13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第22回 安達聡子さん
デイサービス、訪問介護事業所 介護職員
安達さんが使った参考書
介護福祉士国家試験過去問題解説集
中央法規出版
中央法規出版
介護福祉士国家試験解説
ユーキャン
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安達さんの合格までの道のり
地域住民の活動として生まれた社会福祉法人
NHKの『ご近所の底力』ではありませんが、近年は地域連携といったことに大きな関心が寄せられるようになってきました。しかし、10年以上も前のこと、地域住民による自治活動によって、高齢者ケアの施設を作り出したところがあります。
都市郊外では、戦後、宅地開発が進み新興住宅地があちこちに登場しました。こうした宅地の多くでは、およそ年齢も所得階層も似通った新住民が集まることとなります。なんの接点もない新住民同士は、まずは子どものPTAなどの学校活動を通じて互いに知り合い、そこに絆が生まれやがて住民の自治的な活動へと変化していきます。年齢層の似通った住民が多い新興住宅地ならではのことですが、年月の経過とともに生じてくる住民の高齢化は、新たな地域に共通する課題を生んでその解決を求められることになっていきます。
そんな都市近郊の新興住宅地であるN地では、自治活動でつながった住民たちが、自らの高齢化の問題には自らで取り組もうと、市とかけあって、住宅地内に市が所有する土地を借り受け、新たに社会福祉法人を立ち上げて高齢者ケアのサービスセンターを作り上げました。そこではデイサービスを中心に、ショートステイ、訪問介護、居宅介護支援、地域包括支援センター等を担い、その他、様々な地域に固有のケアニーズに応えることを主眼として別立てでNPO法人が活動しています。介護保険制度ができたこともあって、社会福祉法人としての活動は軌道に乗りましたが、保険制度は財政上の制約で常にサービス内容に変動が伴います。制度に沿った運用だけでは、住民の様々なニーズを支えるには困難なこともありますから、住民自治の理念に沿って、サービスの安定的な提供ができるように活動しているのです。
これからの時代、恐らくは保険財政だけで一切の介護ニーズを支えることは困難かもしれません。福祉施策の充実といっても、財政運営は厳しくなる一方です。そんなとき、地域住民による共助、互助といった仕組みがあることは、貴重なセーフティネットとなっていくのではないでしょうか。
都市郊外では、戦後、宅地開発が進み新興住宅地があちこちに登場しました。こうした宅地の多くでは、およそ年齢も所得階層も似通った新住民が集まることとなります。なんの接点もない新住民同士は、まずは子どものPTAなどの学校活動を通じて互いに知り合い、そこに絆が生まれやがて住民の自治的な活動へと変化していきます。年齢層の似通った住民が多い新興住宅地ならではのことですが、年月の経過とともに生じてくる住民の高齢化は、新たな地域に共通する課題を生んでその解決を求められることになっていきます。
そんな都市近郊の新興住宅地であるN地では、自治活動でつながった住民たちが、自らの高齢化の問題には自らで取り組もうと、市とかけあって、住宅地内に市が所有する土地を借り受け、新たに社会福祉法人を立ち上げて高齢者ケアのサービスセンターを作り上げました。そこではデイサービスを中心に、ショートステイ、訪問介護、居宅介護支援、地域包括支援センター等を担い、その他、様々な地域に固有のケアニーズに応えることを主眼として別立てでNPO法人が活動しています。介護保険制度ができたこともあって、社会福祉法人としての活動は軌道に乗りましたが、保険制度は財政上の制約で常にサービス内容に変動が伴います。制度に沿った運用だけでは、住民の様々なニーズを支えるには困難なこともありますから、住民自治の理念に沿って、サービスの安定的な提供ができるように活動しているのです。
これからの時代、恐らくは保険財政だけで一切の介護ニーズを支えることは困難かもしれません。福祉施策の充実といっても、財政運営は厳しくなる一方です。そんなとき、地域住民による共助、互助といった仕組みがあることは、貴重なセーフティネットとなっていくのではないでしょうか。
安達さんと介護の仕事
