介護技術に関する疑問
便秘じゃないのに、便が出ない…。
―正しい「便座」を選んで、「気持ちのよい排便」を支援しよう!
利用者さんのなかに、「トイレに行きたい…」と言って、便座に座ったものの、排便までに長い時間がかかる人、結局、出なかった…という人はいませんか。
普段から便秘気味の人、服薬の影響で便が出にくくなっている人などもなかにはいると思います。一方で、原因はよくわからないけれど、スムーズに排便できるときと、できないときがあるという人は、原因が「便座」にある可能性があります。
ちょっと視点を変えて確認するだけで、「なかなか便が出ない…」という利用者さんの辛さを解消できるかも知れません。
まずは、排便の姿勢を確認!
スムーズな排便には、「正しい」姿勢が重要です。
正しい排便の姿勢のポイントは、次の3つです。
- 1 足の裏の接地:足の裏が床にしっかりついていて、踏ん張れること
- 2 前傾姿勢 :軽く前かがみになること
- 3 頸部の屈曲 :あごを引いて腹圧をあげること
この3つを押さえると、腹圧が適度にかかり、直腸と肛門がまっすぐになるので、重力によって便が肛門側へ移動しやすくなり、スムーズに排便できることになります。
さらに、お尻と便座のサイズを確認!
この3点に加えて、もう1つ、重要なポイントがあります。
それは、利用者さんのお尻と便座のサイズが合っていることです。
小柄な利用者さんは、便座に座ったときに、お尻がすっぽりとはまってしまい、肛門が左右から押されて、ぎゅっと閉じてしまうことがあります(イラスト参照)。そうなると、やっぱり便は出にくくなります。
すべての条件がそろうと…
入浴介助の際に、利用者さんがシャワーキャリーに座ったとたんに排便があり、大慌てしたことがある人も多いと思います。
それはなぜでしょうか?
それは、「正しい」排便の姿勢と環境がすべてそろっているからです。
補助便座を試してみよう!
みなさんも便座に座ったとき、何となく「出そうもない座り方」をしてしまい、ちょっとお尻をずらしてみたりすることがあると思います。
自分でそのような調整ができる利用者さんであれば、手すりを持ち、左右に身体を動かして、「いい感じ」に座り直してもらうと、スムーズに排便できるかも知れません。
この動作がむずかしい利用者さんには、肛門が開きやすいように、補助便座などを活用してみてください。スムーズな排便につながる可能性があります。
もちろん、快適な排便には、食事、水分、適度な運動なども大切です。
介護では、生活全体を見る視点(鳥の目)とピンポイントの原因を探る視点(虫の目)の両方で観察することを大切にしたいですね。
本文監修:長藤成眞
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このページの内容は、長藤成眞『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ介護技術』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
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