り組みが整っているところです。小規模な事業所では、内部で研修体制を整えるのは容易ではありません。国の基礎研修などを受講してもらうとしても、それにはお金と時間がかかりますので、スタッフに積極的に受講を勧めることも難しいかもしれません。このコーナーでこれまでに取り上げた方の所属する事業所等で、こうした組織的な研修体制を整えているところはありましたが、この事業所は規模が異なります。
ここでは、通年を通して資格向上のために何らかの研修を行っており、国家試験対策の講師としても外部の専門家などが担当し、ポイントをついた講習となることも多いのです。それだけに、個人で特に様々な情報を集めて、受験勉強をどのように進めていこうか、と模索しながら取り組んでいる受験生に比べると、しっかりと敷かれたレールの上で、それなりのペースで学習していると、自ずと一定の成果が得られ受験に臨めるといった背景があります。もちろん、講師の言葉をただ聞いていればそれで受かるわけではありませんので、ポイントを整理し、暗記すべきことはしっかりと暗記しないとならないなど、自分で行う事柄は多くありますが、何にどう手をつけて勉強したらよいのかわからない、といった受験の初心者が陥る混乱は、ここにはありません。
ここでは、通年を通して資格向上のために何らかの研修を行っており、国家試験対策の講師としても外部の専門家などが担当し、ポイントをついた講習となることも多いのです。それだけに、個人で特に様々な情報を集めて、受験勉強をどのように進めていこうか、と模索しながら取り組んでいる受験生に比べると、しっかりと敷かれたレールの上で、それなりのペースで学習していると、自ずと一定の成果が得られ受験に臨めるといった背景があります。もちろん、講師の言葉をただ聞いていればそれで受かるわけではありませんので、ポイントを整理し、暗記すべきことはしっかりと暗記しないとならないなど、自分で行う事柄は多くありますが、何にどう手をつけて勉強したらよいのかわからない、といった受験の初心者が陥る混乱は、ここにはありません。
加藤さんの受験への動機
加藤さんが訪問介護の仕事に就くようになったのは、お父さんの闘病がきっかけでした。脳梗塞を患い病院でのリハビリ等に努めたものの、退院して自宅に戻ってきたお父さんの看病をしていくには、それなりに専門的な技術を身につけていたほうが、お父さんにとっても良いのではと、ヘルパー2級の講習を受けたのでした。講習で更衣介助などがあると、お父さんにモデルになってもらい、自宅でもやってみます。それによって、しっかりと技術が身に付いていきました。お父さんの介護はお母さんと一緒に行ってきましたが、お父さんの状態がトイレの介助程度と、お母さん一人でも対応ができるようになってきたことから、加藤さんは、折角取得した技術なのだから、それを活かして仕事をしてみたいと訪問介護の事業所の門を叩いたのでした。
加藤さんの勤務は、個人で行っている活動を継続するために、主に午後の時間帯としました。訪問件数は多い場合で1日に4件程度です。訪問して利用者家族と接するとき、加藤さん自身がお父さんの介護にあたっていることを話すと、お互いが同じ境遇であることから、大変に親近感をもって受け止めてもらえるといいます。介護をされる利用者の気持ちを汲み、一般の研修では気付きにくい生活上の利便性などもアドバイスできるといった利点もあって、安心感といったものが相互に働いているようです。
さて、加藤さんは、仕事に就くからには、国家資格があるならば資格を取って仕事に臨むことが、職業者としての責任感にもつながるのではといった気持ちと、いずれは介護福祉士でないとこの仕事に就けなくなるとの巷の情報などがあって、最初から実務経験年数を満たしたならば、介護福祉士の資格をとるつもりでいました。
それだけに、試験に必要な知識の習得については、たとえば誰もが苦手とする制度のことなどは、新聞記事などで動向が伝えられると、必ず眼を通すなどしていました。それによって、どのような課題が試験で問われるのかといった事柄については、およその方向性などは掴んでいました。
