13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第19回 松尾弘子さん
宅老所 生活相談員
松尾さんが使った参考書
介護福祉士国家試験 頻出問題要点チェック
中央法規出版
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介護福祉士受験暗記ブック
中央法規出版
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介護福祉士 予想問題集
U-CAN
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松尾さんの合格までの道のり
宅老所という空気
受話器の向こうから、賑やかな利用者さんらの声が聞こえてきます。ワイワイがやがや、といわば高齢者のサロンでしょうか。皆で集まることがいかにも楽しそうといった雰囲気が伝わってきます。お茶と漬物で話に花が咲く。そこは利用者の皆さんにとって、特別な場所というよりは日常の延長で、少々、使い勝手よく整理された場所といった感じなのでしょうか。
今回ご登場いただくのは、山間地の宅老所に勤める松尾弘子さん。いかにも親しい者同士の会話の途中で、かかってきた電話に出たといった感じで、電話口の口調も穏やかです。ベテラン主婦の経験をいかんなく発揮して、お年寄りと巧みに会話しながら介助をしている姿が見えるようです。
この宅老所は、定員12名。常時の利用は8〜10名といったところで、現在は、比較的要介護度の低い利用者の方が主体です。というのは最近、隣にグループホームができたため、認知症などで介護度の高い利用者の方がそちらに移ったためだそうです。
宅老所では、来所されるとお茶を飲みながら世間話などをしたりしていますが、そこに利用者に共通のやりたい事柄を探し出して一定のプログラムが組まれています。このプログラムは一律に誰もが参加しないとならないというものではなく、他にしたいことがあるならば、自分の好きなことをしていても構わないという括りです。そして入浴と食事。また月毎に行事なども組み込み、その準備といったことも楽しい作業の一駒です。
松尾さんが宅老所に勤めるようになったのは、5年前のこと。それまでは一般企業で事務の仕事をしてきたのですが、年齢が上がるにつれて作業の能率などに限界を感じて長年務めた職場を離れます。しかし、やはり仕事には就いていたいとの思いがあり、ヘルパーの仕事があるとの紹介で、まずは2級の講習会を受講しました。
2級の受講後しばらくして、自宅の近所の宅老所(現在の職場)で募集広告が出ているのを見て応募した、というのがこの仕事に就いたきっかけでした。ですから介護の仕事を積極的に望んだというわけではないのですが、職場でお年寄りに接してその笑顔に触れていると、やり甲斐が感じられ、この仕事は自分に向いていると思える毎日だそうです。
今回ご登場いただくのは、山間地の宅老所に勤める松尾弘子さん。いかにも親しい者同士の会話の途中で、かかってきた電話に出たといった感じで、電話口の口調も穏やかです。ベテラン主婦の経験をいかんなく発揮して、お年寄りと巧みに会話しながら介助をしている姿が見えるようです。
この宅老所は、定員12名。常時の利用は8〜10名といったところで、現在は、比較的要介護度の低い利用者の方が主体です。というのは最近、隣にグループホームができたため、認知症などで介護度の高い利用者の方がそちらに移ったためだそうです。
宅老所では、来所されるとお茶を飲みながら世間話などをしたりしていますが、そこに利用者に共通のやりたい事柄を探し出して一定のプログラムが組まれています。このプログラムは一律に誰もが参加しないとならないというものではなく、他にしたいことがあるならば、自分の好きなことをしていても構わないという括りです。そして入浴と食事。また月毎に行事なども組み込み、その準備といったことも楽しい作業の一駒です。
松尾さんが宅老所に勤めるようになったのは、5年前のこと。それまでは一般企業で事務の仕事をしてきたのですが、年齢が上がるにつれて作業の能率などに限界を感じて長年務めた職場を離れます。しかし、やはり仕事には就いていたいとの思いがあり、ヘルパーの仕事があるとの紹介で、まずは2級の講習会を受講しました。
2級の受講後しばらくして、自宅の近所の宅老所(現在の職場)で募集広告が出ているのを見て応募した、というのがこの仕事に就いたきっかけでした。ですから介護の仕事を積極的に望んだというわけではないのですが、職場でお年寄りに接してその笑顔に触れていると、やり甲斐が感じられ、この仕事は自分に向いていると思える毎日だそうです。
