第9回 住宅改造・福祉用具の工夫 その2〜暮らしながらの住宅改修〜
認知症の方が生活するお宅で住宅改修を行う場合、家の雰囲気が変わって「自分の家だと分からなくなってしまうのではないか」「工事中に落ち着かなくなったらどうしたらいいのか」と考え、改修工事を躊躇される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は暮らしながらの住宅改修を行った工夫をご紹介したいと思います。
そこで、今回は暮らしながらの住宅改修を行った工夫をご紹介したいと思います。
住まいの工夫の内容
工事期間中も家族と一緒に暮らしながらトイレの改修を行っていました。具体的には、トイレの面積拡張、トイレの扉を開き戸から引き戸に交換、縦手すりの設置という工事内容でした。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
自宅のトイレで排泄するときに、便器に本来の向きとは逆向きに座ってしまい、失敗してしまうことがありました。家族は、充分な広さのあるトイレでは、正しい向きで便器に座ることができるので、自宅では間違えてしまう理由はトイレの広さが原因なのではないか考えました。また、将来的に、介助が必要になったり車いすを使うようになったりした場合、現在のトイレでは排泄することが難しい、という状況でした。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
トイレを広くしたことで、排泄動作が楽にできるようになったということでした。また、引き戸にしたことによってトイレの扉の開口部が広がったので、家族が見守るときや衣服の着脱の手伝いがしやすくなったと感じられていました。
専門家からみたひとこと
今回の住まいの工夫のポイントは、住宅改修を行うときに、期間中に暮らしながら住宅の変化を見える形で工事を行ったことです。これによって、認知症の方が改修工事による変化を受け止めやすくなり、混乱することなく、新しいトイレ環境に移行することができました。
改修工事をすることを決めたとき、工事期間中は慣れない状況で緊張したり不安になったりしないようにショートステイを利用することも検討していました。しかし、工事が終わって戻ってきたときに環境の変化を受け止められず、自分の家だと分からなくなってしまったらもっと困るので、暮らしながらの住宅改修を選んだということでした。
この暮らしながらの住宅改修を行うために様々な配慮をしていました。
例えば、改修工事中は作業の音なども気になるので、デイサービスを毎日利用し、デイサービスに行くことに気が進まないときは、近所の娘さん宅に行くことにしていました。また、1階のトイレが使えない時は、2階のトイレを使用することにしました。
また、ご本人が自分の家がどのように変わっていくのか分かるように、工事の様子を見てもらっていました。施工業者には、ご本人に「いまはこのような工事をしているところだ」ということを出来る限り説明してほしいとお願いしたということでした。同時に、大工さんにも認知症という病気への理解を深めてほしいという思いもあったそうです。
この事例の場合、ご本人が2階のトイレを使える状況にあったこと、家族や介護支援専門員のきめ細やかなサポートがあったこと、大工さんの協力を得られた、というような幾つかの条件が重なったからこそ、実現したととらえることも出来ると思います。ここで強調したいのは、この住まいの工夫の基本方針となっていたのは、改修工事を行なうとしても認知症の方の生活を出来る限り崩さないようにしたい、という点です。認知症の方のための住宅改修でありますし、何よりご本人の家なのだから、ご本人不在にせずに、ご本人が新しい環境になじんでいけるような工夫が随所になされていました。
冒頭でも触れたように認知症のある方は、環境の変化に対応できない場合があるために、住宅改修などが混乱を引き起こすとして、躊躇してしまうことがあります。しかしながら改修をすることにより得られるものもあります。環境の変化の与える影響は大きいものですが、対応における配慮などにより、混乱を最小限にすることも可能なのではないでしょうか。
改修工事をすることを決めたとき、工事期間中は慣れない状況で緊張したり不安になったりしないようにショートステイを利用することも検討していました。しかし、工事が終わって戻ってきたときに環境の変化を受け止められず、自分の家だと分からなくなってしまったらもっと困るので、暮らしながらの住宅改修を選んだということでした。
この暮らしながらの住宅改修を行うために様々な配慮をしていました。
例えば、改修工事中は作業の音なども気になるので、デイサービスを毎日利用し、デイサービスに行くことに気が進まないときは、近所の娘さん宅に行くことにしていました。また、1階のトイレが使えない時は、2階のトイレを使用することにしました。
また、ご本人が自分の家がどのように変わっていくのか分かるように、工事の様子を見てもらっていました。施工業者には、ご本人に「いまはこのような工事をしているところだ」ということを出来る限り説明してほしいとお願いしたということでした。同時に、大工さんにも認知症という病気への理解を深めてほしいという思いもあったそうです。
この事例の場合、ご本人が2階のトイレを使える状況にあったこと、家族や介護支援専門員のきめ細やかなサポートがあったこと、大工さんの協力を得られた、というような幾つかの条件が重なったからこそ、実現したととらえることも出来ると思います。ここで強調したいのは、この住まいの工夫の基本方針となっていたのは、改修工事を行なうとしても認知症の方の生活を出来る限り崩さないようにしたい、という点です。認知症の方のための住宅改修でありますし、何よりご本人の家なのだから、ご本人不在にせずに、ご本人が新しい環境になじんでいけるような工夫が随所になされていました。
冒頭でも触れたように認知症のある方は、環境の変化に対応できない場合があるために、住宅改修などが混乱を引き起こすとして、躊躇してしまうことがあります。しかしながら改修をすることにより得られるものもあります。環境の変化の与える影響は大きいものですが、対応における配慮などにより、混乱を最小限にすることも可能なのではないでしょうか。