介護技術に関する疑問
介護技術の良し悪しは、利用者さんが教えてくれる…
『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ介護技術』著者インタビュー
介護職のみなさんが、現場で出会う「あれっ? これでいいのかな」「ん? 何かおかしいな」と感じる場面をピックアップして、その疑問や課題の解決方法をお伝えする『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ介護技術』。今回は、著者である長藤成眞さんに、執筆に至った背景や本書を通して伝えたいことなどをお聞きしました。
介護職、看護職としての現場経験が豊富な長藤さんのお話からは、「介護技術」のポイントにとどまらず、介護職の本当の役割や強みがみえてくるので、きっと、明日からの仕事のモチベーションにつながると思います。
プロフィール
長藤成眞(ながふじ なるまさ)
看護師・介護福祉士・介護支援専門員
特別養護老人ホームの機能訓練指導員兼看護職員として勤務する傍ら、介護技術、喀痰吸引等の研修講師を務めるなど、介護現場の介護・看護職員の育成に力を注いでいる。
介護職のかかわりによっては、利用者が危険にさらされることもある
──本書では、52の具体的な場面を取り上げて、「なぜ、よくないのか」「どうしたらいいのか」を考え、学んでいきます。まずは、どのような視点でこの「場面」を選んだのかをお聞きしてみました。
長藤さん 介護が必要となる背景には、疾患や障害など、さまざまな原因があります。その特性を理解しないままケアを行うと、利用者さんの状態がさらに悪化してしまうこともあります。つまり、介護職のかかわり次第で、利用者さんは快適に過ごすことも、逆に危険な状況にさらされることもあるのです。まずは、そのことを知ってもらいたいと思っています。
介護職は利用者さんが少しでもよい状態で生活を継続できるようにと考えて、かかわっていると思います。でも、現場では、誤った介護技術や勘違いをしているケアを目にすることが少なくありません。そこで、よかれと思ってやっていることが、実は、利用者さんに不快な思いをさせていたり、状態を悪化させていたりする場面、事故につながる可能性がある場面などを取り上げ、介護職として、必ず押さえておきたい生活支援技術(介護技術)のポイントを理解できるように配慮して、場面を選びました。
介護技術では「根拠」と「アセスメントのポイント」が大事
──本書を使った研修を多数行っている長藤さんに、「介護技術」を教える際に、最も大事にしていることについてお聞きしました。
長藤さん 介護の現場では「あいまいなこと」がとても多いと感じていました。看護師になり、病棟勤務を重ねるなかで、医療の現場ではすべての行為が「治療」という明確な目的に向けて、医学的根拠をもとに実施されていることを学びました。つまり、医療や看護の良し悪しは、「検査数値の改善」や「改善までの時間」などで決まります。でも、それをそのまま介護の現場で展開することは、無理がありますし、利用者さんの状態を考えたら「ムダ」なこともあります。
では、介護技術には根拠が必要ないかというと、もちろんそんなことはありません。私が現場で介護技術の研修を行うときは、たとえば、身体のしくみを解説し、それを根拠にアセスメントのポイントを伝え、「だからこのように行います」と介助方法を伝えることを常に意識しています。一つひとつの動作やかかわりの意味を考えながら行うことで、マニュアル的ではなく、利用者さんのそのときの状態に適した技術を工夫できるようになると考えています。
チームケアのなかでは、介護職としての「強み」を大事にしてほしい
──本書では、「多職種連携」のテーマも取り上げています。介護職として、また看護師としても現場経験を重ねている長藤さんならではの多職種連携の視点をお聞きしてみました。
長藤さん 本のなかでも解説していますが、多職種との連携で大切なのは、利用者さんの望む生活の継続や達成のために、他の専門職の視点を取り入れることです。したがって、常に利用者さんの生活目標を意識し、チーム全体で共有できていることが、まず大切です。そのうえで、介護職自身の役割と強み、他の専門職の役割と強みを活かしながら、「チーム」としてお互いに補い合いながらかかわります。
看護師や栄養士、リハビリ職などの他の専門職は、利用者との距離がもっとも近い介護職の気づきや視点を、とても頼りにしています。つまり介護職の強みは、「利用者にいちばん近い存在」であることです。その役割の重要性を常に意識しておくことがとても大切だと思っています。利用者さんの生活目標を真ん中に置いて、伝える方法、伝えるタイミングなどを考えていきましょう。
「生活」はすべてがつながっていることを伝えたい
──最後に、本書の執筆にあたり、いちばん大切にしたことをお聞きしました。
長藤さん この本では、介護職の方々に「あるある」と共感してもらえるような場面をたくさん切り取って、目の前の疑問や課題を納得しながら解決できる具体的な方法を解説しています。でも、実際には、人の生活というものは、場面で区切られているわけではなく、すべてがつながっています。夜中の睡眠状況、朝の目覚めや気分、体調や食欲、排泄や日中の活動量などはすべて関連していますし、一日の生活だけでなく、昨日と今日、今日と明日、去年と今年もつながっています。2年後、3年後…など、もっと長いスパンでの「継続」の視点も大切です。
介護職は、目の前の状況にどのように対応するかでいっぱいになってしまいがちですが、同じ場面でも、利用者さんの生活や人生の視点で見てみると、異なる対応をしたほうがよい場面も出てきます。本書では、そのようなことも考えて対応できる介護職になることをめざして執筆しました。
加齢や障害によって生じる「生活の分断」をできるだけ少なくして、「継続」を支えるのが介護技術であり、それができているかどうかで介護技術の良し悪しは決まるものです。よい介護技術を提供できているかどうか…。その答えは、利用者さんが教えてくれるものだと思っています。
ぜひ、本書を手に取っていただき、目の前の利用者さんの介護に役立ててください。
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このページの内容は、長藤成眞『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ介護技術』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
著者:長藤成眞
本のサイズ:A5判、238頁
定価:2,420円(税込)
ステップアップ介護 シリーズについて
「ステップアップ介護」は、経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたい知識と技術を、厳選して紹介する書籍シリーズです。『認知症ケア』『マナーと接遇』『疾患・症状への対応』など、知りたいテーマを7つ用意しました。全巻にわたって、新人介護職の「つぼみちゃん」と、先輩介護職の「はなこ先輩」が一緒にナビゲートしてくれます!
このシリーズは以下のような特徴があります。
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- ●経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたいこと
- ●介護現場の「実践」に直結すること
- ●すぐに知りたいこと
これらがパッと見てわかる!
「良かれと思ってやってしまっている」そんな場面をたくさん取り上げ、それが「どうしてだめなのか」その根拠だけでなく、「どうすればよいのか」までをわかりやすくまとめました。
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