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手話通訳士ってどんなお仕事?

ドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』でも話題!
手話通訳士ってどんなお仕事?

目次

 2023年にNHKで放送された、社会派ミステリードラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』では、コーダ(ろう者の親を持つ子)の法廷手話通訳士を演じた主演の草彅剛さんの演技が好評を博し、非常に高度な手話技術を有する、社会的意義の高い職業の存在にスポットライトがあたりました。手話通訳士と聞くと、政見放送や官房長官会見・知事会見などの真横で黒いスーツを着て、手話の同時通訳を凛々しく行っている画が思い浮かぶかと思います。この記事では、そんな手話通訳士とは一体どんな職業なのか、そして、手話通訳士になるためにはどんな資格が必要なのかを紹介したいと思います。

1.手話通訳士とは?

 手話通訳士とは「手話を用いて聴覚障害者と聴覚障害を持たない者とのコミュニケーションの仲介・伝達等を図ることを業とする者」※1のことで、手話通訳者における省令の定める公的資格の名称を「手話通訳士」といいます。その職務については、聴覚障害者にかかわるコミュニケーションが円滑かつ確実にできるように聴覚障害者が用いる多様な手段表現や、そのレベルに対応して、仲介・伝達することが求められています。また、これらのコミュニケーションが正確、対等に行われるのに必要な場面や状況についての情報を聴覚障害者と健聴者に提供することも大切な仕事です。似た名称に「手話通訳者」がありますが、こちらは全国手話研修センターが実施する手話通訳者全国統一試験に合格した後、都道府県の独自審査に合格した人を指します。なお、裁判や政見放送など一部の手話通訳は手話通訳士の資格がなければできません。

※1 厚生労働省「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)について」より

 以下に、手話通訳者の業務をまとめます(「手話通訳士養成カリキュラム開発・テキスト作成事業」より)。

手話通訳者の業務(一部)

コミュニケーションをスムーズに行うための環境整備や支援
聴覚障害者に対する様々な情報提供
聴覚障害者に対して、手話通訳の必要性や有効性を理解してもらい、手話通訳を使いこなすことによる社会への主体的な参加を支援する
聞こえる人々や機関に対する手話通訳の有効性や必要性の理解を求め、聴覚障害者の地域生活におけるコミュニケーション環境を整える
福祉、医療、司法等の専門機関に対して、聴覚障害者問題理解や個別の手話通訳場面に関する情報を提供し、聴覚障害者が主体的に利用しやすい環境を整える
福祉機関に所属する場合は聴覚障害者福祉施策についての企画・立案
聴覚障害者とともに行うソーシャルアクションや手話通訳相互の専門知識、技術等の研修

2.手話通訳士のなり方

 手話通訳士になるためには、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する「手話通訳技能認定試験」(手話通訳士試験)に合格し、手話通訳士として登録をする必要があります。年に1度行われる手話通訳技能認定試験は1989年にはじまり、これまで34回の試験が行われ※2、手話通訳士合格者数は現在4,242人に達しています(※2024年4月現在)。試験の詳細や過去問情報については、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターのHPをご覧ください。

 手話言語条例制定の広がりや主張会見の手話通訳、遠隔手話サービス、電話リレーサービスの制度化、障害者による情報の取得及び利用、意思疎通に係る施策の推進に関する法律制定など、新たな動きが生まれるなか、その通訳範囲は聴覚障害者の社会参加の領域拡大に応じてますます広がっており、手話通訳の担い手の確保と質の向上が強く求められています。

※2 令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大により中止

3.手話通訳技能認定試験について

試験案内

試験形式 学科試験と実技試験
試験科目 (1)学科試験
 (ア)障害者福祉の基礎知識
 (イ)聴覚障害者に関する基礎知識
 (ウ)手話通訳のあり方
 (エ)国語
(2)実技試験(全2問)
 (ア)聞取り通訳試験〔音声による出題を手話で解答〕
 (イ)読取り通訳試験〔手話による出題を音声で解答〕
実施機関 社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
試験地 埼玉・東京・大阪・福岡
受験資格 20歳(受験日の属する年度末(3月31日)までに20歳に達する者を含む)以上の者
試験料 2万2千円(税込)
試験日程 学科試験は7月、実技試験は9月に行う
合格基準 学科:4科目の総得点の60%程度の得点
実技:採点評価科目を参照ください