今回登場していただく安達聡子さんは、お母さんの代にこのN新興住宅地に移り住んできました。安達さんのお母さんは住民活動に積極的で、法人の創設を楽しみにしていたのですが、残念ながらセンターができてすぐに病気で他界されました。安達さんは小学校の頃からそうしたお母さんの活動を身近にしてきたこともあって、安達さん自身も会の活動はよく理解していました。
以前は、民間の会社で営業の仕事をしていたという安達さんが、3級のヘルパー講習を受けたのは、お母さんの病気も一つの契機となりました。お母さんが亡くなられ、介護保険の導入に伴いセンターで人員の募集をしていることを知り、安達さんは当初はパートとして、介護の仕事に携わることにしました。介護の仕事は営業で人と接することにも共通点があり、人と関わることの深み面白さを実感するようになって、そこからセンターの職員の一人として、会の運営に関わることとになりました。
介護の仕事において、基本は利用者の理解であると安達さんは思っています。それには、利用者との意思の疎通こそが大切です。お年寄りとの会話の中から、真のニーズを汲み取り、それを支援に結び付けていく。介護の仕事の醍醐味がそこにあると安達さんは感じています。
以前は、民間の会社で営業の仕事をしていたという安達さんが、3級のヘルパー講習を受けたのは、お母さんの病気も一つの契機となりました。お母さんが亡くなられ、介護保険の導入に伴いセンターで人員の募集をしていることを知り、安達さんは当初はパートとして、介護の仕事に携わることにしました。介護の仕事は営業で人と接することにも共通点があり、人と関わることの深み面白さを実感するようになって、そこからセンターの職員の一人として、会の運営に関わることとになりました。
介護の仕事において、基本は利用者の理解であると安達さんは思っています。それには、利用者との意思の疎通こそが大切です。お年寄りとの会話の中から、真のニーズを汲み取り、それを支援に結び付けていく。介護の仕事の醍醐味がそこにあると安達さんは感じています。
安達さんの受験勉強
自治活動といったセンターの設立経緯もあって、職員は、皆、向上心に高いものがありました。一定の実務経験を経た後は、資格取得は当たり前のような雰囲気があり、誰もが資格取得をしていくといった状況でした。特に法人として推奨していたわけでもないのですが、「職員自身が、仕事としてサービスを提供していく以上は、専門性を高めることは当然のことで、そのためにも資格取得は必要であると思っていた」のでした。
介護の実務に携わるようになって3年が経過し、安達さんも試験センターに受験を申し込みました。資格取得は当然のこととはしていた安達さんでしたが、本格的な勉強を始めたのはこのときからでした。
さて安達さんは、参考書としては、13科目がまとめて解説してある1冊以外はほとんど用いず、もっぱら過去問題集を何度も解くことで、受験で問われそうなことの辺りをつけ、集中的に覚えていくといった勉強をしていきました。安達さんがこのような勉強法をとったのは、もっぱら限られた時間のなかで、いかに有効に勉強を進めるかといった考えがありました。仕事もあれば、家庭では主婦として、母親としての仕事もこなさないとなりません。13科目のテキストを1冊ずつ読み進め、勉強していくといった余裕はなかったのです。これまでに資格取得した先輩たちに尋ねても、やはり過去問題集を繰り返す学習法を勧められたそうです。
しかし、ただ問題を解くといった学習法では、知識の整理は覚束なく、また確実なものとなりにくいものです。そこで安達さんは、問題集を解いていくとき、「自分で解いた問題の解答をノートの左端に書き出し、右欄には問題を解き終わった段階で、科目ごとに正答を記載し、さらにその下に、参考書等で調べて出題において重要となる事柄を書き出す」などの工夫を凝らしました。またノートを読み返しては、「解説部分の暗記しないとならない部分にマーカーで印をつけるなどした」そうです。
実のところ、安達さんの勉強方法はこれだけです。比較的多くの受験者が苦手としている法制度など暗記ものは、このノートへの書き出しといった形は、おそらく受験勉強における正攻法かもしれません。医学一般については、もともと好きな科目でした。知らないことは、職場の看護師に尋ねて補足しました。介護技術系の科目などは、仕事を通じて得た知識でほぼ、カバーができました。
