マナーと接遇に関する疑問
『介護職として「相手の立場に立った配慮ができるようになってほしい』
よくある場面から学ぶマナーと接遇 著者インタビュー
入職間もない介護職を支える実務書『ステップアップ介護』シリーズ。
『マナーと接遇』第5回は、執筆者の方に直にインタビューをさせていただき、この本に込めた想い、伝えたかったこと、どんな点に気を付けて読むとよいかなどを伺ってきました。
インタビューした人
榊原宏昌(さかきばらひろまさ)
『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶマナーと接遇』著者
天晴れ介護サービス総合研究所株式会社代表取締役
1977年愛知県生まれ、京都大学経済学部卒 介護福祉士、介護支援専門員
──本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、本書の企画をお話をさせていただいた時の感想を教えてください。
榊原氏:例えばマナーというと、思いつくのは「敬語の使い方」「目上の人へのあいさつの仕方」などではないでしょうか。
でも、そういった型どおりのマナーや接遇の方法を学ぶだけだと介護現場で活用しづらいと考えて、介護場面ごとの具体的内容からマナーや接遇を理解してもらいたいと思いました。
「やってしまいがち」
「よかれと思ってやっている」
「あいまいなままでやっている」
「よくわからなくて困っている」
といった内容は、実際の介護現場の場面を想定した方が伝わりやすいのではと考えたのです。
──「介護職のマナーと接遇」といったとき、榊原さんが一番伝えなければと思ったことはなんですか?
榊原氏:「はじめに」でも書きましたが、相手が利用者・家族であれ、介護職であれ、他事業所の職員であれ、マナー・接遇の本質は「相手の立場に立った配慮」です。その心を学ぶとともに、その心を言葉や行動で表す具体的な方法も身につける必要があります。
つまり、心だけでは十分ではなく、その心を表すための具体的な行動が必要ということで、この両面を同時に学べる本にしたいと思いました。
──思うだけでなく行動を、ということですね。それをどうやって表そうと思いましたか?
榊原氏:ここは結構難しかったのですが、でも、良い例だけでなく、不適切な例(NG例)から学べることも多くあると考えたのが今回の差別化ポイントだと思いました。それを40以上の豊富な場面に分けて盛り込みました。
──読者に特に読んでもらいたいと思う部分はありますか
榊原氏:改めて考えてみたのですが、「仕方ない?!」と考えてしまいがちな項目です。
具体的にはPART1の1‐(2)「体臭がするのは体質だから仕方ない?!」とか、4―(2)「忙しくなるとイライラするのは仕方ない?!」ですね。
そしてPART2の2-(6)「専門的なアドバイスができないのは、経験がないから仕方ない?!」も是非注目していただきたいと思います。
──「どれもあるあるだな~」という内容ですが、どうしてこれを注目してほしいのですか?
榊原氏:はい、これら「NGな場面」はどれも、「自分には変化する必要がない」と考えていて、不快に思う相手側に変化を要求する内容だからです。
──言われてみれば「体臭」も「体質だから仕方がない」と思いがちですよね。
榊原氏:そうなんです。つまり、これらは、マナー・接遇の本質である「相手の立場に立った配慮」と真逆の立場なのです。わかりやすくいえば「私は悪くない。相手が悪い」と言っていることと同じだからです。ちょっと厳しいでしょうか。
100%自分自身が変化することは難しいでしょうが、努力の跡が見られない人に対して理解を示してくれる人は少ないものです。人間、誰しも得手不得手はあるものですが、頑張ろうとしていれば、人は理解を示し、応援してくれるものだと思います。
結果として、良好な人間関係が保てるのではないか、と思います。
そういう意味では、パート3の(1)「苦手な仕事は、担当を代えてもらう?!」にも共通しますね。
──本書は「普通に読む」以外に活用方法はありますか?
榊原氏:法人内での施設内研修での教材として、新人の入職前のレポート用テキストなどでもご活用いただけるのではないでしょうか。
研修テキストとしなくても、研修の「ネタ」として本書をご活用いただいてもよいかと思います。
──研修で活用する際の効果的な活用の仕方を教えてください。
榊原氏:ぜひ、グループワーク等で活用してもらいたいと思います。
つまり、はじめから読み合わせをするのではなく、この事例では何がよくなかったのか?ではどうしたらよいのか?自分たちの現場で当てはまることはあるか?などを考えて、皆さん自身の答えを作っていってほしいと思います。
こうしたプロセスが現場で活用できる本当のマナー・接遇の力になると思います。
──新人研修で採用いただいている企業様に採用の理由を伺ったところ『マナーと接遇がわかるのももちろんだが、介護現場のリアルさが伝わってよいと思った』とおっしゃっておりました。
榊原氏:ええ!そうなんですね!
──これは、研修講師として全国津々浦々回られている榊原さんならではのことと思います。このことについて何か思うことはありますか。
榊原氏:そうですね。マナーや接遇というものは、そもそも、色々な感じ方をする人がいるからこそ、共通項として生まれたものだと考えています。
なので、本書は、私自身が介護現場に身を置く中で感じたものがベースになっています。つまり、私自身が良いと思ったもの、不適切と思ったもの、そして、どうしたらよいのだろう?と悩んだものばかりなのです。
それが現場の皆さんにも共感してもらえれば嬉しい限りですが、皆さん自身のそれぞれ感覚もあるものと思います。本書をきっかけに、私はこう思うけど、あなたはどう思いますか?という話し合いが活発に行われることを期待します。
──今後に向けて展望はありますか?
榊原氏:本書はあくまで新人介護職員向けなので、発展編としては、リーダー向けのマナー・接遇についても現場においては重要ではないかと考えています。
例えば、ご家族に対して重要な内容の説明をする機会であったり、面談をする際の席次であったり、あるいは他法人の管理職同士の連携等の機会も増えるからです。
法人内における経営陣と接する機会もあるでしょうから、その際のマナーも組織人としては大切ですね。ぜひ、本書をきっかけに、こうしたことについても改めて考えて頂けたら嬉しいです。
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このページの内容は、榊原宏昌『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶマナーと接遇』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
著者:榊原宏昌
本のサイズ:A5判、186頁
定価:1980円(税込)
ステップアップ介護 シリーズについて
「ステップアップ介護」は、経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたい知識と技術を、厳選して紹介する書籍シリーズです。『認知症ケア』『マナーと接遇』『疾患・症状への対応』など、知りたいテーマを7つ用意しました。全巻にわたって、新人介護職の「つぼみちゃん」と、先輩介護職の「はなこ先輩」が一緒にナビゲートしてくれます!
このシリーズは以下のような特徴があります。
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- ●経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたいこと
- ●介護現場の「実践」に直結すること
- ●すぐに知りたいこと
これらがパッと見てわかる!
「良かれと思ってやってしまっている」そんな場面をたくさん取り上げ、それが「どうしてだめなのか」その根拠だけでなく、「どうすればよいのか」までをわかりやすくまとめました。
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