13万人を超える受験者の中から晴れて介護福祉士になった皆さんに、仕事をしながら勉強を続けるコツや効果的な勉強法、受験を仕事に活かす展望についてうかがいました。
第11回 大田昌子さん
介護療養型医療施設 介護職
大田さんが使った参考書
(1)通信講座の試験問題、解説テキスト
ユーキャン
ユーキャン
(2)介護福祉士国家試験 14科目 要点解説と模擬問題集
久美出版
久美出版
(3)介護福祉士国家試験解説集
中央法規出版
中央法規出版
(4)介護福祉士全国統一模擬試験
中央法規出版
中央法規出版
大田さんの合格までの道のり
介護療養型病床といえども、生活面を重視したケアは大切
厚生労働省の施策方針では、今後、介護療養型の病床転換を図り、老人保健施設などへの移行を促していくこととされています。医療保険財政の逼迫といった情勢から打ち出された方針のようですが、医療現場の反発もあって転換は国の意図するようには進んでいないようです。あまりに採算が合わないならば、病棟を閉じることも考えているといった法人もあるとのこと。
国は、医療財政といった側面からすれば転換を促進したいところでしょうが、利用者サイドの患者さんからすれば、運営形態で議論するよりも、療養型の病床といえども生活の場となっている以上は、そのケア環境とケアの質をこそ問いたいところです。しかし、医療施設の多くでは、まだまだ生活面やケアの質といったことを問題と捉える観点は少ないようです。
そのような中、特養も驚くほどのユニットケアに取り組み、ケアの質の向上にと日々の学習を徹底している病院があります。医療を提供する場ではあっても、そこでの暮らしがより家庭の日常に迫るように、普通に家庭で暮らしているならば異常と思われることが医療施設だから安易に当然とされることのないように、そしてケアが生活を追っていけるようにと、看護職も介護職も様々な学習会を通して学んでいるのです。
国は、医療財政といった側面からすれば転換を促進したいところでしょうが、利用者サイドの患者さんからすれば、運営形態で議論するよりも、療養型の病床といえども生活の場となっている以上は、そのケア環境とケアの質をこそ問いたいところです。しかし、医療施設の多くでは、まだまだ生活面やケアの質といったことを問題と捉える観点は少ないようです。
そのような中、特養も驚くほどのユニットケアに取り組み、ケアの質の向上にと日々の学習を徹底している病院があります。医療を提供する場ではあっても、そこでの暮らしがより家庭の日常に迫るように、普通に家庭で暮らしているならば異常と思われることが医療施設だから安易に当然とされることのないように、そしてケアが生活を追っていけるようにと、看護職も介護職も様々な学習会を通して学んでいるのです。
自立支援と生活面のサポートを徹底した療養環境が、資格取得の勉強に役立つ
かつては会社勤めで一般の事務をしていたという大田昌子さん。看護師をされていたお母さんが進行性の難病になり在宅での介護が必要になるなかで、ヘルパー3級、2級の講習を受け、専門的な関わりを身につけることでお母さんが過ごしやすい環境を整えてきました。そのお母さんも亡くなり、再び事務の仕事をとも考えたそうですが、「折角、身につけた介護の知識や技能をそのままにしておくのももったいなく、また介護の仕事は自分に向いている」と思い、現在の病院に介護職として勤務する道を選んだのは、5年前のことでした。その病院の運営方針は、お母さんの介護の中で学んだ自分が望んでいる介護と一致したものがあったからでした。
病院という環境は、もともと多くの有資格の専門職が存在するところです。「こうした世界に飛び込む以上、自分もやはり専門資格をもっていることが大切」と、大田さんはここに勤めると決めたときから、いずれは介護福祉士の国家資格を取ることを決めていました。それだけに、仕事に対する心構えができていたのでしょう。日々の仕事はそれ自体が資格取得の勉強につながり、さらにこの病院のケアへのこだわりが、様々な学習会を生み出していて、それがまた結果として大田さんの資格取得の道につながっていったのでした。
たとえば、生活を考えたとき、病棟という環境のなかで何が大切かを考えると、精神面、心理面のサポートのあり方が問われます。また自立支援の介護には何が必要か、排泄場面、入浴場面それぞれに、やはり学習会が盛んに行われているのです。特養などの施設からみると、病院での入浴というと保清が捉えられているだけなのでは、と思えてしまいますが、ここでは檜の個別浴槽に、家庭よりもゆったりとした浴室で、穏やかに入浴が楽しめます。健側、患側を捉えて動かせる部位を巧みに誘導して運動機能の維持に役立てる、排泄は極力、トイレでの排泄を前提としながら、プライバシーを考えたオムツ交換のあり方などの工夫が行われています。
