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介護技術に関する疑問

転倒のリスクを減らす、高齢者の歩行介助のポイント

 歩行介助の際に、歩行が少し不安定で、バランスを崩しそうな利用者さんを見ると、「転倒したら大変」「また骨折したらどうしよう…」と不安になり、ついつい「しっかりと支えなければっ!」と思いがちです。

 その結果、その人の腕を抱え込み、身体を密着させるような歩行介助になっていないでしょうか。


 介助者はしっかり支えているけれど、利用者さんは何だか歩きにくそうですね。
 この介助方法では、バランスを崩して、転倒してしまうリスクもあり、かえって危険です。

 どうしたらいいのでしょう?

 正解をお伝えする前に、「歩行の動作」を確認するためのちょっとした実験をしてみましょう。

密着されると、実は歩きにくい!

 まず、両足でまっすぐに立ちます。
 次に、片側に重心を移動して、軽くなったほうの足を上げてみましょう。


 簡単に上がりましたね。

 では、今度は、身体の側面をぴったりと壁にくっつけて立ちます。
 その姿勢で、先ほどと同じように、壁と反対側の足を上げてみましょう。


 今度は上がりませんね。

 これは、最初のイラストと同じ状況です。
 介助者が「壁」になり、利用者さんの重心移動を邪魔しているので、利用者さんは、左足を上げることができません。とても歩きにくいだけでなく、転倒の危険もあります。


 それでも何とか左足を前に出せたとして、今度は、右足を上げるために利用者さんが、左側に重心を移動しようとすると、介助者が、「左側に倒れそう!」と感じて、慌てて右側に引き戻してしまうようなことはないでしょうか。
 そうするとまた、重心移動ができずに、今度は右足を上げることもできなくなってしまいます。

 その結果、この利用者さんはまだ歩けるにもかかわらず、「転倒のリスクが高い人」「歩行が困難な人」と判断されて、「車いすが必要!」なんてことにも、なりかねません。

そもそも「歩行動作」とは・・・

 普段、私たちは無意識に歩いているので、気づかないことも多いのですが、「歩く」という動作は、次の3つの動きから成り立っています。


 この3つの動作を妨げるような介助では、安全どころか、かえって転倒のリスクを高めたり、高齢者自身の力を奪ってしまったりする可能性があるのです。

ポイントは、必要以上に触れないこと!

 高齢者の転倒や骨折は、もちろん防がなければなりません。
 でも、介助者が必要以上に利用者さんに触れることで、歩行を邪魔してしまうことがあることも覚えておく必要があります。


 歩行の介助や見守りは、すぐに支えられる位置に立ち、「歩行の3つの動作」がしっかりできているかどうかを確認することが大切です。

本文監修:長藤成眞

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