加藤さんの勤務は、個人で行っている活動を継続するために、主に午後の時間帯としました。訪問件数は多い場合で1日に4件程度です。訪問して利用者家族と接するとき、加藤さん自身がお父さんの介護にあたっていることを話すと、お互いが同じ境遇であることから、大変に親近感をもって受け止めてもらえるといいます。介護をされる利用者の気持ちを汲み、一般の研修では気付きにくい生活上の利便性などもアドバイスできるといった利点もあって、安心感といったものが相互に働いているようです。
さて、加藤さんは、仕事に就くからには、国家資格があるならば資格を取って仕事に臨むことが、職業者としての責任感にもつながるのではといった気持ちと、いずれは介護福祉士でないとこの仕事に就けなくなるとの巷の情報などがあって、最初から実務経験年数を満たしたならば、介護福祉士の資格をとるつもりでいました。
それだけに、試験に必要な知識の習得については、たとえば誰もが苦手とする制度のことなどは、新聞記事などで動向が伝えられると、必ず眼を通すなどしていました。それによって、どのような課題が試験で問われるのかといった事柄については、およその方向性などは掴んでいました。
加藤さんの受験勉強 全体像の把握から
実務経験3年の目処が立った年に、加藤さんは事業者主催の講習会を受けることにしました。この講習会は昼間コースと夜間コースとがあり、7月から9月までの3か月間、毎週1回行われます。科目は全科目で、外部の講師が特定のテキストを指定し、合格するためにどのような勉強をするのか、どういった事柄を覚えればよいのか、そのポイントを指摘していきます。そして、試験問題の作成がどのように行われるのかを分析し、文章の捻りや、言い回しでひっかける出題、また年代などが記載されている場合に、その解き方といったことも、アドバイスしていったのです。加藤さんは昼間コースを選んだのですが、これは本番でもかなり役に立ちました。
また最初の講習では、受験するための手続きの仕方を具体的に落ちのないように指導してくれるので、試験センターへの届出に戸惑うといったことはありませんでした。
この講習を受けて、加藤さんがそれなりに受験体制に入ったのは9月に入ってからでした。介護技術系の科目は、日々の仕事を通して、また事業所の研修などを通して学んでいること、また試験で問われるポイントを講習で理解したのでかなりの自信がつきました。そこで、加藤さんは、普段はあまり接することのない福祉の歴史や登場人物、介護保険を中心とした法制度、そして医学知識など、覚えないとならない科目に重点的に取り組むこととしたのです。
その際、ただその事項を丸暗記するのでは、受験が終われば忘れてしまいます。加藤さんはそうした勉強の仕方とするよりは、体系的な捉え方や背景などを踏まえた歴史的な経緯などをおって、知識を整理したいと思い、年表を作ってまずは全体像を把握することに努めることにしました。全体像が理解できて、そこに細部の事象を取り込んでいけば、知識が確実になると思ったのでした。
また、一度、過去の出題を解いてみようと、11月に入って過去5年の試験問題が解説されている参考書を購入し、そのうちの3年分の試験問題を解いてみました。するとほぼ合格ラインの得点があったのです。そのことで、加藤さんは少し慢心してしまいました。そのため、全体像の把握に時間を割くことに力が入りすぎていて、細部の知識の詰め込みに割く時間があまりなくなってしまっていたのです。
制度も医学知識も、試験では意外に細かい内容が問われることがあります。制度などでは改定のあった事柄などは、少々捻って、出題の意図を受験者がしっかりと理解していないと間違えやすい問い方がされたりします。それだけに、やはり暗記ものには、それなりの時間を割く必要があります。加藤さんは、結果として合格はしました。しかし、試験に臨むに当たって、勉強の仕方としては正攻法ではあったのですが、短期に取り組むには、必ず覚えなければならない事項は、まずは細部の事柄でも、時間をかけて覚えたほうが良かったと反省しています。
また最初の講習では、受験するための手続きの仕方を具体的に落ちのないように指導してくれるので、試験センターへの届出に戸惑うといったことはありませんでした。