もちろん、ベッド上で毎日の大半を過ごすのではなく、離床して家庭的な雰囲気のなかで患者さん同士の会話を楽しみながらの生活を支援していくには、どのような心理的・精神的な支援が必要か、その素材も含めてコミュニケーションの取り方を勉強するなどといった講習が常にあるのです。
大田さんは、早くから資格取得を目指してはいたのですが、ヘルパー2級の勉強してきた下地があるうえに、こうした日々の仕事をとおした勉強が重なっていたため、試験のためだけの勉強となると、実のところ間際になるまで、なかなか本腰が入らなかったと振り返っています。
病院という環境は、もともと多くの有資格の専門職が存在するところです。「こうした世界に飛び込む以上、自分もやはり専門資格をもっていることが大切」と、大田さんはここに勤めると決めたときから、いずれは介護福祉士の国家資格を取ることを決めていました。それだけに、仕事に対する心構えができていたのでしょう。日々の仕事はそれ自体が資格取得の勉強につながり、さらにこの病院のケアへのこだわりが、様々な学習会を生み出していて、それがまた結果として大田さんの資格取得の道につながっていったのでした。
たとえば、生活を考えたとき、病棟という環境のなかで何が大切かを考えると、精神面、心理面のサポートのあり方が問われます。また自立支援の介護には何が必要か、排泄場面、入浴場面それぞれに、やはり学習会が盛んに行われているのです。特養などの施設からみると、病院での入浴というと保清が捉えられているだけなのでは、と思えてしまいますが、ここでは檜の個別浴槽に、家庭よりもゆったりとした浴室で、穏やかに入浴が楽しめます。健側、患側を捉えて動かせる部位を巧みに誘導して運動機能の維持に役立てる、排泄は極力、トイレでの排泄を前提としながら、プライバシーを考えたオムツ交換のあり方などの工夫が行われています。
もちろん、ベッド上で毎日の大半を過ごすのではなく、離床して家庭的な雰囲気のなかで患者さん同士の会話を楽しみながらの生活を支援していくには、どのような心理的・精神的な支援が必要か、その素材も含めてコミュニケーションの取り方を勉強するなどといった講習が常にあるのです。
大田さんは、早くから資格取得を目指してはいたのですが、ヘルパー2級の勉強してきた下地があるうえに、こうした日々の仕事をとおした勉強が重なっていたため、試験のためだけの勉強となると、実のところ間際になるまで、なかなか本腰が入らなかったと振り返っています。
過去問題集を中心に出題傾向を把握した対策をとる
大田さんが受験を決めた年は、丁度、介護技術講習会が始まった年でした。その年受験を考えていた多くの対象者が、一挙に講習会実施施設・機関等に申し込みを進めたため、大田さんが申し込んだときにはすでに遅く、どこも定員一杯で受付を締め切っていました。大田さんも、自分は緊張するタイプなので、実技試験を受けるよりは、時間と経費がかかっても技術講習会を受けたほうがよいと思っていただけに、これは誤算でした。
しかし、まずは筆記試験の学習を進めなくてはなりません。大田さんはヘルパー講習で使ったテキストのほかに、既に資格を取得していた友人から、通信講座で利用したテキスト類を分けてもらい、インターネットを利用して不足している教科の資料を補って勉強をするといった形をとりました。さらに、過去問題集を購入して主にこれを解くことで勉強を進め、出題された事柄について知識を補うためにテキストに遡って覚えるという取り組み方をしていったのでした。
「過去問題からは、最近の出題傾向といったことも把握できます。自立支援の介護や生活支援の介護といった視点からの出題が多くなってきたのが最近の傾向ですから、そうした問いを何度も解き進めていけば、自ずと翌年出題される問題の予想が立つ」という算段です。
しかし、まずは筆記試験の学習を進めなくてはなりません。大田さんはヘルパー講習で使ったテキストのほかに、既に資格を取得していた友人から、通信講座で利用したテキスト類を分けてもらい、インターネットを利用して不足している教科の資料を補って勉強をするといった形をとりました。さらに、過去問題集を購入して主にこれを解くことで勉強を進め、出題された事柄について知識を補うためにテキストに遡って覚えるという取り組み方をしていったのでした。
「過去問題からは、最近の出題傾向といったことも把握できます。自立支援の介護や生活支援の介護といった視点からの出題が多くなってきたのが最近の傾向ですから、そうした問いを何度も解き進めていけば、自ずと翌年出題される問題の予想が立つ」という算段です。
模擬試験は緊張を解く鍵
