刑事施設に向けられる第三者の目
覚えていらっしゃる方もたくさんいると思いますが、2002年、名古屋刑務所で、刑務官からの暴行によって受刑者が死傷した事件が明るみにでました。
その後、この事件を契機として、法務省に行刑改革会議が設置され、明治時代に作られた「監獄法」が改正されました。
※「監獄法」は、2005年に「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」(「受刑者処遇法」)として成立し、2006年に引き続き改正され、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(「刑事被収容者処遇法」)となりました。
法律改正によって、第三者による視察機関や不服申立制度が整備されました。成人の刑事施設については、刑務所や拘置所それぞれに視察委員会が設置され、警察留置場については、警察本部に視察委員会が設置されたのです。
5月29日のブログで不服申立制度については紹介したので、今回は主に刑事施設の視察委員会について紹介します。
視察委員会は、施設の規模によって4人から10人の委員(第三者)で構成されていて、その地域の弁護士会推薦の弁護士1人と医師会推薦の医師が1人必ず含まれています。そのほか、地域の大学の教員や研究者、地元の町内会の代表、自治体関係者などが委員となって刑事施設の運営の改善のために施設に意見を述べるものとされています。
受刑者から視察委員会へのコンタクト方法には、定型の用紙に提案内容を記入して各施設に設置されている「投書箱」に投書する、便せんに提案内容を書いて「○○刑務所視察委員会」宛に郵送する、などがあります。また、郵送の場合、外部にいる家族なども投書することができます。
視察委員会宛の投書や手紙については、刑務所の職員が内容を検査してはいけないことになっています。投書内容についての制限はありませんが、視察委員会は個人の不服申し立てを審査する機関ではないので、個別の事案の救済を求めることはできません。しかし、個別の申立であっても、施設の決まりや受刑者全員にかかわることになるのであれば、委員会に投書する意味は十分にあります。
手紙を読んだ委員が受刑者と面接をして、詳しく事情を聞き取り、施設に改善を申し入れ、改善されたケースもあります。
それまでカレーライスの日もお箸で苦労して食べていたのがスプーンが出されるようになった施設や、職員が名札をつけるようになった施設もあると聞いています。
視察委員会からの意見や勧告には法的拘束力はないので、すべての事案が解決するというわけではありませんが、それでも、第三者からなる委員が刑務所に定期的にやってくというのは、施設運営の透明性を確保する上でとても重要なことだと思います。
視察委員会について詳しく知りたい方は、日本弁護士連合会作成のパンフレット「受刑者の皆さんへ 2006年(平成18年)10月 (改訂第3版)」をご参照ください。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/legal_aid/on-duty_lawyer/jukeisha.html
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