13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第23回 横山 健さん
ケアワーカー(介護療養型認知症専門病棟担当)
横山さんが使った参考書
介護福祉士国家試験過去問解説集
中央法規出版
中央法規出版
横山さんの合格までの道のり
病院らしくない病院
病院というところは、多くは玄関を入ると受付カウンターが並び、また片隅には会計の窓口があったりして、患者さんが賑やかに行きかっているといった雰囲気があります。療養型病院にしても、やはり受付のあり方などは急性期の病院などとあまり変わらず、病院に来たなといった感触が伴っていることが多いのでは。ところが、そんな病院一般のイメージとは無縁の、玄関を入っても静かな画廊が続くだけで、片側に受付があってもどこかのマンションの管理人室といった感じで、慌しさをかんじさせない落ち着いた雰囲気がする、世の中にはそんな病院もあるのです。
この病院では、患者さんの意欲を引き出すことを大切にしており、そのための専門職員が多く配置されているだけでなく、各職種がそれぞれの専門性を確認し合いながら、より良いチームケアを作り出すために、さまざまな取り組みが行われています。
この病院では、患者さんの意欲を引き出すことを大切にしており、そのための専門職員が多く配置されているだけでなく、各職種がそれぞれの専門性を確認し合いながら、より良いチームケアを作り出すために、さまざまな取り組みが行われています。
横山さんと介護の仕事
そんな病院の認知症病棟で介護を担当しているのが今回登場いただく、横山健さんです。
横山さんがこの世界を選んだのは、高校生のとき進路を考えるにあたって、介護保険制度が開始されるということで介護に関する報道が多く、人と関わる仕事も面白いのではないかと、福祉専門学校に行くことにしたことが契機でした。横山さんが学んだ専門学校にも、介護福祉士国家資格取得のコースがあったのですが、横山さんはレクリエーション介護のコースを選んだため、ホームヘルパーの講習は受けたのでしたが、就職後に改めて試験を受けることになったのでした。ただし、横山さんの学んだコースでも、福祉制度についての講義は一通り受けてきたそうです。
平成11年に学校を卒業するに当たって、就職案内では特養などの施設も紹介されていたのですが、現在の職場を見学させてもらったところ、雰囲気がよく実家も近いので、採用してもらえるならと就職することになったのでした。
介護の仕事の遣り甲斐
病院のケア職の方にとって、患者さんの回復を見るのは喜びであるでしょう。横山さんもそうです。患者さんは「ちょっとした感謝の気持ちを表わされることがありますが、それが励みになります。こうした声に押されてこれまで仕事を続けてこられた」と横山さんは言います。
これはあくまで一般的な話ですが、治療の場である病院というところは、勢い、一方通行のケアが主流となりがちのように思います。しかし、横山さんが勤める病院では患者さんとの会話が盛んで、様々な会話を交わしていくなかでケアが展開されています。患者さんは次第に昔何をしていたなど自分自身を語ることも多くなり、他の職員が知らないようなことまで話をされると横山さん。
ケアには双方向に働く力があって、ケアは患者さんの気持ちの安定や励ましなどをはかりながら行われるものですが、それでいて、患者さんから逆に励まされているといった部分も大きいと言います。こうした雰囲気の病棟にいて、横山さんは、ケアの多面性を感じながら介護の仕事に励んでいるのでした。
横山さんがこの世界を選んだのは、高校生のとき進路を考えるにあたって、介護保険制度が開始されるということで介護に関する報道が多く、人と関わる仕事も面白いのではないかと、福祉専門学校に行くことにしたことが契機でした。横山さんが学んだ専門学校にも、介護福祉士国家資格取得のコースがあったのですが、横山さんはレクリエーション介護のコースを選んだため、ホームヘルパーの講習は受けたのでしたが、就職後に改めて試験を受けることになったのでした。ただし、横山さんの学んだコースでも、福祉制度についての講義は一通り受けてきたそうです。
平成11年に学校を卒業するに当たって、就職案内では特養などの施設も紹介されていたのですが、現在の職場を見学させてもらったところ、雰囲気がよく実家も近いので、採用してもらえるならと就職することになったのでした。
介護の仕事の遣り甲斐
病院のケア職の方にとって、患者さんの回復を見るのは喜びであるでしょう。横山さんもそうです。患者さんは「ちょっとした感謝の気持ちを表わされることがありますが、それが励みになります。こうした声に押されてこれまで仕事を続けてこられた」と横山さんは言います。
