認知症ケアに関する疑問
担当編集者が伝える!「認知症ケア」
介護職が現場での「つまずきどころ」について、改善点とその根拠を学びながら、確実に身につけたい知識と技術を磨くことができる新シリーズ、「ステップアップ介護」。
その書籍を担当した編集者が、編集をしていく中で感じたことを語る新コーナー。今回は「認知症ケア」がテーマ。介護職が行う認知症ケアとは? 「認知症だから」と思い込んでいないか? などを語ります。
今回執筆した人
*『認知症ケア』担当者 M
*入社6年 女性
*主に介護分野の編集を担当。
*walkingしながら景色を見るのが好き。
認知症ケアの肝!『生活を意識してかかわる』
「認知症ケア」というと、身構える介護職の方もいるのではないでしょうか。
その気持ちに変化をもたらしてくれるのが、この「認知症ケア」の本です。
著者の山出貴宏さんは、認知症のある、なしにかかわらず「生活の営み」を継続することの大切さについて本書を通して伝えています。
認知症ケアというと「否定しない」「叱らない」「言い聞かせない」などが思い浮かびますが、それなのに「生活の営み」? と思われた人。
私も「生活の営み」と「認知症ケア」の結びつきが、はじめはわかりませんでした。
しかし、これはとてもシンプルなことでした。なぜなら、介助が必要になったから、認知症になったからといって、その日から急に生活がすべて変わるわけではないからです。だから急に「否定しない」とか「叱らない」とか、身構える必要はないのです。
それよりも、これまでの生活(利用者さんの日々の暮らし、趣味など)も大切にして、利用者さんができる部分にかかわっていく、何も特別なことではなく、利用者さんの生活が豊かになるようなかかわり(生活の営みへのかかわり)が大切なのです。認知症のある人にその場、その場で対応して、それで終わりではないということです。
たとえば、下記の例は季節などが判断しにくくなっている利用者さんに季節の変化を感じてもらう1つの方法です。
その季節だけかかわるという単発な支援をするのではなく、春から冬にわたり1年を通して活動していくものを考えたりすることが、「記憶・認識」や「見当識」へのアプローチにつながっていきます。
これが、「生活の営み」を継続させるためのかかわりです。
「生活の継続」の例
Part1(2)「どうすれば季節の変化を感じてもらえるの?」p.009より
帰宅願望、暴言や暴力…「認知症だから」からくる思い込み
認知症があるからではなく、さまざまな症状がでてしまう原因には、介護職のかかわり(介護技術)が関係していることが多いです。そこを伝えているのが、この本の良さであると思います。
著者の山出さんも、研修などでさまざまな現場を見てきて、実はそこに気づくことが難しいと思っているからこそ、場面ごとに例を挙げてかかわり方を伝えています。
たとえば、26頁で紹介されている場面。
介護職が言ったことに対して、利用者が「離して! 何するの!」と否定しているとも捉えられる返事をしただけで、「暴言・暴力がある人」と決めつけています。
ここでは、「症状があるかどうかでしか、利用者のことを見ていない」ということについて触れています。
Part1(7)「暴言や暴力のない人、ある人で、利用者を決めつけてしまう……」p.026より
著者の山出さんが伝えたい、不快や不安を軽減するかかわり方の大切さ
このように、症状が起きている原因にしっかりと目を向けていないことによって、利用者さんの不安や不快がさらに増幅してしまいます。
実際に上記の26頁のようなことがあったら、「離して! 何するの!」と激怒している症状に、つい目が向いてしまうかもしれません。
そんなときこそ、生活のなかで、不安や不快になっている原因を考え、そこを軽減できるかかわり方をしていく。
本書を通して、決めつけや思い込みではなく、“原因を考えてかかわる”ことの大切さが伝わるとうれしいなと思います。
ケアの方法などに困っている介護職や、研修での活用として
この本では、新人の介護職に向けて、基本的であるけれども日々の介護場面で大切となることをわかりやすく伝えています。
認知症の知識は他のテキストにも説明がありますが、この本では、実践の場面について紹介しているので、研修などにも役に立つと思います。
なかには、介護をする家族の方にも読んでいただいたりもしています。
この機会に、ぜひ本書で学びなおしてみませんか。
もっと詳しく知りたい方はコチラ!
-
このページの内容は山出貴宏『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ認知症ケア』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
著者:山出貴宏
本のサイズ:A5判、186頁
定価:1,980円(税込)
ステップアップ介護 シリーズについて
「ステップアップ介護」は、経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたい知識と技術を、厳選して紹介する書籍シリーズです。『認知症ケア』『マナーと接遇』『疾患・症状への対応』など、知りたいテーマを7つ用意しました。全巻にわたって、新人介護職の「つぼみちゃん」と、先輩介護職の「はなこ先輩」が一緒にナビゲートしてくれます!
このシリーズは以下のような特徴があります。
-
- ●経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたいこと
- ●介護現場の「実践」に直結すること
- ●すぐに知りたいこと
これらがパッと見てわかる!
「良かれと思ってやってしまっている」そんな場面をたくさん取り上げ、それが「どうしてだめなのか」その根拠だけでなく、「どうすればよいのか」までをわかりやすくまとめました。
施設内の研修テキストや参考書としての使い勝手もよく、ユニットリーダーやフロアリーダーさんにもおすすめ。詳細は特設ページをご覧ください。