13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第13回 廣崎えりかさん
デイサービス事業所 介護職員
廣崎さんが使った参考書
介護福祉士受験対策VIDEO 四訂 実技試験合格へのパスポート(DVD版)
中央法規出版
中央法規出版
まるごと覚える 介護福祉士 ポイントレッスン
新星出版社
新星出版社
詳解 介護福祉士過去5年問題集
成美堂出版
成美堂出版
介護技術講習テキスト
日本介護福祉士養成施設協会
日本介護福祉士養成施設協会
廣崎さんの合格までの道のり
廣崎さんと介護の職場
デイサービスは、在宅3本柱といわれ、在宅で過ごす要介護高齢者とその家族にとっては、いまでは大変に当たり前な、なくてはならないサービスの一つとして定着しています。しかし、介護保険制度の改定のたびに給付内容が大きく変更され、利用者もそしてサービスを提供する側も戸惑いの多い事業となっているのが実状ではないでしょうか。また介護報酬での運営となったことで、かつては包括的に捉えられていたサービスが、報酬加算の視点から捉えられるようになり、報酬での減点を回避したいとの気持ちが強くなって、個別支援の大本の意義が見失われているといった声も聞こえてきます。
そのような状況の中で、デイのあり方を模索している施設で福祉を見つめているのが今回登場する廣崎えりかさんです。
そのような状況の中で、デイのあり方を模索している施設で福祉を見つめているのが今回登場する廣崎えりかさんです。
学問としての福祉と実際の介護
廣崎さんは大学で社会福祉を学び、社会福祉士資格をもって高齢者介護の世界に入った人です。廣崎さんの出身大学では、大学に寄せられる求人も福祉系の事業ばかりで、ほとんどの学生が福祉の道に就職します。ですから当然のことのように福祉系への就職となったのですが、高齢者介護の道を選んだのは、ゼミなどで高齢者福祉を専攻し、アルバイト先としても介護の仕事をしていたことで、なじみが深かったこともありました。そこで、学校を卒業すると、迷わずに介護施設のある現在の社会福祉法人に就職することとなったのでした。
しかし介護の仕事に就いてみて、「学問としての福祉と実際に人に関わることとの乖離」に、廣崎さんは少々戸惑ったといいます。大学で習った事柄も大切かもしれませんが、介護の現場では、いかにお年寄りと接しお年寄りの生活の張り合いといった気持ちを引き出していくのかが課題となる場面が多いのでした。レクリエーションを盛り立てていくといったこと、グループのメンバーの意欲を引き出していくといったことなど、学校では具体的に学ぶことはあまりありません。どうしてよいのかわからずに、当初は毎日、そのことばかりを考えていたといいます。
そんなわけで、入職1年目は自分は「施設の問題児」ではなかったかと振り返っています。2年目になってなんとかお年寄りと普通に話すことができるようになって、いまでは心を通わせることの大切さを噛みしめている毎日だとか。
しかし介護の仕事に就いてみて、「学問としての福祉と実際に人に関わることとの乖離」に、廣崎さんは少々戸惑ったといいます。大学で習った事柄も大切かもしれませんが、介護の現場では、いかにお年寄りと接しお年寄りの生活の張り合いといった気持ちを引き出していくのかが課題となる場面が多いのでした。レクリエーションを盛り立てていくといったこと、グループのメンバーの意欲を引き出していくといったことなど、学校では具体的に学ぶことはあまりありません。どうしてよいのかわからずに、当初は毎日、そのことばかりを考えていたといいます。
そんなわけで、入職1年目は自分は「施設の問題児」ではなかったかと振り返っています。2年目になってなんとかお年寄りと普通に話すことができるようになって、いまでは心を通わせることの大切さを噛みしめている毎日だとか。
介護福祉士資格取得に挑む
廣崎さんは、2年が経過した時点で介護福祉士の受験資格の目処が立ちました。というのは、学生時代のアルバイトとしてのキャリアが認められたためで、そこで早速、受験の申し込みをしました。しかし廣崎さんは介護福祉士資格を積極的にとりたいと願っていたわけではありません。高齢者介護の仕事に携わることになった以上、勉学としても必要なことといった意識からの取得でした。
廣崎さんは、すでに社会福祉士資格をもっているため、制度系の科目については、おさらいをすればそれで済んでしまったというのが実態です。また技術系の科目については、施設自体が日々の介護の質を高めるために学習会を開催しているので、この学習会でしっかりと学んでいるとそれで十分に役に立ち、特別に受験勉強をする必要がなかったといいます。ですから廣崎さんが使った筆記試験用の参考書類といっても、14科目全体が網羅されて解説されている比較的コンパクトな参考書といった程度で、勉強らしいことはしていないのだといいます。また参考書を開いておさらいを始めたのも筆記試験の1月前とのことで、筆記試験に関しては、あまり皆さんの参考にはなりません。
