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認知症ケアに関する疑問

「否定しない」だけじゃない!認知症のある人の「言葉を引き出す」コミュニケーションの取り方

 認知症のある利用者で、自発的に会話ができづらかったら、みなさんはどうしますか。

 会話を生み出そう一方的に話しかけたり、質問だらけになっている可能性はありませんか?

 また、認知症のある人には「否定しない」ことが大切だと言われていますが、本当にそれだけで円滑なコミュニケーションが取れていますか?

 ここでは、そのような利用者が職員に話しかけやすい雰囲気を感じることができたり、みなさん自身が他の利用者さんとのコミュニケーションの取り方を見直すきっかけにもなるポイントをお伝えします。

「否定しない」だけでは根本解決になっていない

 

認知症のある人とのコミュニケーションというと、話していることを「否定しない」がすぐに浮かぶ人がいるかもしれません。 「否定しない」ことは、確かに大事なことですが、それだけでは不十分です。例えば、否定しないだけだと同じ会話がループして、逆に会話を終わらせる方法がわからないことがありませんか?

 「否定しない」対応は結局、利用者の気持ちに寄り添った対応ではなく、認知症のある利用者とのコミュニケーションをするための一手段でしかなく、問題の根本解決になっていません。

認知症のある利用者に一方的な会話をしていませんか?

 認知症のある利用者のなかには、自発的に会話ができにくい人もいます。
 会話を引き出そうと、色々話しかけてみる介護職もいるのではないでしょうか。

「今日の気分はいかがですか?」
「私は音楽が好きなんですが、何が好きですか?」
「天気がよいので後で外にでも行きましょうか?」

 一見、職員が積極的に会話を促しているようにも見えますが、本当にそうでしょうか?


積極的にたくさん話しかけていることは一見よさそうに思えますが、一度にたくさんの質問をしてしまうことで、聞かれた内容に対してどこから答えればよいのか、何を聞かれていたのかが混乱してしまいます。
このように会話を引き出そうとたくさん話すことは、会話というよりは、職員の一方的なおしゃべりになってしまいます。

 一度に色々と話されたらどんな気持ちになりますか。あまりいい気持ちにはなりませんよね。それは利用者も同じです。投げかけるだけの言葉は、不快感を与えることになります。

利用者の言葉を引き出すための3つのポイント!

 利用者の言葉を引き出すにはどうすればよいでしょうか。ポイントは、「職員が一方的にならない」ことです。
 そのために、次の3つを実践してみてください。

ポイント① 質問ごとに言葉を待つ
 利用者のことを知るために色々な情報を聞くことも大切です。ですが、その分、質問も多くなります。その場合は、一つの質問ごとに利用者の言葉を待つようにしましょう。焦らず待つことも大切なかかわりです。


ポイント② 理解できる、伝わる会話にする
 その時の利用者の状態によって記憶したり、認識したりできる数は違います。相手が理解できる、伝わる単語の数で会話を進めることと、伝わる言葉を選ぶことが大切です。例)トイレ→便所、厠など。

 例えば、「今日は〇月〇日〇曜日ですか?」も、1つの会話に4単語入っていて、詰め込んでいる印象を与えますが、「今日は何曜日ですか?」と聞くことで、答えられやすくなります

 利用者が不安や不快な表情になっていないか、会話の長さを調整したりして会話を進めてみましょう。

ポイント③ 行動や身振りからも様子をうかがう
 会話は言葉だけとは限りません。利用者の行動や身振りなどからも様子をうかがうことが重要です。職員側も、身振りや道具、話がしやすいようにシーンとした空間ではなく、音がある空間などをつくるようにしましょう。

会話を引き出すことに必死にならずに、利用者の表情を確認しながら進める

 認知症のある利用者で、会話を認識しづらい人にとっては、一方的な会話は、「責められている」「怒られている」と感じてしまう可能性もあります。
 また、「私は・・・・・・」と職員自身の話ばかりになってしまっても、会話を閉じ込めたり、利用者の思いに反してしまうことがあるので注意しましょう。
 大切なことは、利用者が不安や不快になっていないか確認して会話を進めることです。
 そのために、話がしやすい空間になっているかを意識することも重要です。

本文監修:山出貴宏

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このページの内容は山出貴宏『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ認知症ケア』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。

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定価:1800円(税別)


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