新カリキュラム・試験の解説
2007年12月、近年の介護・福祉ニーズの多様化・高度化をふまえ、人材の確保・資質の向上を図ることを目的に、「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され、あわせて、社会福祉士および介護福祉士の資格取得のための教育内容の見直しが行われました。2009年4月から、新しい養成カリキュラムに基づく教育がスタートしています。
また、精神保健福祉士については、その取り巻く環境の変化をふまえ、より実践力の高い精神保健福祉士を養成するため、社会福祉士と同様、2011年に教育カリキュラムが見直され、2012年4月に新しいカリキュラムに基づく教育がスタートしました。なお、社会福祉士との「共通科目」についてはすでに新しいカリキュラムがはじまっています。
社会福祉士国家試験については2010年1月の試験から、介護福祉士国家試験については2012年1月の試験から新しいカリキュラムに基づく試験が実施されています。
また、精神保健福祉士については2013年1月の試験から新しいカリキュラムに基づく試験が実施される予定です(社会福祉士との共通科目については2010年1月試験から実施済)。
また、精神保健福祉士については、その取り巻く環境の変化をふまえ、より実践力の高い精神保健福祉士を養成するため、社会福祉士と同様、2011年に教育カリキュラムが見直され、2012年4月に新しいカリキュラムに基づく教育がスタートしました。なお、社会福祉士との「共通科目」についてはすでに新しいカリキュラムがはじまっています。
社会福祉士国家試験については2010年1月の試験から、介護福祉士国家試験については2012年1月の試験から新しいカリキュラムに基づく試験が実施されています。
また、精神保健福祉士については2013年1月の試験から新しいカリキュラムに基づく試験が実施される予定です(社会福祉士との共通科目については2010年1月試験から実施済)。
社会福祉士
1.新カリキュラムの枠組み
社会福祉士制度の施行から現在に至るまでの間に、社会福祉士を取り巻く状況は大きく変化してきました。養成カリキュラムを見直すにあたり、今後の社会福祉士に求められる知識や技術として、次に挙げるような点がまとめられました。
(1) | 福祉課題を抱えた者からの相談への対応やこれを受けて総合的かつ包括的にサービスを提供することの必要性、その在り方等にかかる専門的知識 |
(2) | 虐待防止、就労支援、権利擁護、孤立防止、生きがい創出、健康維持等にかかわる関連サービスに関する基礎的知識 |
(3) | 福祉課題を抱えた者からの相談に応じ、利用者の自立支援の観点から地域において適切なサービスの選択を支援する技術 |
(4) | サービス提供者間のネットワークの形成を図る技術 |
(5) | 地域の福祉ニーズを把握し、不足するサービスの創出を働きかける技術 |
(6) | 専門職としての高い自覚と倫理の確立や利用者本位の立場に立った活動の実践 |
上記をふまえ、実践力の高い社会福祉士を養成する観点から、新しいカリキュラムは、次の「5つの科目群」によって構成されています。
(1) | 人・社会・生活と福祉の理解に関する知識と方法 |
(2) |
総合的かつ包括的な相談援助の理念と方法に関する知識と技術 |
(3) | 地域福祉の基盤整備と開発に関する知識と技術 |
(4) | サービスに関する知識 |
(5) | 実習・演習 |
2.具体的な教育内容と時間数(一般養成施設)
【人・社会・生活と福祉の理解に関する知識と方法】計180時間
時間数 |
精神 共通科目 |
|
(1)人体の構造と機能及び疾病 | 30 | ★ |
(2)心理学理論と心理的支援 | 30 | ★ |
(3)社会理論と社会システム | 30 | ★ |
(4)現代社会と福祉 | 60 | ★ |
(5)社会調査の基礎 | 30 |
【総合的かつ包括的な相談援助の理念と方法に関する知識と技術】計180時間
(1)相談援助の基盤と専門職 | 60 | |
(2)相談援助の理論と方法 | 120 |
【地域福祉の基盤整備と開発に関する知識と技術】計120時間
(1)地域福祉の理論と方法 | 60 | ★ |
(2)福祉行財政と福祉計画 | 30 | ★ |
(3)福祉サービスの組織と経営 | 30 |
【サービスに関する知識】計300時間
※2012年4月から共通科目として追加
(1)社会保障 | 60 | ★ |
(2)高齢者に対する支援と介護保険 制度 |
60 | |
(3)障害者に対する支援と障害者 自立支援制度 |
30 | ★※ |
(4)児童や家庭に対する支援と児童・ 家庭福祉制度 |
30 | |