しかし、なかなか思うようには手がつかず、実際に問題集に取り組んだのは夏が過ぎてからでした。その後も、受験勉強は帰宅してからが主で、平均するとおよそ1時間程度。改まって机に座って勉強するというより、「何かをしながら、ちょっとした合間、合間に問題集を開く」というやり方だったそうですが、「自分には向いていた」と大田さん。
そういうわけで、本格的な勉強に入ったのは、試験も押し迫った12月に入ってからのことでした。学生時代の試験勉強も、一夜漬けの勉強で済ませてしまうことが多かったと、「どうも切羽詰らないと神輿があがらないところがある」と自分を分析しています。それでも、職場の同僚たちと試験問題のポイントについて話し合うなどして弱点を補強し、「制度など改変のよくある事項については、新聞に目を通すことを怠らずにいた」のだそうです。これらは普段の意識がしっかりしているから捉えられることで、闇雲にテキストの文字面を眺めていても覚えることは困難です。
暮れが近づいた頃、大田さんは筆記試験の模擬試験を受けました。そこでは本番さながらの雰囲気で、実際の回答方式と同じ形式で問題が出されるので、試験の雰囲気もよく分かり、つまらない落ち度がないようなアドバイスを手に入れたとのことです。また出題傾向についても、大田さん自身で過去問題集を解いて一定の把握をしていたのですが、専門家の目からみた最近の出題傾向とその背景などの講義もあり、本番までの残りの期間の学習の仕方に役立ったとのことでした。
実技試験については、介護技術講習会の申し込みの遅れてしまった大田さん。そこで2次試験となる実技試験を受けることになります。その対策も立てておく必要がありました。最近は、特に自立支援に基づいた介護を捉えた出題が多いと自分で予想を立て、そのためにはどのような言葉かけが大切か、そこを考え勉強しました。この言葉かけ、「普段の介護で実践していないと、試験会場でいきなり行おうとしても緊張して声も出せない人も多い」と聞いていましたし、慣れていない動作は上がってしまえば上手くいく筈もありません。
そこで大田さんは、毎日の介護を通じて、言葉かけや自立支援の介護に通じる事項を実践し、それが身になるように日々の介護に落とし込んでいくようにしました。それは日々の介護を高めることにもなり、いわば一挙両得な学習ともなったのでした。
さらに筆記試験同様に、実技の模擬試験も申し込みました。これは1次試験の発表後に行われる日程になっていましたが、1次試験の合否はともかく、まずは緊張感を和らげることにもなるだろうと先手を打ったのでした。
このように、あまり模範的な受験生とは言えなかった大田さんですが、なんとか試験本番までには一通り満遍なくそれぞれの教科を学習することができました。しかし「精神保健」の科目だけはどうにも苦手意識が残りました。それは自らが精神の分野は難しいと逃げたいという気持ちがあったため、これまでかかわりが少なかったこともあるようです。
逆に「『医学一般』などは、病院勤務ということもあって、看護師さんほどの知識が要求されるわけではありませんが、試験で出題されるレベルの内容ならば、ほぼ仕事を通じて身についた」ということでした。ですから医学一般が不得意といった意識もなかったとか。
そして誰もが苦手意識をもつ制度系の科目については、先にも触れましたが、報道などにも関心をもって臨んでいたので、これは覚えるしかないのですが、関心をもって臨めばそれなりに身についたと振り返っています。
年が明けると、1月末には1次試験の筆記試験が行われます。試験会場には隣の県が指定されていました。そこは試験当日に家を出ても計算上は間に合うとは思ったのでしたが、天候などの影響や交通機関のトラブルなども考慮し、試験開始すれすれに飛び込むことになってしまうなどすると、どうにも気持ちが焦ってうまく回答できないだろうと、あえて会場近くに前泊としました。多少の出費ではありますが、試験には余裕をもって臨むことが大切でしょう。
さて、1次試験は想像していたよりはゆとりをもって解答でき、結果も合格でした。その後、申し込んでおいた実技試験の模擬試験を試験直前に受講し、どういった視点で採点がなされるのか、また実技試験といった特殊な状況を事前に体験しておくことはとても有意義だったそうです。その甲斐あって、2次試験も合格。大田さんは無事に国家資格を取得したのでした。
大田さんはいま、自分の受験対策を振り返ってみて、これから資格取得を目指す人たちにも、日々の仕事を通じた勉強を心がけてほしいと願っています。資格試験は介護の質を高めるためにあるのですから、日々の仕事で学びながら学習していくということは、介護の勉強の本筋でしょう。加えて覚えないとならない制度などの学習がありますが、これも日々、関心をもって制度を捉える習慣ができていれば、それほど難しいことではないのかもしれません。