廣崎さんは、すでに社会福祉士資格をもっているため、制度系の科目については、おさらいをすればそれで済んでしまったというのが実態です。また技術系の科目については、施設自体が日々の介護の質を高めるために学習会を開催しているので、この学習会でしっかりと学んでいるとそれで十分に役に立ち、特別に受験勉強をする必要がなかったといいます。ですから廣崎さんが使った筆記試験用の参考書類といっても、14科目全体が網羅されて解説されている比較的コンパクトな参考書といった程度で、勉強らしいことはしていないのだといいます。また参考書を開いておさらいを始めたのも筆記試験の1月前とのことで、筆記試験に関しては、あまり皆さんの参考にはなりません。
実技試験こそが課題
そんな廣崎さんが心配していたのは実技試験でした。春の申し込みの時点で、介護技術講習会があることは知っていたのですが、これは何日も受講しなくてはなりませんし、自称「施設の問題児」の身としては、休んで受講するという気持ちにもなれなかったのだそうです。また周囲には、「落ち着いてやれば通る」と簡単に言ってのける人もいて、それほどの自信はないのでしたが、試験は実技も受けることに決めていたとのことです。
受験対策DVDビデオで練習
さて、1月の筆記試験が終わり、幾つかの会社で出している解答速報などで点検したところ、一定の得点は得ていると判断できました。そこで1月の末からは、実技試験に向けた学習を始めることにしました。廣崎さんが学習で使ったのは、職場の先輩に勧められて借りたDVDのビデオ受験対策教材。もっぱら帰宅後、自宅でビデオを観ながら練習を行ったそうです。ときには仕事で介助をする段において、声かけをしっかりとして、介護動作を確認しながら行うなど、試験を意識した介護の日々が続きました。実は家では、家族にモデルになってもらいたかったのでしたが、言い出せずに終わってしまったそうです。
「このDVDビデオでの学習は、実際の試験会場の雰囲気も理解でき、動作の円滑な進行の仕方や、また声かけなどの重要性が理解できたので、見せてもらって大変に良かったと思っています」と廣崎さん。一定の試験時間の中で、与えられた課題をすべて行うということについても、ビデオを観て、実際に自分でやってみて、おおよそできているのではとの感触が得られました。
しかし、廣崎さんにはもって生まれた性格がありました。というのは「性分として、一つひとつの事柄をきちんと確認しながら進まないと、先に進めないたちなので、どうしても一つの課題に時間がかかってしまいやすいのだ」といいます。ですから試験問題の全体が示され、ここまでやらなくてはならないと分かってはいても、どうしても先を考えて軽重をつけて行うなど要領を利かすといったことができずに、とにかく一つのことをしっかりとやり遂げてからでないと次の動作に入れないのだそうです。
さて試験当日、実際の試験そのものは5分で終わるのにも関わらず、問題の漏洩を防ぐために、試験の前後には密室状態で待たされ、3時間は会場に閉じ込められたままの状態になりました。「受験者の皆さんには、試験そのもの以上に、待つことが受験生にはストレスになったのでは」と廣崎さん。
そして終に自分の番が来ました。試験の課題は確認でき、やらなければならないことも頭では整理できました。実技は、動作を一つひとつ確認しながら行っていきました。しかしそのためか、時間配分がうまくいかず、一つの項目を残して時間切れとなってしまったのでした。「気持ちのうえでは分かってはいても、性格だから仕方ないし、これで落ちたと思った」そうです。
しかし、意外なことに合格通知が届き、これまで行ってきたことが無意味ではなかったと思えたのでした。
「このDVDビデオでの学習は、実際の試験会場の雰囲気も理解でき、動作の円滑な進行の仕方や、また声かけなどの重要性が理解できたので、見せてもらって大変に良かったと思っています」と廣崎さん。一定の試験時間の中で、与えられた課題をすべて行うということについても、ビデオを観て、実際に自分でやってみて、おおよそできているのではとの感触が得られました。
