介護技術の実践 腕を組んでの長座からの立ち上がり(2)
前回は、被介助者に腕を組んでもらい腋の下から介助者が腕を差し入れ、普通ならば手で握るところを、手をかぶせるだけにするということまで行いました。
ただ、この組み方ですと、普通に立ち上がらせようと真っ直ぐの方向に引き上げようとすると、写真1のように手がすっぽ抜けてしまいます。これでは、立ち上がらせることは無理だと、諦めてしまうような状況です。
(写真1)
しかし、手をかぶせているだけでも、手がしっかりとかかり、すっぽ抜けないで立ち上がらせる方向性が実はあります。
まず、手がすっぽ抜けない方向を考えてみましょう。それは介助者が後ろに倒れるか、斜め後ろに倒れるかの二つに絞られます。ただ、後ろに倒れるだけですと、手はしっかりとかかるものの、後ろに被介助者を引きずる動きが出るだけで、上へ立ち上がらせる方向性はいつまでたっても出ません。
そこで、斜め後ろに倒れる方向性を出そうとします。手の平は臍をとらえることにより、重心に近い位置をダイレクトに押す効果が出て、しかも斜め後ろに倒れる力と重なることにより、被介助者をスムーズに立ち上がらせる動きが引き出せるようになります(写真2、3)。
(写真2)
(写真3)
ただ、臍だけを押しても今ひとつ力まかせになりがちですし、斜め後ろに倒れるだけでも、被介助者の臀部が残り、すっきりとした立ち上がりにつながりません。
そこで、臍を押す動きと斜め後ろに倒れる動きを同時に行うようにします。このタイミングが合うと、ほとんど力感がなく、ふわりと立ち上がりまで介助できるようになります。
ここでポイントとなるのが、はじめから臍を押すのではなく、斜め後ろの倒れることにより、結果として手が臍を押してしまったというのが正確なところなのです。
今回の技術をまとめると、つい筋力を使おうとして、握るところを、あえて握らず手をかぶせることにより、筋力に頼らない、倒れる力を必然的に引き出せたことが重要な要素となります。
その要素を考えると、長座からの立ち上がり介助だけに活用するだけでなく、他の技術にも応用が可能です。次回はこの動きがどのように応用されるのかを紹介しましょう。
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