松尾さんの受験勉強
松尾さんは、入職後、2年してヘルパー1級の講習を受けることにしました。それは周囲の先輩が知識に基づいた介護を展開しているのをみて、「自分も仕事として関わる以上は、そうした知識体系を身につけていたい」との思いがありました。また当初から介護福祉士の資格を取るつもりでいたので、周囲からは、どうせ資格をとるならば国家資格に専念したほうがよいのでは、と言われたのだそうです。しかし、1級の講習過程には職場とは異なった介護の場での研修ができること、また他の施設での介護のあり方なども見てこれるからと、まずはあえてヘルパー1級の講習に臨みました。
自分から進んでの受講であったこともあってか、楽しく充実した研修となり、「大変にプラスになった」とのことです。
さて、介護福祉士試験については、就業3年の目処が立った06年にまず、介護技術講習会を受講しました。技術講習会は修了認定がなされると、向こう3年間は実技試験は免除とされます。そこで松尾さんは、この有効期限の間で資格がとれればそれで良いと、マイペースののんびり受験を決め込みました。というのも、勉強時間は帰宅後の家事が片付いた後になってしまいます。どうしても疲れが出たりして、勉強に身が入りません。
実は松尾さんは更年期障害の症状が出てきていて、日々の仕事もお年寄りに励まされながらの毎日でした。集中すること、文字を追って勉強するといったことは、特に辛いことでもあります。これは自分との闘いでもあるので、勉強と生活とのバランスを掴めればよいのですが、思うに任せなかったのでした。
また、1級の講習で勉強したこともあるので、全く知識がないわけでもないといった思いもどこかにあったようです。そうこうしているうちに、年も改まってしまい、問題集を開いて勉強を始めたのは1月になってからでした。これではどうやっても合格は無理と思えましたが、案の定、筆記試験は不合格となりました。
自分から進んでの受講であったこともあってか、楽しく充実した研修となり、「大変にプラスになった」とのことです。
さて、介護福祉士試験については、就業3年の目処が立った06年にまず、介護技術講習会を受講しました。技術講習会は修了認定がなされると、向こう3年間は実技試験は免除とされます。そこで松尾さんは、この有効期限の間で資格がとれればそれで良いと、マイペースののんびり受験を決め込みました。というのも、勉強時間は帰宅後の家事が片付いた後になってしまいます。どうしても疲れが出たりして、勉強に身が入りません。
実は松尾さんは更年期障害の症状が出てきていて、日々の仕事もお年寄りに励まされながらの毎日でした。集中すること、文字を追って勉強するといったことは、特に辛いことでもあります。これは自分との闘いでもあるので、勉強と生活とのバランスを掴めればよいのですが、思うに任せなかったのでした。
また、1級の講習で勉強したこともあるので、全く知識がないわけでもないといった思いもどこかにあったようです。そうこうしているうちに、年も改まってしまい、問題集を開いて勉強を始めたのは1月になってからでした。これではどうやっても合格は無理と思えましたが、案の定、筆記試験は不合格となりました。
休日の図書館通い
春が過ぎ、また、受験申し込みの時期がやってきました。松尾さんは、春からはそれなりに問題集を紐解いてはいたのですが、しかし、必死に取り組んでいるといった状況ではありません。そんな松尾さんの姿を見ていたご主人から、「これではまた落ちてしまいかねない。問題集を持って図書館に出かけ、身を入れるようにしては」と諭されたのでした。
松尾さんの受験勉強の仕方は、ほとんど問題集を解くことが中心です。解いてみて分からない問題があった場合には、受験の先輩のアドバイスから、解説本などで調べることにしました。また、1年目の本試験を受けてみて、自分の弱点をある程度把握できたので、そこを重点的に補うことにしました。
松尾さんが苦手だった科目は、特に障害者福祉論でした。これは普段の仕事ではあまり関わることがないこともあって、基本的な知識の不足がありました。また全体に制度系の科目は得点が低いことも弱点でした。そこで問題集ではこれらを中心に繰り返し取り組みました。
医学一般もどちらかと言うと知識不足が心配でした。そこでこの科目については、日々の仕事のなかで、看護師がスタッフとして配置されているので、分からないことがあると、その場で尋ねるといった勉強の仕方をしました。実地に基づいた知識の裏打ちは、これほど強いものはありません。介護技術系の科目については、施設内研修が活発なため、問題集はそのおさらいといったところで、後は出題の形に慣れればそれで自信がつきました。
