生活保護の受給の要件は? 持ち家や車の扱いから医療費までわかりやすく解説!
扶助の種類や医療費の取り扱いをまるっと解説!
ケアマネジャーをはじめとする相談援助職にとって、欠かすことができない社会保障制度の知識。しかし、苦手意識を持つ人も多いはず……。
本記事では、数ある制度のなかから生活保護に焦点を当て、そのしくみや利用条件、手続きの流れなど、生活保護を申請・利用するうえで欠かせない知識を整理します。
1.生活保護とは?
——受給の要件と、扶助の種類
生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活が維持できない状況である場合に、生活費の支給をはじめ必要な扶助を行う制度です。その受給条件は、次の2つです。
「②最低限度の生活を営めない貧困状態」とは、福祉事務所による調査の結果、世帯の全収入が、国の定める生活保護基準を個別の世帯に当てはめて計算された「最低生活費」を下回ってる状態のことを指します。
生活保護では、生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8つの扶助が世帯の状況に応じて給付されます。医療扶助・介護扶助は原則として、病院や介護サービス事業者等に直接支払われ、それ以外は現金支給されます。住宅扶助については、家賃等を直接家主等に支払う方法(代理納付)がとられることもあります。
2.保護の申請
——持ち家や車は売却しなければならない?
保護の申請にあたっては、現在の収入の状況を記入した「収入申告書」と、資産の状況(不動産、現金、預金、有価証券等、生命保険、自動車、貴金属等)を記入した「資産申告書」を福祉事務所に提出する必要があります。あわせて、それを証明する書類も提出しなければなりません。
申請を受けた福祉事務所は、申告内容が事実かどうか、金融機関や官公署に照会して確認します。また、自宅を訪問して住まいの状況や暮らしぶりを確認します。これらを「資産調査」といいます。資産調査を通じて、処分可能な資産はないか(現金化して生活費に充てるべきものはないか)―の検討が行われます(資産の活用)。
ここで多くの人が疑問を持つのが持ち家や車といった資産はすべて処分しなければならないのかという点でしょう。
資産がある場合は、基本的には処分して生活費に充てることが求められますが、持ち続けていたほうが結果的に自立につながると福祉事務所が判断した場合は、そのまま保有が認められることがあります。
たとえば、持ち家に関しては、その住居が、①保護申請を検討している人自身が住む家である、②処分価値が利用価値より著しく高くはない―の双方を満たしていれば、所持し続けることが可能です。ただし、65 歳以上の独居・夫婦のみ世帯の場合は、要保護世帯向け不動産担保型生活資金貸付(リバースモーゲージ)を利用できないかどうかが検討されます。
また、車に関しては、居住地や勤務先において公共交通機関の利用が困難、あるいはほかに手段がない場合や、障害を有する場合などには、保有が認められることもあります。
3.扶養照会
——申請すると親族に連絡がいってしまう?
生活保護受給を申請すると、申請者の親、子ども、兄弟姉妹等の親族に対して、仕送りや同居による扶養が可能かどうかを尋ねる確認作業が行われます。これを「扶養照会」といいます。
具体的には、保護申請者から家族関係を聴き取り、音信不通等であれば戸籍を辿って住所を確認のうえ、「あなたの△△に当たる○○さんが現在保護を申請中です」と通知し、扶養は義務である旨を伝え、どの程度の金銭的援助をできるか期限付きで回答を求めるものです。回答を書き込む様式(「扶養届」という)には、収入、資産、家族構成、ローン残高等を書き込む欄があり、その内容を証明する給与明細や源泉徴収票の写しの添付を要求するものとなっています。
ただ、福祉事務所も親戚縁者のすべてに照会しているわけではありません。民法で規定する扶養義務の範囲は、実質的には配偶者、直系血族、兄弟姉妹までです。現状では、甥姪・伯叔父母にまで扶養照会されることは、ほぼ「ない」といっていいでしょう。
また、以下のような場合は、扶養が期待できない・扶養照会が適当ではないケースとして、照会を控える取扱いが検討されることとなっています。扶養を要請することが明らかに「本人の自立の阻害」となる場合は、制度本来の趣旨(自立の助長)に反することのないよう配慮されます。
①相手方が以下に該当する場合
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②特別な事情があり、明らかに扶養できない場合
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③扶養を求めることで、明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる場合
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4.生活保護と医療費
生活保護の受給者は、国民健康保険の適用を外れ、「医療扶助」で医療を受けることになっています。医療扶助には原則として自己負担が求められませんが、世帯で一定以上の収入があった場合、自己負担が発生することもあります。
生活保護の受給者が医療機関を受診する際には、医療券が必要です。医療券は、福祉事務所が「医療の必要性を確認」した後に発行するもので、その確認の方法として、生活保護法の指定医療機関で「この方には医療が必要です」という所見を記した「医療要否意見書」を書いてもらう必要があります。申請から受診までの流れは以下のようになっています。
医療券は、月が替わったら効力を失います。受診を継続する場合は、福祉事務所に再申請して、月ごとに新たに交付してもらう必要があります。医療要否意見書も、有効期間が最大6か月間(福祉事務所によっては3か月間)となっています。こちらも、期限が切れる前に、主治医に「医療が必要」であることを再び記載してもらう必要があります。
なお、緊急を要する場合には、医療券を持たない被保護者でも受診が認められています。その場合は、受診後に届け出る等の手続きが必要です。
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このページの内容は、福島敏之著『現場で役立つ!社会保障制度活用ガイド 2023年版』の内容をWeb掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
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