これはあくまで一般的な話ですが、治療の場である病院というところは、勢い、一方通行のケアが主流となりがちのように思います。しかし、横山さんが勤める病院では患者さんとの会話が盛んで、様々な会話を交わしていくなかでケアが展開されています。患者さんは次第に昔何をしていたなど自分自身を語ることも多くなり、他の職員が知らないようなことまで話をされると横山さん。
ケアには双方向に働く力があって、ケアは患者さんの気持ちの安定や励ましなどをはかりながら行われるものですが、それでいて、患者さんから逆に励まされているといった部分も大きいと言います。こうした雰囲気の病棟にいて、横山さんは、ケアの多面性を感じながら介護の仕事に励んでいるのでした。
ノートを取る古典的な学習法で
横山さんは、介護福祉士の資格を入職当初から取るつもりでいました。専門性を高めていくには、資格取得は一つの勉強にもなります。また横山さんの同期にも資格取得を目指していた人が多かったので、資格を取ることが当然に思えたのでした。休憩時間などに集まると、自ずと試験の話題が増えたそうです。勉強の仕方など、各自がどのように工夫しているのか、情報交換も盛んでした。
さて、早い段階から資格取得を決めていたので、横山さんは少しずつ本を読んだりして勉強してはいたのでしたが、本格的な受験勉強の体制に入ったのは、試験センターに受験の申し込みをした8月あたりからだったと言います。また、試験当日までのスケジュールを立てることまではしなかったそうです。
勉強方法としては、専門学校でのテキストで介護福祉士資格に共通するものについては、そのテキストを引っ張り出してそれを読み込みました。合わせて市販の参考書を使ったのですが、これは短期間で覚えないとならないような事柄がコンパクトに整理されていて、自分の勉強の仕方に合っていると感じたものを、書店を回って歩いて探したのだそうです。さらに、そこに記載されている事柄を整理して、項目を立ててはその解説をノートに書き出していきました。そして書き出したノートを使って更に覚え込んでいく作業を繰り返しました。学生時代に身につけたという古典的な学習法ではありますが、「これが一番の正攻法ではないか」と横山さんは思っています。こうして書き出したノートは合わせて4冊にもなったとか。
さて、早い段階から資格取得を決めていたので、横山さんは少しずつ本を読んだりして勉強してはいたのでしたが、本格的な受験勉強の体制に入ったのは、試験センターに受験の申し込みをした8月あたりからだったと言います。また、試験当日までのスケジュールを立てることまではしなかったそうです。
勉強方法としては、専門学校でのテキストで介護福祉士資格に共通するものについては、そのテキストを引っ張り出してそれを読み込みました。合わせて市販の参考書を使ったのですが、これは短期間で覚えないとならないような事柄がコンパクトに整理されていて、自分の勉強の仕方に合っていると感じたものを、書店を回って歩いて探したのだそうです。さらに、そこに記載されている事柄を整理して、項目を立ててはその解説をノートに書き出していきました。そして書き出したノートを使って更に覚え込んでいく作業を繰り返しました。学生時代に身につけたという古典的な学習法ではありますが、「これが一番の正攻法ではないか」と横山さんは思っています。こうして書き出したノートは合わせて4冊にもなったとか。
科目別の攻略法
科目別にみてみますと、医学一般については、勤め先が病院なので、病気の知識などは仕事柄覚えていきますし、分からないことは職場の看護師さんたちに尋ねることで補えるので、その辺りは有利であったのかもしれません。
一方、法制度などは、専門学校で使っていた教科書を使って1冊ずつ勉強していくというやり方もできたかもしれませんが、それでは時間が足りないので、コンパクトにまとまった参考書が受験勉強には欠かせないものでした。ただし、参考書のまとめ方は簡潔な場合が多く、細部まで含めて知識を補う必要がある場合は、学校の教科書に戻るなどしていたそうです。制度は常に変わっていくものですから、教科書の内容では古くなっている場合もあり、最新の参考書を購入することで補いました。
男性は一般に、家政学については日常生活で関心を向ける機会が少なく、苦手に感じる人も多いものです。しかし横山さんは家事などが好きで、本を読むことでも知識は自然に身に付いていき、苦手と感じたことはなかったとのこと。