そして、やはり試験は緊張という足かせがつきものです。そのためにも、模擬試験などは役に立つので、受けておいたほうが得策との感想でした。
そういうわけで、本格的な勉強に入ったのは、試験も押し迫った12月に入ってからのことでした。学生時代の試験勉強も、一夜漬けの勉強で済ませてしまうことが多かったと、「どうも切羽詰らないと神輿があがらないところがある」と自分を分析しています。それでも、職場の同僚たちと試験問題のポイントについて話し合うなどして弱点を補強し、「制度など改変のよくある事項については、新聞に目を通すことを怠らずにいた」のだそうです。これらは普段の意識がしっかりしているから捉えられることで、闇雲にテキストの文字面を眺めていても覚えることは困難です。
暮れが近づいた頃、大田さんは筆記試験の模擬試験を受けました。そこでは本番さながらの雰囲気で、実際の回答方式と同じ形式で問題が出されるので、試験の雰囲気もよく分かり、つまらない落ち度がないようなアドバイスを手に入れたとのことです。また出題傾向についても、大田さん自身で過去問題集を解いて一定の把握をしていたのですが、専門家の目からみた最近の出題傾向とその背景などの講義もあり、本番までの残りの期間の学習の仕方に役立ったとのことでした。
実技試験については、介護技術講習会の申し込みの遅れてしまった大田さん。そこで2次試験となる実技試験を受けることになります。その対策も立てておく必要がありました。最近は、特に自立支援に基づいた介護を捉えた出題が多いと自分で予想を立て、そのためにはどのような言葉かけが大切か、そこを考え勉強しました。この言葉かけ、「普段の介護で実践していないと、試験会場でいきなり行おうとしても緊張して声も出せない人も多い」と聞いていましたし、慣れていない動作は上がってしまえば上手くいく筈もありません。
そこで大田さんは、毎日の介護を通じて、言葉かけや自立支援の介護に通じる事項を実践し、それが身になるように日々の介護に落とし込んでいくようにしました。それは日々の介護を高めることにもなり、いわば一挙両得な学習ともなったのでした。
さらに筆記試験同様に、実技の模擬試験も申し込みました。これは1次試験の発表後に行われる日程になっていましたが、1次試験の合否はともかく、まずは緊張感を和らげることにもなるだろうと先手を打ったのでした。
このように、あまり模範的な受験生とは言えなかった大田さんですが、なんとか試験本番までには一通り満遍なくそれぞれの教科を学習することができました。しかし「精神保健」の科目だけはどうにも苦手意識が残りました。それは自らが精神の分野は難しいと逃げたいという気持ちがあったため、これまでかかわりが少なかったこともあるようです。
逆に「『医学一般』などは、病院勤務ということもあって、看護師さんほどの知識が要求されるわけではありませんが、試験で出題されるレベルの内容ならば、ほぼ仕事を通じて身についた」ということでした。ですから医学一般が不得意といった意識もなかったとか。
そして誰もが苦手意識をもつ制度系の科目については、先にも触れましたが、報道などにも関心をもって臨んでいたので、これは覚えるしかないのですが、関心をもって臨めばそれなりに身についたと振り返っています。
年が明けると、1月末には1次試験の筆記試験が行われます。試験会場には隣の県が指定されていました。そこは試験当日に家を出ても計算上は間に合うとは思ったのでしたが、天候などの影響や交通機関のトラブルなども考慮し、試験開始すれすれに飛び込むことになってしまうなどすると、どうにも気持ちが焦ってうまく回答できないだろうと、あえて会場近くに前泊としました。多少の出費ではありますが、試験には余裕をもって臨むことが大切でしょう。
さて、1次試験は想像していたよりはゆとりをもって解答でき、結果も合格でした。その後、申し込んでおいた実技試験の模擬試験を試験直前に受講し、どういった視点で採点がなされるのか、また実技試験といった特殊な状況を事前に体験しておくことはとても有意義だったそうです。その甲斐あって、2次試験も合格。大田さんは無事に国家資格を取得したのでした。
大田さんはいま、自分の受験対策を振り返ってみて、これから資格取得を目指す人たちにも、日々の仕事を通じた勉強を心がけてほしいと願っています。資格試験は介護の質を高めるためにあるのですから、日々の仕事で学びながら学習していくということは、介護の勉強の本筋でしょう。加えて覚えないとならない制度などの学習がありますが、これも日々、関心をもって制度を捉える習慣ができていれば、それほど難しいことではないのかもしれません。
そして、やはり試験は緊張という足かせがつきものです。そのためにも、模擬試験などは役に立つので、受けておいたほうが得策との感想でした。