その上で、「苦手な科目については、一定の点数が確保できればよい」と割り切り、毎回問われている事項などを集中して覚えるようにしました。つまり、得点を稼ぐ科目と最低限の得点で済ます科目とを分けて、「得点を稼ぐ科目に集中して勉強する」ようにしたのです。
主婦業の傍ら、子どもたちが眠りについてからの勉強であり、1日あたり1時間も時間がとれればよいほうです。休日は子どもの野球サークル活動の役員をしていた関係で、遠征試合などの送迎に付き添わなければならず、2時間程度も捻出できるかといったところでした。しかし、毎日確実に欠かさず勉強を重ねることはしてきたといいます。
安達さんは、いつまでに何をやり遂げるといった計画的な学習はできず、兎に角こなしていくことで精一杯だったそうです。
安達さんが受験した年は、介護技術講習会が始まる前年でした。1次試験は、こうした勉強の成果もあって、合格しました。そして2次試験。1次の合格通知がきた段階で、受かった仲間同士で過去問題を元に実演をするなどの取り組みを行いました。しかしこの2次試験で、残念ながら落ちてしまったのです。何をポイントとして問われているのか、その整理ができていなかったと、安達さんは敗因を整理しています。
介護の実務に携わるようになって3年が経過し、安達さんも試験センターに受験を申し込みました。資格取得は当然のこととはしていた安達さんでしたが、本格的な勉強を始めたのはこのときからでした。
さて安達さんは、参考書としては、13科目がまとめて解説してある1冊以外はほとんど用いず、もっぱら過去問題集を何度も解くことで、受験で問われそうなことの辺りをつけ、集中的に覚えていくといった勉強をしていきました。安達さんがこのような勉強法をとったのは、もっぱら限られた時間のなかで、いかに有効に勉強を進めるかといった考えがありました。仕事もあれば、家庭では主婦として、母親としての仕事もこなさないとなりません。13科目のテキストを1冊ずつ読み進め、勉強していくといった余裕はなかったのです。これまでに資格取得した先輩たちに尋ねても、やはり過去問題集を繰り返す学習法を勧められたそうです。
しかし、ただ問題を解くといった学習法では、知識の整理は覚束なく、また確実なものとなりにくいものです。そこで安達さんは、問題集を解いていくとき、「自分で解いた問題の解答をノートの左端に書き出し、右欄には問題を解き終わった段階で、科目ごとに正答を記載し、さらにその下に、参考書等で調べて出題において重要となる事柄を書き出す」などの工夫を凝らしました。またノートを読み返しては、「解説部分の暗記しないとならない部分にマーカーで印をつけるなどした」そうです。
実のところ、安達さんの勉強方法はこれだけです。比較的多くの受験者が苦手としている法制度など暗記ものは、このノートへの書き出しといった形は、おそらく受験勉強における正攻法かもしれません。医学一般については、もともと好きな科目でした。知らないことは、職場の看護師に尋ねて補足しました。介護技術系の科目などは、仕事を通じて得た知識でほぼ、カバーができました。
その上で、「苦手な科目については、一定の点数が確保できればよい」と割り切り、毎回問われている事項などを集中して覚えるようにしました。つまり、得点を稼ぐ科目と最低限の得点で済ます科目とを分けて、「得点を稼ぐ科目に集中して勉強する」ようにしたのです。
主婦業の傍ら、子どもたちが眠りについてからの勉強であり、1日あたり1時間も時間がとれればよいほうです。休日は子どもの野球サークル活動の役員をしていた関係で、遠征試合などの送迎に付き添わなければならず、2時間程度も捻出できるかといったところでした。しかし、毎日確実に欠かさず勉強を重ねることはしてきたといいます。
安達さんは、いつまでに何をやり遂げるといった計画的な学習はできず、兎に角こなしていくことで精一杯だったそうです。
安達さんが受験した年は、介護技術講習会が始まる前年でした。1次試験は、こうした勉強の成果もあって、合格しました。そして2次試験。1次の合格通知がきた段階で、受かった仲間同士で過去問題を元に実演をするなどの取り組みを行いました。しかしこの2次試験で、残念ながら落ちてしまったのです。何をポイントとして問われているのか、その整理ができていなかったと、安達さんは敗因を整理しています。
介護技術講習会を取りこぼす
