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介護のリスクに関する疑問

車椅子からの転落を予防する方法
―姿勢のくずれは仕方ない!?

 みなさんの周りに、こんな利用者さんはいないでしょうか。

●立つことが難しく、長時間車いすに座って過ごしている
●自分で座り直すことが難しく、時間が経つとだんだん姿勢がくずれてしまう
●気がつくと、いつも車いすの座面から転落しそうになっている


 車いすからの転落は、骨折などの大けがにつながるため、何とか未然に防ぎたいものです。
 ここでは、車いすからの転落を予防するポイントをご紹介しましょう。

車いすは「いす」ではない!

 立つことや歩くことが難しい利用者さんに対して、日中、車いすに座ったままにしてしまっていることはないでしょうか。
 本来、車いすは、歩くことが難しい人が、移動を補助する手段として使用するものです。実際に、座面シートは、後方に傾斜していたり、ゆるい「弧」を描いていたりと、「いす」とは異なる構造をしています。
 したがって、長時間、同じ姿勢で座ったままでいると、それだけで、お尻やからだのほかの部分が痛くなったり、疲れたりします


 このことがいかに負担であるかは、体験してみるとよくわかります。実際に、座ってみましょう。たった数分で辛くなり、ちょっとお尻を浮かせたり、位置をずらしたりしたくなります。
 もちろん、利用者さんも同じです。
 痛みや疲れを感じると、少しでもそれを解消しようとして、姿勢を変えようとします。その調整がうまくいかなかったり、何度もお尻をずらしたりしているうちに姿勢が崩れ、車いすからずり落ちそうになってしまうのです。

 では、どうしたらいいのでしょう…。

基本は「いす」に座ってもらう

 食事やレクリエーションなどで、一定時間座る場合には、車いすではなく、できる限り「いす」に座ってもらうようにしましょう。
 姿勢が崩れやすい車いすで食事をしていると、あごが上がってしまい、誤嚥のリスクが高まります。また、お尻が痛くなり、食事が進まなくなってしまうこともあります。

どうしても一定の時間、車いすに座ってもらわなければならないときは…

 どうしても一定の時間、車いすに座った状態でいてもらわなければならないときは、介護職がこまめに利用者の姿勢を確認する必要があります。
 なかには、自分で痛みや疲れを伝えることが難しい利用者さんもいるでしょう。
 介護職は、「痛みやしびれはないか」「座り心地の悪さはないか」などを、その人の表情などからも確認することが大切です。

姿勢が崩れてしまったら、必ず「座り直す」介助をしよう!

 利用者さんの姿勢が崩れてしまったときは、その都度、座り直す介助を行います
 このときの対応として、「姿勢が崩れてしまったら、傾いている側(下がっている側)にクッションを入れて対応すればよい」と考えがちですが、必要以上にクッションを入れてしまうと、利用者さんは、かえって身動きがとりにくくなり、その結果、褥瘡や拘縮につながる可能性もあります。
 したがって、こまめな観察こまめな「座り直しの介助」が大切です。


*  *  *

 自分で座り直すことが難しい利用者さんの負担を考えたら、長時間、同じ姿勢で座ったままにならないように配慮することができるようになると思います。
 日頃から、利用者さんの立場に立ち、同じ目線でかかわることで、車いすからの転落事故を予防しましょう!

本文監修:神吉大輔

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