 令和5年度(第34回)の試験結果によると合格率は12.2%で、ここ10年の合格率が10%前後をキープしていることからも、難易度のある資格だということがわかります。合格者の平均年齢は46.9歳で、40代・50代の合格者数が特に多いようです。前年度の学科試験において合格基準を満たした者については、申請により学科試験の免除がされます。学科試験の4項目の出題の意図については、以下の通りです。

試験案内

<障害者福祉の基礎知識> 手話通訳を行う者は、社会福祉全般の枠組みの中における障害者福祉の理念及び障害者福祉に関する基本的知識が必要とされる。
<聴覚障害者に関する基礎知識> 手話通訳を行う者は、聴覚障害者の社会参加を促進するために、福祉、教育、労働等の領域でなされているさまざまな取り組みを知っておく必要がある。
<手話通訳のあり方> 通訳者は、公正な態度、一般教養さまざまなことを理解する知識及び高い通訳技術が求められる。
<国語> 通訳者は、通訳すべき話の内容を正確に理解し、把握したうえで、的確に言い換えたり、まとめたりすることが求められるため、国語についての確実な基礎知識とともに、その理解力や運用能力が必要である。

4.手話通訳士に求められる力

 通訳現場においては、個人情報やプライバシーに関することを知ることになるため、手話通訳者には手話能力だけでなく、高い倫理観とともに公正な態度、忠実に通訳すること、幅広い知識及び高い通訳技術が求められます。このようなことから、手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)では、「障害者福祉の基礎知識」「聴覚障害者に関する基礎知識」「手話通訳のあり方」「国語」、そして、手話通訳技術の科目があり、手話通訳者として必要な技能を求めています。なお、手話通訳技能認定試験に合格後は、手話通訳士として社会福祉法人聴力障害者情報文化センターに登録されたのち、多くの人が一般社団法人日本手話通訳士協会に入会しています。
参考までに、手話通訳士の行動規範と理念が込められた「手話通訳士倫理綱領」を掲載いたします。

手話通訳士倫理綱領(日本手話通訳士協会制定)

 私たち手話通訳士は、聴覚障害者の社会参加を拒む障壁が解消され、聴覚障害者の社会への完全参加と平等が実現されることを願っている。このことは私たちを含めたすべての人々の自己実現につながるものである。
 私たち手話通訳士は、以上の認識にたって、社会的に正当に評価されるべき専門職として、互いに共同し、広く社会の人々と協同する立場から、ここに倫理綱領を定める。

  • 1. 手話通訳士は、すべての人々の基本的人権を尊重し、これを擁護する。
  • 2. 手話通訳士は、専門的な技術と知識を駆使して、聴覚障害者が社会のあらゆる場面で主体的に参加できるように努める。
  • 3. 手話通訳士は、良好な状態で業務が行えることを求め、所属する機関や団体の責任者に本綱領の遵守と理解を促し、業務の改善・向上に努める。
  • 4. 手話通訳士は、職務上知りえた聴覚障害者及び関係者についての情報を、その意に反して第三者に提供しない。
  • 5. 手話通訳士は、その技術と知識の向上に努める。
  • 6. 手話通訳士は、自らの技術や知識が人権の侵害や反社会的な目的に利用される結果とならないよう、常に検証する。
  • 7. 手話通訳士は、手話通訳制度の充実・発展及び手話通訳士養成について、その研究・実践に積極的に参加する。

1997(平成9)年 5月4日制定

一般社団法人 日本手話通訳士協会について
日本手話通訳士協会は、第一回手話通訳士試験(平成元年)が実施されて三年後に、手話通訳士の資質及び専門的技術の向上と、手話通訳制度に寄与することを目的として設立されました。「手話通訳士倫理綱領」の作成を始め、職能集団としての手話通訳士が社会的に評価されるべく、さまざまな活動に取り組んでいます。(http://www.jasli.jp/index.html

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