この講習を受けて、加藤さんがそれなりに受験体制に入ったのは9月に入ってからでした。介護技術系の科目は、日々の仕事を通して、また事業所の研修などを通して学んでいること、また試験で問われるポイントを講習で理解したのでかなりの自信がつきました。そこで、加藤さんは、普段はあまり接することのない福祉の歴史や登場人物、介護保険を中心とした法制度、そして医学知識など、覚えないとならない科目に重点的に取り組むこととしたのです。
その際、ただその事項を丸暗記するのでは、受験が終われば忘れてしまいます。加藤さんはそうした勉強の仕方とするよりは、体系的な捉え方や背景などを踏まえた歴史的な経緯などをおって、知識を整理したいと思い、年表を作ってまずは全体像を把握することに努めることにしました。全体像が理解できて、そこに細部の事象を取り込んでいけば、知識が確実になると思ったのでした。
また、一度、過去の出題を解いてみようと、11月に入って過去5年の試験問題が解説されている参考書を購入し、そのうちの3年分の試験問題を解いてみました。するとほぼ合格ラインの得点があったのです。そのことで、加藤さんは少し慢心してしまいました。そのため、全体像の把握に時間を割くことに力が入りすぎていて、細部の知識の詰め込みに割く時間があまりなくなってしまっていたのです。
制度も医学知識も、試験では意外に細かい内容が問われることがあります。制度などでは改定のあった事柄などは、少々捻って、出題の意図を受験者がしっかりと理解していないと間違えやすい問い方がされたりします。それだけに、やはり暗記ものには、それなりの時間を割く必要があります。加藤さんは、結果として合格はしました。しかし、試験に臨むに当たって、勉強の仕方としては正攻法ではあったのですが、短期に取り組むには、必ず覚えなければならない事項は、まずは細部の事柄でも、時間をかけて覚えたほうが良かったと反省しています。
モチベーションを管理できずに苦戦
加藤さんの勉強時間は、夜寝る前の1時間程度。重要だと思った頁を拡大コピーし、その余白に補足事項などを書き出して覚えるなどしました。医学一般については、お父さんの病気が、試験で問われるような病気をかなり網羅した状態であったので、お父さんの看病に必要な知識として、家庭の医学などいろいろな書籍等で知識を得ていたので、それが役立ったとのこと。お父さんは昨年に亡くなられたそうですが、脳梗塞から、白内障、そして心臓が悪くなってペースメーカーを導入、さらに亡くなる前には腎不全を併発して腎臓透析を受ける寸前だったといいます。最後は胆のうがんで亡くなったのですが、加藤さんはその都度、これらの病気について調べて、どういった介護が必要なのかを勉強していたのでした。
こうして瞬く間に時間が過ぎていき、1月に入りました。加藤さんは最後の仕上げにと、再度、過去問題集を解いてみました。すると、勉強した分だけかえって迷いが生じてしまい、今度は合格点を下回ってしまったのです。この結果に愕然とし、自信喪失した状態のままに筆記試験を迎えてしまいました。自信を喪失して臨んだこともあって、周囲の受験生は皆自信があるように見えます。それでも本番は最後まで粘って回答を点検し、会場を後にしました。帰宅して、インターネットなどに掲載される回答速報などを点検すると、どうも障害者福祉論で得点できていないことが分かりました。そのときは、合格は無理とほぼ諦めていたそうです。
こうして瞬く間に時間が過ぎていき、1月に入りました。加藤さんは最後の仕上げにと、再度、過去問題集を解いてみました。すると、勉強した分だけかえって迷いが生じてしまい、今度は合格点を下回ってしまったのです。この結果に愕然とし、自信喪失した状態のままに筆記試験を迎えてしまいました。自信を喪失して臨んだこともあって、周囲の受験生は皆自信があるように見えます。それでも本番は最後まで粘って回答を点検し、会場を後にしました。帰宅して、インターネットなどに掲載される回答速報などを点検すると、どうも障害者福祉論で得点できていないことが分かりました。そのときは、合格は無理とほぼ諦めていたそうです。
