介護技術の実践 腕を組んでの長座からの立ち上がり(3)応用編
前回は長座からの立ち上がり介助を、被介助者に腕を組んでもらい腋の下から介助者が腕を差し入れる方法で行いました。普通ならば手で被介助者の腕を握るところを、手をかぶせるだけにして、手がすっぽ抜けない方向性である斜め後ろに倒れることで、力まかせにならない立ち上がり介助を実現させました。
今回はこの長座からの立ち上がりを他の技術に応用してみましょう。
まず、腕を組んで後ろに引くというこの動き、どこかで見たことがないでしょうか?
そう、車椅子などに移乗した時に、前にズレてしまった時に後方に引く動きそのものです。
ただ、どうしても腕の力に頼りがちになってしまいがちです(写真1)。
(写真1)
そこで、技術の「形」はそのままで、動きの質を「筋力」から「倒れる力」に変化させていきましょう。長座からの立ち上がりの技術がほぼそのまま活用できます。
(1)腕は握らず、手をかけるだけにして、姿勢は背中を丸めるようにする(写真2)。
(2)背中を丸めたまま、後方に一歩下がると、被介助者も背もたれまで下がる(写真3)。
(1)の「腕を握らない」のは、筋力に頼らないための工夫です。また、普通ならば背筋は伸ばすところを、あえて背中を丸めていきます。この2つのポイントが次の動作に活かされてきます。
普通ならば上に引き上げようとする時に手がすっぽ抜けてしまうのを、(2)のように後方に一歩下がることで、斜め後ろの動きが起こり、手は握らなくとも、腕にうまくかかるようになります。この時、背筋が伸びたままの姿勢ですと腕力になりやすいため、背中を丸めた姿勢を最後まで保つことにより、倒れる動きを出しやすくします。
見た目は大きく違わないものの、腕の力から、身体が後方に倒れる力に切り替わったことにより、介助者、被介助者双方の負担が軽減されてきます。
この技術以外にも、形が似ているものを探してしくと、ベッドから車椅子へ二人介助での移乗や浴槽から出す動作などがあります。皆さんだったらどのように今回の技術をどのように活用するでしょうか。1つの技術からどんな応用が出来るか、形ではなく、動きの質を変えることに視点を置き考えていくと、その幅はかなり広がりをみせていくはずです。
「技術は教わるよりも被介助者に合わせて創り出す」
そんな発想のヒントこそが、今回のメインテーマでした。
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