さて、2年目も気を取り直して受験することにしました。筆記試験については一年目同様に、ノートの書き出しで勉強。昨年の取り組みの成果があって、2年目は知識の補強となりました。そして実技試験。この年より介護技術講習会が始まったので、安達さんも申し込んだのですが、しかし時期が遅く、どの会場も既に定員一杯で、再び受験することとなってしまいました。
翌年の1次試験は前年の積み重ねもあって大過なく通過し、安達さんは再び2回目の実技受験に臨むこととなりました。しかし「今度は落したくない」と、当時コムスンが開いていた実技試験の受験対策講座を受けることにしました。そこでは5分という制限時間の間に、どういった手順で最低限何をしなければならないのか、一緒に受講する人たちの前で、何度も実演を繰り返し、徹底してポイントを叩き込まれました。センターに帰ってからは、2次試験を受験する他の同僚たちに習ってきた実技試験のポイントを教えたりします。テクニックを身につけた効果もあって、試験は多少緊張したものの、落ち着いてできました。そして晴れて合格となったのでした。「実技試験を受験するならば、多少経費はかかっても、講習会を受けておくことはお勧め」だと安達さんは言います。
ところで、本試験に当たって、安達さんが特に注意したことといえば、子どもたちの健康管理だったそうです。学齢期の子どもがいると、インフルエンザなどの風邪をうつされるとしたら子どもからということが多いものです。子どもが熱を出して休んでしまうと、仕事も休まないとならないこともあったといいます。そこで子どもの健康管理をしっかりと行うことで、自分の健康管理にもなったそうです。
安達さんはその後、介護支援専門員の資格も取得し、いまさらに社会福祉士資格取得を目指しています。資格を取得すれば仕事が変わるといったことはないのですが、高齢化が進んでいくと、制度では対応できない様々なニーズに出遭うことが多くなります。そうしたとき、制度でフォローできること、あるいは地域社会の連携でカバーできることなど、多様性をもった活動が可能なように、視野も知見も広げておきたいというのが安達さんの思いなのでした。
これからの時代、恐らくは介護保険制度では補えない課題も頻繁に起こるようになっていくことでしょう。そうした将来のことも見据えて考えてみると、このN地域のように、住民同士が互いに支え合う仕組みがあるということは、とても大切なことと思われるのです。
翌年の1次試験は前年の積み重ねもあって大過なく通過し、安達さんは再び2回目の実技受験に臨むこととなりました。しかし「今度は落したくない」と、当時コムスンが開いていた実技試験の受験対策講座を受けることにしました。そこでは5分という制限時間の間に、どういった手順で最低限何をしなければならないのか、一緒に受講する人たちの前で、何度も実演を繰り返し、徹底してポイントを叩き込まれました。センターに帰ってからは、2次試験を受験する他の同僚たちに習ってきた実技試験のポイントを教えたりします。テクニックを身につけた効果もあって、試験は多少緊張したものの、落ち着いてできました。そして晴れて合格となったのでした。「実技試験を受験するならば、多少経費はかかっても、講習会を受けておくことはお勧め」だと安達さんは言います。
ところで、本試験に当たって、安達さんが特に注意したことといえば、子どもたちの健康管理だったそうです。学齢期の子どもがいると、インフルエンザなどの風邪をうつされるとしたら子どもからということが多いものです。子どもが熱を出して休んでしまうと、仕事も休まないとならないこともあったといいます。そこで子どもの健康管理をしっかりと行うことで、自分の健康管理にもなったそうです。
安達さんはその後、介護支援専門員の資格も取得し、いまさらに社会福祉士資格取得を目指しています。資格を取得すれば仕事が変わるといったことはないのですが、高齢化が進んでいくと、制度では対応できない様々なニーズに出遭うことが多くなります。そうしたとき、制度でフォローできること、あるいは地域社会の連携でカバーできることなど、多様性をもった活動が可能なように、視野も知見も広げておきたいというのが安達さんの思いなのでした。
これからの時代、恐らくは介護保険制度では補えない課題も頻繁に起こるようになっていくことでしょう。そうした将来のことも見据えて考えてみると、このN地域のように、住民同士が互いに支え合う仕組みがあるということは、とても大切なことと思われるのです。