(5)低所得者に対する支援と生活 保護制度 |
30 | ★ |
(6)保健医療サービス | 30 | ★ |
(7)就労支援サービス | 15 | |
(8)権利擁護と成年後見制度 | 30 | ★ |
(9)更生保護制度 | 15 |
【実習・演習】計420時間
(1)相談援助演習 | 150 | |
(2)相談援助実習指導 | 90 | |
(3)相談援助実習 | 180 |
3.資格取得方法
4.試験の概要
社会福祉士国家試験については、第22回(2010年1月)より新カリキュラムに応じた試験が実施されています。2009年6月に公益財団法人社会福祉振興・試験センターから公表された試験概要によると、1問1点の150点満点で、問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者で、18科目群すべてにおいて得点があった者を合格とすることが示されています。また、同センターのホームページには、新しい「出題基準」が公表されていますのでご確認ください。
精神保健福祉士
1.精神保健福祉士に求められる役割
平成22年3月に示された「精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて」では、精神保健福祉士を取り巻く環境は、資格化以降、「入院医療中心から地域生活中心へ」という施策の転換や障害者自立支援法の施行など、大きく変化しているとして、今後の精神保健福祉士に求められる役割を次の4つに整理しています。
(1) | 医療機関等におけるチームの一員として、治療中の精神障害者に対する相談援助を行う役割 |
(2) | 長期在院患者を中心とした精神障害者の地域移行を支援する役割 |
(3) | 精神障害者が地域で安心して暮らせるよう相談に応じ、必要なサービスの利用を支援するなど、地域生活の維持・継続を支援し、生活の質を高める役割 |
(4) | 関連分野における精神保健福祉の多様化する課題に対し、相談援助を行う役割 |
2.今後の精神保健福祉士に必要とされる知識及び技術
また、これらの役割を適切に果たすことができるような知識及び技術として、次の7つを教育していく必要があるとしています。
(1) | 医療機関等における専門治療の特徴を踏まえ、関係職種と連携・協働する専門的知識及び技術 |
(2) | 地域移行の重要性、地域移行を促進するための家族調整や住居確保など、地域移行に係わる専門的知識及び技術 |
(3) | 包括的な相談援助を行うための、地域における医療・福祉サービスの利用調整 |
(4) | 就職に向けた相談・求職活動等に関する専門的知識及び技術 |
(5) | ケアマネジメント、コンサルテーション、チームアプローチ、ネットワーキング等の関連援助技術 |
(6) | 行政、労働、司法、教育分野での精神保健に関する相談援助活動 |
(7) | 各々の疾患及びライフサイクルに伴う生活上の課題 |
3.教育カリキュラムの構成
そのうえで、教育カリキュラムの構成は、共通科目(社会福祉士)の枠組みに準拠しつつ、精神保健福祉士に特化する知識と技術の科目群が加えられ、具体的な科目が設定されました。
〔教育カリキュラムの構成〕
〔教育カリキュラムの構成〕
(1) | 人・社会・生活と福祉の理解に関する知識と方法 |
(2) | 総合的かつ包括的な相談援助の理念と方法に関する知識と技術 |
(3) | 医療と協働・連携する相談援助の理念と方法に関する知識と技術 |
(4) | 地域福祉の基盤整備と開発に関する知識と技術 |
(5) | サービスに関する知識 |
(6) | 実習・演習 |
〔専門科目〕
精神疾患とその治療
精神保健の課題と支援
精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)
精神保健福祉相談援助の基盤(専門)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
精神保健福祉に関する制度とサービス
精神障害者の生活支援システム
精神疾患とその治療
精神保健の課題と支援
精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)
精神保健福祉相談援助の基盤(専門)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
精神保健福祉に関する制度とサービス
精神障害者の生活支援システム
新たな教育カリキュラムの全体像
※1・・・新たに共通科目に拡大する科目※2、3・・・読み替え可能科目
一般養成施設 | 短期養成施設 | 大学等 | |||
時間 | 時間 | 指定科目 | 基礎科目 | ||
