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認知症ケアに関する疑問

認知症高齢者の方の「異食」を予防するためのかかわり方

 認知症のある高齢者が食べ物ではないものを食べてしまう、いわゆる「異食」があるとき、みなさんはどうしますか。

 これから紹介するポイントを読めば、認知症の人の異食の原因に応じたかかわりができるようになります。

異食とは?

 異食とは、認知症のある高齢者が、食べ物ではないものを食べ物と認識して口に入れてしまうことです。行動・心理症状(BPSD)の1つで、特に認知症の中期以降にみられるといわれています。

 よくある対応として、「テーブルの上に食べ物以外の物を置かない」「食べ物が目につかないようにする」など、とにかく手に取らせないことを重視したかかわりをすることが挙げられています。


 これは異食を防ぐには一見よさそうに思えますが、認知症のある高齢者にとっては適切ではありません

目の前から「物をなくす」は逆効果かも

 目の前から物をなくすことは、認知症のある高齢者にとって「物がなくなっていく・・・」と、不安を感じる原因になることがあります。

 また、刺激が少ない状態で過ごすようになれば、自ら行動しなくなることもあり得ます。
 このような生活内での不安を増やしたり刺激を奪ってしまったりすることでかえって認知症の症状を進行させてしまう可能性があります。

 さらに、その方にとっては「食べ物」と認識して食べているのに、片づけたり、取り上げたりすることは、「無理やり奪われた」という印象をもたれ不快を与えることになり望ましくありません。

異食行為を予防するための3つのポイント!

 異食行為がみられたときにはどうすればよいでしょうか。大事なのは、介護をする側の私たちが「(認知症のある高齢者にとって)目の前にあるものが何に見えているのかを知る」ことです。
 そのために、次の3つを実践してみてください。

ポイント① 食べ物ではないことを認識できる情報を増やす

 目の前から物を無くす前に食べ物ではないことがわかるように、例えば紫やピンク、蛍光色など、食べ物に見えにくい色の物にかえたり、文字が理解できるのであれば、「これは食べ物ではありません」「〇〇ではありません」と表示したりするとよいです。
 視覚から得られる情報を増やして、自然と異食を防ぐ工夫をします。

ポイント② 「何と思って食べたのか」を考え、食べても大丈夫なものに置き換える

 異食がみられた時は、その認知症の高齢者が「何と思って食べたのか」を介護者が想像しましょう。そのうえで、食べても大丈夫なものに置き換えます。

 例えば「ビー玉」が、認知症の高齢者には「飴」に見えているのかなと思えば、本物の飴を用意して、「こちらのほうが甘いですよ」などの声かけをしてみます。

ビー玉

アメ玉


ポイント③ 集中して取り組めることを考える

 認知症の高齢者が何を口にすることが多いのかと同時に、どの時間帯に口にしてしまうことが多いのかを把握しておくようにします。
 そのうえで、その時間帯に趣味などの活動ができる空間をつくり、集中して取り組んでもらうことで、異食を自然に防ぐことができるようになります。

「認知症だから」と決めつけないようにしよう

 一度でも異食行為がみられると「認知症だから食べ物なのかどうかの判断が全くできなくなった」と決めつけてしまいがちです。

 でも本当にそうでしょうか?
 例えば、次のことを考えてみてください。

 「テーブルやいすを口にしていますか?」
 「花瓶を食べようとしていますか?」


 これらは、認知症のある高齢者でも食べ物ではないと認識でき、口にすることはないと思います。
 つまり、認知症のある高齢者では食べ物なのか、そうでないのか判断しにくいものが多いだけなのです。

 大切なことは、その人にとって目の前の物が何に見えてしまっているのか、何が判断ミスしやすいものなのか、 記憶と認識にどれくらいズレが生じているのかを知ることです。

 認知症により何でも口にしてしまうと決めつけるのではなく、どこがわかりにくくなっているのか段階を踏んだかかわりをもつようにしましょう。

 本文監修:山出貴宏

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このページの内容は山出貴宏『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ認知症ケア』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。

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