技術系の科目については、日々の仕事を通じて覚えていくことが多いので、試験勉強としては、日々の仕事の整理といった形となるので苦労したといった記憶はないそうです。また、形態別介護技術については、様々な疾病・障害を負った患者さんに接していくなかで、必要な看護・介護のあり方について、仕事として知っていないとなりませんから、自然と身についていました。試験で出題される範囲の障害や疾病の症例は、ほぼ仕事の上で見かけるものです。そして、先に資格取得した先輩などに聞けば、技術系のことはすぐに答えてくれるので、それで助けられました。
一方、法制度などは、専門学校で使っていた教科書を使って1冊ずつ勉強していくというやり方もできたかもしれませんが、それでは時間が足りないので、コンパクトにまとまった参考書が受験勉強には欠かせないものでした。ただし、参考書のまとめ方は簡潔な場合が多く、細部まで含めて知識を補う必要がある場合は、学校の教科書に戻るなどしていたそうです。制度は常に変わっていくものですから、教科書の内容では古くなっている場合もあり、最新の参考書を購入することで補いました。
男性は一般に、家政学については日常生活で関心を向ける機会が少なく、苦手に感じる人も多いものです。しかし横山さんは家事などが好きで、本を読むことでも知識は自然に身に付いていき、苦手と感じたことはなかったとのこと。
技術系の科目については、日々の仕事を通じて覚えていくことが多いので、試験勉強としては、日々の仕事の整理といった形となるので苦労したといった記憶はないそうです。また、形態別介護技術については、様々な疾病・障害を負った患者さんに接していくなかで、必要な看護・介護のあり方について、仕事として知っていないとなりませんから、自然と身についていました。試験で出題される範囲の障害や疾病の症例は、ほぼ仕事の上で見かけるものです。そして、先に資格取得した先輩などに聞けば、技術系のことはすぐに答えてくれるので、それで助けられました。
仕上げとして過去問題集を解く
横山さんは、毎日、少しずつでもよいから、必ず勉強するようにしていたそうです。平均すると1日30分程度を夕食後に充てていました。短いときは15分程度のこともありましたが、休日はまとまった時間がとれるので1〜2時間程度は勉強時間にしていたそうです。また夜勤のときや、夜勤明けは時間がとれるので、そのときは勉強に当てていたとのこと。
こうした勉強の仕上げとして、横山さんは12月になってから国家試験の過去問題集を使いました。問題集には出題内容についての傾向や対策なども示されていて、それが出題ポイントの把握につながりました。横山さんが利用した問題集は、周囲の人も使っていたので、使いやすいものだったのではとのことです。
購入した問題集は、1冊全てを解きました。しかし時間からして繰り返し解くことはできませんでした。解答が分からない場合には、自分で書き出したノートを広げて、知識の補充もしました。また友人が過去問題をプリントしてきてくれたので、それを解いたりもしました。
問題集を1冊解いてみると、よく得点できている科目とそうでない科目があることが分かりました。そこで残りの時間を使って、弱点の補強を図りました。問題集を解いていくときは、実際の試験時間などの制限について考えることはなく、ひたすら解答を導き出すことに専念していたといいます。
こうした勉強の仕上げとして、横山さんは12月になってから国家試験の過去問題集を使いました。問題集には出題内容についての傾向や対策なども示されていて、それが出題ポイントの把握につながりました。横山さんが利用した問題集は、周囲の人も使っていたので、使いやすいものだったのではとのことです。
購入した問題集は、1冊全てを解きました。しかし時間からして繰り返し解くことはできませんでした。解答が分からない場合には、自分で書き出したノートを広げて、知識の補充もしました。また友人が過去問題をプリントしてきてくれたので、それを解いたりもしました。
問題集を1冊解いてみると、よく得点できている科目とそうでない科目があることが分かりました。そこで残りの時間を使って、弱点の補強を図りました。問題集を解いていくときは、実際の試験時間などの制限について考えることはなく、ひたすら解答を導き出すことに専念していたといいます。
2次試験を受ける
さて1次試験当日、気持ちのうえで横山さんには焦りがありませんでした。それでも試験時間一杯を使って、落ちがないかどうか、点検を繰り返したと言います。横山さんが受験した当時は、いまのように試験問題を持ち帰ることはできませんでしたので、自分の得点がどのくらいか、把握することは難しかったのですが、横山さんはできなかったといった感じではなかったそうです。それなりに自信があったのでしょう。それでも2次試験通知が届くまでは、不安でもあったとのこと(横山さんが受験した当時は、2次試験は誰もが受ける形でした)。