試験も間近になってからは、さらに「10点アップの力を養成する」との勉強法を特長とする問題集に取り組みました。
松尾さんの受験勉強の仕方は、ほとんど問題集を解くことが中心です。解いてみて分からない問題があった場合には、受験の先輩のアドバイスから、解説本などで調べることにしました。また、1年目の本試験を受けてみて、自分の弱点をある程度把握できたので、そこを重点的に補うことにしました。
松尾さんが苦手だった科目は、特に障害者福祉論でした。これは普段の仕事ではあまり関わることがないこともあって、基本的な知識の不足がありました。また全体に制度系の科目は得点が低いことも弱点でした。そこで問題集ではこれらを中心に繰り返し取り組みました。
医学一般もどちらかと言うと知識不足が心配でした。そこでこの科目については、日々の仕事のなかで、看護師がスタッフとして配置されているので、分からないことがあると、その場で尋ねるといった勉強の仕方をしました。実地に基づいた知識の裏打ちは、これほど強いものはありません。介護技術系の科目については、施設内研修が活発なため、問題集はそのおさらいといったところで、後は出題の形に慣れればそれで自信がつきました。
試験も間近になってからは、さらに「10点アップの力を養成する」との勉強法を特長とする問題集に取り組みました。
2回目の筆記試験―解答欄が一つ余ってしまう
会場は昨年と同じだったので、様子は分かっていました。また、更年期障害の症状を軽減するためには、服薬管理をしっかりして、体調を整えることに専念しました。
こうして臨んだ2回目の筆記試験でしたので、比較的順調に問題が解けていきます。しかしなんと、問題の最後に来て、解答欄のスペースが1問分空いていることに気付いたのでした。これには焦ります。どこでズレてしまったのか、確実に探し出さないとなりません。「問題を解き終わった他の受験者たちが、席を立って会場を出て行きます。それで余計に気持ちが上ずりました」。なんとかフォローはできたのでしたが、どこか間違っているような気がして、今年もまた不合格だと落胆して帰宅したのでした。
本番の試験では、松尾さんのように、解答欄をズラして記載してしまい、慌てて消して書き直している間に間違えてしまう、といった例はよくあるのです。また名前や受験番号の記載漏れも多くみられます。もうじき本試験。当日は、このようなミスを無くすため、1問解いては解答欄の番号を確認する、またまず最初に番号・名前を書き込むなど、手順を決めておくことも、合格を確実にする手段の一つです。
3月末になって、社会福祉振興試験センターから合格の通知が届きました。そのときは信じられず、とても驚いたと同時に喜びもまた大きかったとのことです。おそらく書き直した部分はそれなりにフォローができていたのでしょう。
松尾さんは、今後はさらにケアマネジャー資格の取得を目指したいと言っています。そこには「いつも何かに挑戦していたい」といった、向上心がうかがえます。
こうして臨んだ2回目の筆記試験でしたので、比較的順調に問題が解けていきます。しかしなんと、問題の最後に来て、解答欄のスペースが1問分空いていることに気付いたのでした。これには焦ります。どこでズレてしまったのか、確実に探し出さないとなりません。「問題を解き終わった他の受験者たちが、席を立って会場を出て行きます。それで余計に気持ちが上ずりました」。なんとかフォローはできたのでしたが、どこか間違っているような気がして、今年もまた不合格だと落胆して帰宅したのでした。
本番の試験では、松尾さんのように、解答欄をズラして記載してしまい、慌てて消して書き直している間に間違えてしまう、といった例はよくあるのです。また名前や受験番号の記載漏れも多くみられます。もうじき本試験。当日は、このようなミスを無くすため、1問解いては解答欄の番号を確認する、またまず最初に番号・名前を書き込むなど、手順を決めておくことも、合格を確実にする手段の一つです。
3月末になって、社会福祉振興試験センターから合格の通知が届きました。そのときは信じられず、とても驚いたと同時に喜びもまた大きかったとのことです。おそらく書き直した部分はそれなりにフォローができていたのでしょう。
松尾さんは、今後はさらにケアマネジャー資格の取得を目指したいと言っています。そこには「いつも何かに挑戦していたい」といった、向上心がうかがえます。