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保育園・幼稚園での子どものトイレの援助 もっと楽にしませんか?

保育園・幼稚園での
子どものトイレの援助
もっと楽にしませんか?

保育園や幼稚園でよくあるトイレの光景

 保育園・幼稚園のトイレといえば、 建物のすみに設置された閉鎖的な空間であることが多く、保育室から離れた場所に設置されていることも少なくありません。みんなと楽しく過ごす保育室からは遠く、ましてや暗くてくさくて寒い…となれば、行くのをがまんしてしまうこともあるかもしれません。
 低年齢の子どもの場合は、トイレが遠ければ保育者が付き添う必要もあります。トイレまで子どもたちをぞろぞろと連れて行って、一人ずつ順番に用を足している間、ほとんどの子どもはただ待つだけ。待たされている間に、水道で遊んだり、ふざけたりして、そのうちに押し合いになって、ケンカが始まって…という光景が、あなたの園では見られませんか?
 一人ひとりのタイミングで、その都度保育者がトイレに連れて行くことは時間的にも労力的にも難しいため、子どもの排せつが自立していても、園にいる間は紙おむつをさせ、決まった時間にしか子どもたちをトイレに連れて行かないという園もあるのだそうです。不適切と言わざるを得ませんが、それもトイレ援助の負担が大きいことが原因だと考えられます。
 また、トイレと同じ空間に汚物流しのシンクがあったり、掃除道具・洗剤を置いていたりすることも多く、危険とも隣り合わせです。旧来のトイレは床に水を流して清掃するタイプが多いため、床がいつも濡れていて、必ずスリッパやサンダルを履かなくてはいけないという園もあります。滑りやすい床で、サンダルを履いて、狭い空間に子どもたちがひしめき合っているなか、危ないことや汚いことに注意しながら援助をする…子どもにとっても快適ではなく、保育者にとっても気苦労が絶えないトイレタイムになっていることが多いのです。

乳幼児にとって必要なトイレの条件

 それでは、どのような環境や工夫があれば、トイレの援助が快適になり、子どもも保育者も安心できるトイレタイムになるのでしょうか。以下に、4つの条件を挙げてみます。

①近い(部屋の中にある、隣接している)

 2~3歳児は、排せつの自立がまだ途上で、保育者の援助や声掛け、見守りがまだまだ必要な時期です。一人ひとりの体調や排せつリズムに応じて、行きたいときにすぐ行けることも重要ですし、保育者の目や手がすぐ届くところにあることが重要です。
 4~5歳児は、おおむね排せつは自立していますが、
 生後間もない赤ちゃんは、1日に 10~20 回も少量のおしっこをします。0 歳児クラス(0~1歳児が在籍)はおむつ交換の回数も多いため、保育者の負担も大きくなりがちです。0 歳児クラスにトイレがない園がとても多いのですが、年度の終わりごろには「もうすぐ2歳になる」という子もいますので、おまるやトイレでできる子も増えてきます。そのため、保育室とおむつ交換スペースとトイレを近くに設置することで、保育者の移動距離を減らし、スムーズな排せつ介助を行うことができます。建物の構造上、すぐにそのようにできない場合は、保育室の中におまるを設置することで、保育者は、おむつ替えとトイレの子どもの見守り、遊びの子の見守りを同時に行うことができます。

②安心(保育者の視線を感じる、子どもから部屋の様子がわかる)

 「近い」こととも関係がありますが、排せつが自立しきっていない子どもは「自分でやりたい!」という思いも強いのですが、不安や迷いもあります。保育者に向けて「見てて!」「見てた?」「できたよ!」と見守りと承認を求める姿があります。もし、トイレが保育室の間に壁があると、保育者はトイレにつきっきりにならざるを得ず、保育室のほうの人手も減ってしまいます。保育者から子どもが見える、子どもから保育者が見える、という位置関係があると、お互いにスムーズにコミュニケーションが取れて、安心してトイレタイムを過ごすことができます。

③安全(手や指を挟まない、つまづいて転ばない、危険なものに触れない)

 これは言わずもがなですが、先にも述べたように、トイレに汚物流しや使用済みおむつ入れがあったり、掃除道具・洗剤があったり、危険なドアや段差、濡れた床などがあると、いちいちそれを子どもたちに注意しなくてはなりません。「〇〇しちゃだめ!」「気を付けて!」と、禁止語や指示語が増えてしまいます。もし、実際に事故が起きたり、濡れた床に子どもが座ってしまったら、大変ですし、やることも増えてしまいます。保育者が、本来の「トイレの援助」以外のことに気を張らなければならない環境は、すぐに変えるべきでしょう。

④清潔(においがない、常に清掃が行き届いている)

 「トイレはくさいところ、汚いところ」と思い込んでいないでしょうか? 実は「トイレのにおい」と思っているものは、強い洗剤や芳香剤のにおいが混ざっていたりすることがあります。そして、トイレが狭い閉鎖的な空間だと、掃除がしにくくなり、細かいところの掃除が行き届かなかったり、こまめに掃除をせずに後からまとめて掃除することになり、それまで排せつ物のにおいがしみついてしまったりすることもあります。古い便器や排水溝のために、においの封じ込めはうまくできていないという構造上の問題がある場合もあります。

3.オープンなトイレにすると子どもだけでトイレに行ける

 これら4つの条件を叶えられるようなトイレ環境にすると、子どもが「自らトイレに行きたい!」と思えるトイレになります。保育室中、あるいは、保育室のすぐそばにトイレがあると、子どもにとってアクセスしやすく、保育者にとって見守りがしやすいトイレになります。そうすることで、子どもたちは遊びを長く中断することなく、自ら排せつのタイミングを判断し、トイレに行くことができます。 また、保育者は子どもの様子を把握しやすく、適切なタイミングで排せつの援助を行うことができます。
 実際にオープンなトイレにした園では、低年齢ではトイレ間の仕切りも設けないため、お友達の様子も見えるために、トイレを使うことに憧れて、友達を真似することでトイレに親しみをもつようになります。子どもが、それぞれの発達段階、その時の気持ちに応じて、トイレにアプローチしていき、トイレの使い方を学んでいくことにもつながります。
 そのため、オープンなトイレは、子どもの発達を促し、保育の質向上に繋がる有効な手段だともいえます。ぜひこれらのポイントを参考に、子どもたちにとって最適なトイレ環境を実現してください。すぐに施設を改修できない場合でも、先に述べたような、トイレの危険を減らすだけでも、職員の負担を減らすことができます。
 さらに具体的な環境の工夫、環境改修の事例を知りたい方はこちらもご覧ください。

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