横山さんは、民間の受験対策セミナーなどを利用したりはしませんでした。実技試験にも民間の講習などがあることを知ってはいましたが、これも独学で通しました。ただし、院内で1次試験に合格したものが集まって、上司や先輩たちが試験官を務めてくれて、そこで過去問題などで演技練習を行ったのだそうです。
2次試験は5分間に演技を終えないとなりません。出題は十分に5分間でできるように設定されているのですが、緊張しすぎてあっという間に時間が過ぎてしまい、課題をすべて終えることができずに時間が終わってしまったという人もいます。
その年の出題は、利用者が患側を下にしてベッドの下のほうに寝ていたので、利用者をベッド上の適切な位置に戻して、衣服の乱れを直し、仰臥位にするといった内容でした。これは出題例のあまりない問題で予想外の内容でした。実技試験の出題傾向をみると、多くが移動を含む出題で、ベッドから車いす、椅子から車いす、あるいは杖歩行の介助といった内容が含まれていました。前年が起床時の整容といった内容であったので、更衣介助の問いは出題されないであろうから、職場での予想では、本年の出題は移動介助のパターンであろうと考えていたので、試験室に入って問題を見て驚きました。
一瞬、どうやったらよいのだろうと戸惑いましたが、横山さんは日々の仕事でやっているようにやろうと気持ちを切り替えることができたのでした。後は、時間内でまとめることができ、また自分がどのような手順で行ったのかも振り返ることができたので、緊張しすぎることもなく、落ち着いてできたようでした。
そのときの気持ちを振り返ってもらったところ、むしろ職場での予行演習では、上司もいる中での演技だったので、そのときのほうが失敗できないと緊張していたそうです。逆に、本番の試験会場では周囲は知らない人ばかりなので、緊張せずに済んだのかもしれないとのこと。横山さんは、この試験は合格できるとの感触を得ていました。
横山さんは、その予想どおりに合格通知を受け取りました。いまはさらなる資格としてケアマネジャーを取ろうと勉強中です。横山さんは現在、認知症の方の病棟に勤務しています。そこでは、患者一人ひとりの接し方を工夫して、個別介護のあり方を考える日々であるとのことでした。
横山さんは、民間の受験対策セミナーなどを利用したりはしませんでした。実技試験にも民間の講習などがあることを知ってはいましたが、これも独学で通しました。ただし、院内で1次試験に合格したものが集まって、上司や先輩たちが試験官を務めてくれて、そこで過去問題などで演技練習を行ったのだそうです。
2次試験は5分間に演技を終えないとなりません。出題は十分に5分間でできるように設定されているのですが、緊張しすぎてあっという間に時間が過ぎてしまい、課題をすべて終えることができずに時間が終わってしまったという人もいます。
その年の出題は、利用者が患側を下にしてベッドの下のほうに寝ていたので、利用者をベッド上の適切な位置に戻して、衣服の乱れを直し、仰臥位にするといった内容でした。これは出題例のあまりない問題で予想外の内容でした。実技試験の出題傾向をみると、多くが移動を含む出題で、ベッドから車いす、椅子から車いす、あるいは杖歩行の介助といった内容が含まれていました。前年が起床時の整容といった内容であったので、更衣介助の問いは出題されないであろうから、職場での予想では、本年の出題は移動介助のパターンであろうと考えていたので、試験室に入って問題を見て驚きました。
一瞬、どうやったらよいのだろうと戸惑いましたが、横山さんは日々の仕事でやっているようにやろうと気持ちを切り替えることができたのでした。後は、時間内でまとめることができ、また自分がどのような手順で行ったのかも振り返ることができたので、緊張しすぎることもなく、落ち着いてできたようでした。
そのときの気持ちを振り返ってもらったところ、むしろ職場での予行演習では、上司もいる中での演技だったので、そのときのほうが失敗できないと緊張していたそうです。逆に、本番の試験会場では周囲は知らない人ばかりなので、緊張せずに済んだのかもしれないとのこと。横山さんは、この試験は合格できるとの感触を得ていました。
横山さんは、その予想どおりに合格通知を受け取りました。いまはさらなる資格としてケアマネジャーを取ろうと勉強中です。横山さんは現在、認知症の方の病棟に勤務しています。そこでは、患者一人ひとりの接し方を工夫して、個別介護のあり方を考える日々であるとのことでした。