介護のリスクに関する疑問
誤薬リスクを回避するための介護職ができる3つのポイント
「誤薬」はあってはならない介護リスクの一つですが、同時に起こる危険性の高いリスクでもあります。中でも、一包化と言って、薬を事前にセットして利用者に飲んでもらうことはよくある光景ですが、セットされた袋の中にある薬が別の利用者のものであった・・・という経験をした方もいるのではないでしょうか。
どうすれば、このような誤薬事故が防げるのか、確認しましょう。
誤薬リスクはよくあるけど、影響は甚大
イラストのような場面が介護施設でみられることは、めずらしくないかもしれません。
利用者が気づかずに、誤った種類、量、時間または方法で薬を飲んでしまうと、直接、生命にかかわることもあります。
複数の利用者が共同で生活をする介護施設では、誤薬の事故が発生する可能性は高く、“転倒”や“感染”などと並んで、介護施設での最大のリスクの一つといえるでしょう。
誤薬リスクが起こる3つの原因
では、誤薬が起こる原因は何でしょう。
考えられるメジャーなものを3つお示しします。
セットされていると“正しい”と思いこんでしまう
多くの介護施設などでは、薬の飲み忘れや飲み間違いがないように、あらかじめ利用者ごとに薬をセットしておくところが多いと思います。
しかし、あらかじめ用意しておいた薬が、間違えてセットされている可能性は排除できません。
服薬ボックスなどの専用の箱に入っていれば、どうしても間違いはないと思い込んでしまいますが、そうすると、ほかの利用者の薬であることに気づけないまま、利用者が誤った薬を飲んでしまうことになります。
飲む直前の「確認」がない
箱にセットされている薬の袋をそのまま持ち出してしまうこともよくみられます。
つまり、袋の中に入っている薬の種類などを確認しないまま、服薬の介助をしてしまうわけです。
利用者に薬を飲んでもらうことだけを考えていると、薬の準備や確認が不十分になり、利用者に必要のない薬を飲ませてしまうことになりかねません。
薬の重要性への理解が不足している
薬にはさまざまな種類があります。いずれも心身の健康を維持したり、疼痛や症状の緩和を図ったりするうえでとても重要なものです。
誤って服用することで、心身の調子が崩れたり、重篤な症状を引き起こしたりすることもあります。
その知識や重大性への理解が不十分だと、意識が向かずミスを起こす一因となります。
誤薬リスク防止のための3つのポイント!
飲む直前の利用者の名前確認を怠らない
具体的には、取り出そうと思っている利用者の名前と、服薬ボックスなどの専用の箱に書かれている名前が合っているかを確認します。
「当たり前じゃないか…」と思われるかもしれませんが、日々忙しく働いている介護職にとって、思い込みや勘違いは起こらないとは限りません。忙しい業務に追われる中ですが、一瞬であってもこの作業があれば、誤薬リスクは大きく減ります。
取り出した袋に書かれている名前が正しいか、正しくても、同じ名字や、一字違いによる間違いも起こりやすいので、注意が必要です。
利用者の飲む薬の種類と数を確認する
名前を確認した後に、袋の中に入っている薬の種類や数、服用する時間を必ず確認しましょう。
忙しい業務の中で、全て暗記していたり、毎回厳密に照らし合わせる必要はありません。
ただ、確認するにあたっては、一人ではなく、複数の介護職同士で確認することが望ましいです。
「最後の砦」としての自覚を持つ
薬のセットや配薬では医療職もかかわります。しかし、利用者に飲んでもらう最終段階でもっともかかわりが多くなるのは介護職です。
医療職も細心の注意を払っていますが、誰でもミスはあります。そのミスを最後に防ぐ「砦」となるのは介護職です。
また、薬の重要性や誤って飲んでしまうことのリスクについて十分に理解し、より強い緊張感を持って服薬の介助にのぞむことが大切です。そうした意識を持つことで上記2点も自ら積極的に意識づけて行うことができるようになるはずです。
一回一回の確認で確実にリスクは防げる
忙しさに追われる中で、誤薬リスク回避のために何か大きな施策を取ることはとても負担になるため、難しいかもしれません。しかし、これまで挙げてきたのは、薬を飲んでもらう前にちょっと確認をするなど、一回一回のほんの一瞬の確認で大部分防ぐことができます。
繰り返しますが介護職は、薬の在庫管理や服薬指導などの服薬管理はできません。
介護職が行うのは、薬の準備や確認、服薬にあたっての声かけといった、服薬介助です。
なかでも、薬の準備と確認は、誤薬を防ぐためにも大変重要な役割をもっています。
一回一回、確実に、リスクの軽減につなげましょう。
本文監修:神吉 大輔
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