実技試験対策も充実した事業所
しかし幸運の女神が加藤さんを見放してはいなかったのです。得点の低かった科目は、他の科目との合計得点による採点となっていて、もう一つのリハビリテーション論でフォローができていたのです。事務所で大丈夫だろうと指摘されて、安堵はしたのですが、実際に合格通知が届くまでは安心できなかったと加藤さん。でもそれで喜んではいられません。加藤さんは、介護技術講習会は受講していなかったので、実技試験を受けなくてはなりません。そこから実技試験対策に急いで取り掛かりました。
ここでも、事業所の受験対策がしっかりと組まれていました。1次試験合格者で実技試験を受けるスタッフには、事業所が職場ごとに、先輩の指導によって1週間にわたって過去問で実際の指導を行います。まずビデオによってどのように行うのかをイメージし、最後には丸1日をかけ、他の数名の受験生などが見ている前で演技を行います。そのため本試験同様に緊張感をもって取り組めました。
かなり自信をもっての本番でしたが、この年の問題は、いつにないシチュエーションでの出題となっていました。問題を見たときは、どうやろうと落ち着きをなくしましたが、すぐに気を取り直して、一つひとつ落ちがないか、確認しながら慎重に演技を進めました。声かけは忘れてしまいやすいので、確実にモデルの反応を確認しながら進めます。しかし、制限時間内で全ての演技を完了できずに、加藤さんは実技試験を終えたのでした。
今度もまた、加藤さんは合格は無理ではと思って3月末を迎えました。ですが結果は合格。おそらく、必要なポイントは確認しながら慎重に進めていたので、時間内に全て完了できなくとも、評価がされたのでしょう。
今回の試験を振り返ってみて、加藤さんは、まずは筆記は試験本番に併せて、自分の体調もさることながら、モチベーションを上手に保つことが重要だと言います。加藤さんの場合、直前の追い込みに取り掛かるべきときに、既に気持ちが萎えてしまっていて、もう一押しの勉強ができませんでした。ここができると、自信をもって本番に臨むことができるのではということです。そして試験のための勉強に終わらせずに、仕事の実になるような勉強であってほしいとのこと。勉強がただ辛い思いだけになるよりは、そのこと事態が喜びにつながる、そんな勉強であればよいとのことでした。
ここでも、事業所の受験対策がしっかりと組まれていました。1次試験合格者で実技試験を受けるスタッフには、事業所が職場ごとに、先輩の指導によって1週間にわたって過去問で実際の指導を行います。まずビデオによってどのように行うのかをイメージし、最後には丸1日をかけ、他の数名の受験生などが見ている前で演技を行います。そのため本試験同様に緊張感をもって取り組めました。
かなり自信をもっての本番でしたが、この年の問題は、いつにないシチュエーションでの出題となっていました。問題を見たときは、どうやろうと落ち着きをなくしましたが、すぐに気を取り直して、一つひとつ落ちがないか、確認しながら慎重に演技を進めました。声かけは忘れてしまいやすいので、確実にモデルの反応を確認しながら進めます。しかし、制限時間内で全ての演技を完了できずに、加藤さんは実技試験を終えたのでした。
今度もまた、加藤さんは合格は無理ではと思って3月末を迎えました。ですが結果は合格。おそらく、必要なポイントは確認しながら慎重に進めていたので、時間内に全て完了できなくとも、評価がされたのでしょう。
今回の試験を振り返ってみて、加藤さんは、まずは筆記は試験本番に併せて、自分の体調もさることながら、モチベーションを上手に保つことが重要だと言います。加藤さんの場合、直前の追い込みに取り掛かるべきときに、既に気持ちが萎えてしまっていて、もう一押しの勉強ができませんでした。ここができると、自信をもって本番に臨むことができるのではということです。そして試験のための勉強に終わらせずに、仕事の実になるような勉強であってほしいとのこと。勉強がただ辛い思いだけになるよりは、そのこと事態が喜びにつながる、そんな勉強であればよいとのことでした。