認知症ケアに関する疑問
「何度も同じことを言う」のは認知症なのでは?
そんな不安を感じている人へ、対応方法を紹介!
最近、家族が同じことを言うことが多くなったと感じたりしていませんか。そのつど対応してもまた聞いてくることに対してイライラしストレスになってしまい、「何回も同じことを聞かないで」と怒鳴ってしまったり、無視をしてしまったり…なんてケースがあるのではないでしょうか。
同じことを言うことが増えたりする要因にはどのようなことが考えられるのか、ここでは要因とともに対応方法について紹介します。
何度も同じことを言う要因として考えられること
「何度も同じことを言う」のは“加齢による影響”と“認知症の症状”が考えられます。
加齢に伴う聴覚機能の変化
加齢に伴う聴覚機能の変化により、相手との会話も聴き取りづらくなります。自分が言ったことが相手に伝わっているのかという不安感などから、言ったことを繰り返し伝えている可能性が考えられます。
加齢に伴う記憶する能力の低下
情報など新しいものを覚える能力などの機能は加齢とともに低下するといわれており、それに伴い、もの忘れなどが増えてしまい「まだ話していなかったかな」と同じことを話していることも要因として考えられます。
認知症の症状の疑い
加齢による要因のほかに、認知症の症状の1つである記憶障害により、数分前に話した内容などを記憶することが難しく「同じ話を繰り返し話している」ことも考えられます。
加齢に伴う記憶力の低下は誰にでも起こり得ることですが、下記のような症状が最近見られることが多いと感じた際は、早めに医療機関に行ってみることも大切です。
<症状check✓>
☑新しいことが覚えにくくなっている
☑もの忘れや物の名前を忘れることが多くなってきた
☑数分経つと出来事を忘れてしまっているようだ
☑少し難しいことができにくくなっているようだ
何度も同じことを言う本人の思い
どのような要因であっても、対応する際に「言ってもすぐ忘れるから」という姿勢でいると、本人の思いを理解することにはつながりません。言葉どおりにとらえずに、その言葉や行動の背景にはどんな理由があるのかを考えることが必要です。
本人の思いを知ったり、理解できたりすることで、どのようにかかわるとよいのか、今どんなことを考えているのか、どのような思いなのかなどを察しやすくなります。それは、対応に悩んでいる自分自身をまずは落ち着かせることにつながります。
ここからは、多くの方が悩まれている認知症がある人の「何度も同じことを言う」ことへの対応方法を紹介します。ポイントで挙げた内容は、実践に役立つ書籍である『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ認知症ケア』にも載っています。
何度も同じことを言うことへの対応の3つのポイント
ポイント1 何度も訴えていることの理由に目を向ける
不安などがあると「本当にこれでよいのか」と安心を求めて、確認したくなります。
「何度も同じことを言う」のは、その思いの現れかもしれません。
その場だけの対応にしないで、不安に感じていることがあるのか、訴えをとおして何か別のことを伝えたいのか、ふだんから生活の中での言葉や行動に目を向けていくことが大切です。
ポイント2 不安、不快に感じている部分を探る
「認知症だから」という思い込みでかかわらないことです。
例えば、介護施設の利用者から何度も同じように「トイレに連れていってください」と言われた場合、認知症だからわからないんだと思ってしまうと、次第に声に耳を傾けなくなることにもつながってしまいます。家族が介護している場合も、同じような状況になり得ることがあるかもしれません。
思い込みでかかわらずに、不安、不快に感じている部分を探してみることからはじめてみましょう。
この場合、言葉どおりに「排便」「排尿」ととらえずに、残尿感があったり、下着やパッドなどがうまく履けていないことや、ずれていて陰部に不快があるのではないかと考えることが大切です。
ポイント3 真摯に対応する(うそはつかない)
認知症により記憶しづらくなっているのであれば、「さっき行った」「もう終えていますよ」などと伝えて対応すればよいと思う家族や介護職もいるかもしれません。しかし、そうした対応の印象は認知症の人であっても残っており、うそをつかれたことへの不満を募らせてしまいます。
「なぜ何度も訴えているのか」と疑問にもち、その原因が解消するまで真摯にかかわることが大切です。
認知症であったとしても、構えて対応する必要はありません。本人が訴えている言葉の裏にある思いをしっかりとすくい上げて、対応していくことが重要です。
本文監修:山出貴宏
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このページの内容は山出貴宏『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ認知症ケア』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
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