しかし、廣崎さんにはもって生まれた性格がありました。というのは「性分として、一つひとつの事柄をきちんと確認しながら進まないと、先に進めないたちなので、どうしても一つの課題に時間がかかってしまいやすいのだ」といいます。ですから試験問題の全体が示され、ここまでやらなくてはならないと分かってはいても、どうしても先を考えて軽重をつけて行うなど要領を利かすといったことができずに、とにかく一つのことをしっかりとやり遂げてからでないと次の動作に入れないのだそうです。
さて試験当日、実際の試験そのものは5分で終わるのにも関わらず、問題の漏洩を防ぐために、試験の前後には密室状態で待たされ、3時間は会場に閉じ込められたままの状態になりました。「受験者の皆さんには、試験そのもの以上に、待つことが受験生にはストレスになったのでは」と廣崎さん。
そして終に自分の番が来ました。試験の課題は確認でき、やらなければならないことも頭では整理できました。実技は、動作を一つひとつ確認しながら行っていきました。しかしそのためか、時間配分がうまくいかず、一つの項目を残して時間切れとなってしまったのでした。「気持ちのうえでは分かってはいても、性格だから仕方ないし、これで落ちたと思った」そうです。
しかし、意外なことに合格通知が届き、これまで行ってきたことが無意味ではなかったと思えたのでした。
ポイントを確認しながら進めて
「合格したから言えることかもしれませんが、振り返って考えてみると、自分のそうした性格は、ポイント積み上げていくことになって落ち度が少なくなり、試験が減点方式であるなら、そのほうが有利ではないかと」と廣崎さんは思っています。
この、ポイントポイントをきちんと確認しながら進めていくというやり方は、受験で上がってしまうという心理傾向の人には有効に機能するのではないかと廣崎さん。もちろん時間配分などでも工夫する必要があることは言うまでもありません。
「自分の例は参考にならないかも知れませんが、ポイントを確認するということは、何が大切なのかを意識して行うということであって、それを理解していることが試験として求められているのであるから、そう悪いやり方であるとは思わない」と廣崎さん。
この、ポイントポイントをきちんと確認しながら進めていくというやり方は、受験で上がってしまうという心理傾向の人には有効に機能するのではないかと廣崎さん。もちろん時間配分などでも工夫する必要があることは言うまでもありません。
「自分の例は参考にならないかも知れませんが、ポイントを確認するということは、何が大切なのかを意識して行うということであって、それを理解していることが試験として求められているのであるから、そう悪いやり方であるとは思わない」と廣崎さん。
一人ひとりのお年寄りに向き合うこと
介護福祉士資格をとったいまも、廣崎さんは一つひとつのことにこだわりながら仕事を行っています。「融通が利かないということかもしれませんが、自分の性格で変えられません。しかし、一人ひとりの利用者にしっかりと向き合うということの大切さを、これまでよりも一層意識できるようになってきました」(廣崎さん)。デイを利用するお年寄りは地域に生きる人々であり、家族とともに生きているといった利用者の周辺環境についても関心をもって、お年寄りの支援ができるようにしていきたいと、いま廣崎さんは考えています。介護職としての仕事の視点は当然のこととして、それ以上に、そこには福祉としての介護を捉えようといった意欲が感じられます。
ところで、さらなる資格について尋ねたところ、「次の資格が必要となるときがくればまた勉強することになるかもしれませんが、資格のために仕事があるのではないと思っているので、必要に応じて」という考えだそうです。
保険制度に入ってから、どこの事業者も運営よりは経営面に視点が移っていくなかで、ともすると何のためにサービスを提供しているのかという基本を見失いがちになっています。廣崎さんの持ち前は、その純粋な気持ちでしょう。その想いは、必ずや利用者にも伝わるもので、そこに廣崎さんの成長があると思います。
そして制度もまた、介護現場でのこうした純粋な視点や気持ちを損なうことのないものであって欲しいと願ってやみません。
ところで、さらなる資格について尋ねたところ、「次の資格が必要となるときがくればまた勉強することになるかもしれませんが、資格のために仕事があるのではないと思っているので、必要に応じて」という考えだそうです。
保険制度に入ってから、どこの事業者も運営よりは経営面に視点が移っていくなかで、ともすると何のためにサービスを提供しているのかという基本を見失いがちになっています。廣崎さんの持ち前は、その純粋な気持ちでしょう。その想いは、必ずや利用者にも伝わるもので、そこに廣崎さんの成長があると思います。
そして制度もまた、介護現場でのこうした純粋な視点や気持ちを損なうことのないものであって欲しいと願ってやみません。