共通科目(420h) | |||||
人体の構造と機能及び疾病 | 30 | ― | ○ | ○ | 大学等においては三科目のうち一科目 |
心理学理論と心理的支援 | 30 | ― | ○ | ○ | |
社会理論と社会システム | 30 | ― | ○ | ○ | |
現代社会と福祉 | 60 | ― | ○ | ○ | |
地域福祉の理論と方法 | 60 | ― | ○ | ○ | |
福祉行財政と福祉計画 | 30 | ― | ○ | ○ | |
社会保障 | 60 | ― | ○ | ○ | |
低所得者に対する支援と生活保護制度 | 30 | ― | ○ | ○ | |
保健医療サービス | 30 | ― | ○ | ○ | |
権利擁護と成年後見制度 | 30 | ― | ○ | ○ | |
障害者に対する支援と障害者自立支援制度 ※1 | 30 | ― | ○ | ○ | |
専門科目(390h) | |||||
精神疾患とその治療 | 60 | 60 | ○ | ― | |
精神保健の課題と支援 | 60 | 60 | ○ | ― | |
精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)※2 | 30 | ― | ○ | ○ | |
精神保健福祉相談援助の基盤(専門) | 30 | 30 | ○ | ― | |
精神保健福祉の理論と相談援助の展開 | 120 | 120 | ○ | ― | |
精神保健福祉に関する制度とサービス | 60 | 60 | ○ | ― | |
精神障害者の生活支援システム | 30 | 30 | ○ | ― | |
演習・実習(390h) | |||||
精神保健福祉援助演習(基礎)※3 | 30 | ― | ○ | ○ | |
精神保健福祉援助演習(専門) | 60 | 60 | ○ | ― | |
精神保健福祉援助実習指導 | 90 | 90 | ○ | ― | |
精神保健福祉援助実習 | 210 | 210 | ○ | ― | |
合計 | 1200 | 720 | 22科目 | 13科目 |
なお、社会福祉士との「共通科目」については、2009年4月から、新しい養成カリキュラム(社会福祉士及び介護福祉士法の見直しによる新しい養成カリキュラム)がスタートしています。精神保健福祉士国家試験についても共通科目は、2010年1月の試験から新カリキュラムに応じた試験が実施されています。
4.試験の概要
2011年11月に、「精神保健福祉士国家試験のあり方に関する検討会」が明らかした「精神保健福祉士国家試験の今後のあり方について」では、出題数について、専門科目の総出題数は現行どおりとするべきであるとしています。また、共通科目については、専門科目との再編により1科目加わるため、共通科目の当該科目分の出題数が増えることを考慮した総出題数とすることが必要であると指摘しています。
国家試験の詳細については、今後、公益財団法人社会福祉振興・試験センターから公表される予定です。
国家試験の詳細については、今後、公益財団法人社会福祉振興・試験センターから公表される予定です。
介護福祉士
1.新カリキュラムの枠組み
介護が実践の技術であるという性格をふまえ、その基盤となる教養や倫理的態度を養うための【人間と社会】、「尊厳の保持」「自立支援」の考え方をふまえ、生活を支えるための【介護】、多職種協働や適切な介護の提供に必要な根拠としての【こころとからだのしくみ】の「3つの領域」に再構成されることとなりました。
2.具体的な教育内容と時間数(2年制の養成施設の場合)
【人間と社会】計:240時間以上
時間数 | |
(1)人間の尊厳と自立 | 30以上 |
(2)人間関係とコミュニケーション | 30以上 |
(3)社会の理解 | 60以上 |
(4)その他選択科目 | ― |
【介護】計:1260時間
(1)介護の基本 | 180 |
(2)コミュニケーション技術 | 60 |
(3)生活支援技術 | 300 |
(4)介護過程 | 150 |
(5)介護総合演習 | 120 |
(6)介護実習 | 450 |
【こころとからだのしくみ】計:300時間
(1)発達と老化の理解 | 60 |
(2)認知症の理解 | 60 |
(3)障害の理解 | 60 |
(4)こころとからだのしくみ | 120 |
3.資格取得方法
4.試験の概要
介護福祉士国家試験については、第24回(2012年1月)より新カリキュラム応じた試験が実施されます。2009年6月に(財)社会福祉振興・試験センターから公表された試験概要によると、試験科目は11科目とすることが示されました。同センターのホームページには、新しい「出題基準」公表されていますのでご確認ください。