刑務所の中で不当な扱いを受けたときには
監獄人権センターでは、毎月2~3回、トレーニングを受けたボランティア(プリズンライフ・アドバイザー)が集まって、受刑者からの相談の回答を考えています。
これを「相談検討会」と呼んでいます。
先日の相談検討会で、ある受刑者から、不服申立制度についての相談がありました。
それは「施設当局が申立ての回答を見ることができるのであれば、秘密申立ての意味がないのではないか」という相談でした。
不服申立制度では、自分が収容されている施設当局にその内容を知られることなく矯正管区長や法務大臣に申立てができることになっているのですが、実際は、矯正管区から事実調査のために収容施設に問い合わせがあったり、申立てに対する回答も施設を通して行われたりと、施設当局に申立ての内容を知られてしまうのです。
このような状況なので、時には、刑務官から「不服申立てしたらひどい目に会わせるぞ」などと言われることもあるようです(法律は、不服申立てをしたことによる不利益扱いを禁止しています)。
このような、不服申立てに関する相談はたびたびあります。
「不服申立て」は、聞き慣れない言葉かもしれませんが、行政庁の処分に不服がある時に行う申立てのことです。
今回は、受刑者が利用できる不服申立制度について、簡単にお話しします。
2005年に「監獄法」が100年ぶりに改正されて、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(刑事被収容者処遇法)が制定されました。
制定当初の名称は、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」(受刑者処遇法)です。
この法律は、2006年に施行されましたが、これにより、被収容者が利用できる不服申立制度や、第三者による査察制度が整備されたのです。
不服申立制度として、(1)「審査の申請」、(2)「事実の申告」、(3)「苦情の申出」という3種類が設けられました。
【NPO法人監獄人権センター作成「不服申立マニュアル」P7】
(1)「審査の申請」は、手紙の発信不許可や、書籍の交付不許可、隔離の処分、懲罰など、15種類の、所長が行う行政処分について不服があるときに申立てをすることができるものです。
※隔離の処分には、例えば、24時間一人部屋で作業も食事もさせるという処遇があります
※懲罰とは、刑務所内の規律に違反したときに科せられるペナルティで、数日間、3畳の部屋でひたすら正座もしくは安座をさせるという厳しいものもあります
(2)「事実の申告」は、不当な保護室収容や、刑務官からの暴行などの事実行為についての不服申立て制度です。
※保護室は、暴れたり、大声を出したりしたときに収容される部屋です。「保護室への収容」については、刑事被収容者処遇法の79条に定められています
(3)「苦情の申出」は、対象事に制限はありませんが、(1)「審査の申請」や(2)「事実の申告」と違い、回答期限が定められていないなど、不服申立制度の中では効力の弱い制度です。
(1)「審査の申請」、(2)「事実の申告」は、受刑者からの申立てが棄却された場合には、法務大臣宛てに再度申立てをすることができます。
そして、法務大臣宛ての申立ての棄却には、弁護士や、学者、保護司など、民間の人たちで構成される不服審査調査検討会での審査が必要となっています。
このように、2006年施行の刑事被収容者処遇法で、不服申立てに第三者の目がはいるようになったのです。
しかし、この不服申立制度は、まだまだ改善する必要があります。
例えば、監獄人権センターへの相談で多いのは、適切な医療が受けられないことや、面会の不許可などです。監獄人権センターに相談がくるということは、それだけ受刑者にとって困る問題だということです。
それにもかかわらず、これらは(1)「審査の申請」や(2)「事実の申告」の対象にならないので、(3)「苦情の申出」を利用するしかありません。
受刑者が最も困っているこれらの問題について、不服申立てをしても、第三者のチェックを受けることもなく、十分な回答も期待できないという現状があるのです。
刑事被収容者処遇法は、5年以内に見直しすることになっています。見直しの機会には、このような不十分な点が改まり、より良い制度となるように私たちも働きかけていきたいと思います。
コメント
前夫が大阪刑務所にはいっています。9月末から。
先日、薬を無理やり飲まされていると手紙がきました。どうしたらよいでしょうか?
あと両手、両足が麻痺してきているようなんですがその治療も全然してもらえないらしいです。
助けてあげたいのですが警察に電話してもどうしようもないといわれるだけで・・・
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