今月のおはよう21
介護専門職の総合情報誌『おはよう21』最新号の内容をご紹介します。
施設長・リーダーが〝問いかけ〞を変えれば職員・チームは生まれ変わる
『おはよう21』2023年2月号から、特集(施設長・リーダーが〝問いかけ〞を変えれば職員・チームは生まれ変わる)の内容を一部ご紹介いたします。
「何か意見はないですか?」「わからないことがあったら聞いてください」…。
施設長やリーダーがよかれと思って、会議・面談の場で使いがちな〝問いかけ〞です。それによって、職員が積極的に意見を述べたり、率直な思いを話したりしてくれるでしょうか。
職員から意見が出ない、やる気を感じないという状況があれば、それは施設長・リーダーの〝問いかけ〞に問題があるのかもしれません。
今回の特集では、一人ひとりの職員、さらにはチームを変えることができる〝声かけ〞を工夫するためのポイントをまとめます。
〝問いかけ〞の4つのルール
相手が前向きに話したくなる“問いかけ”の4つのルールを押さえておきましょう。
Rule1 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
相手のどこに光を当てるか
職場のコミュニケーションを改善するためには、職員のこだわりや内発的なモチベーションが発揮され、それぞれの「違い」が尊重され、それがチームの試行錯誤や対話の原動力になっていることが大切です。
〝問いかけ〞は「ライト」のようなもので、相手のどこに光を当てるかによって、相手のなかに生まれる感情や、飛び出してくる意見が異なります。
職員の主体性を最大限に高めるためには、日々の〝問いかけ〞の場面において、意識的に相手の「こだわり」にきちんと光が当たるように、ライトの照射角度を調整してあげることが必要です。個人のこだわりは、内発的なモチベーションとともに姿を現します。
●時間がないのに、つい時間をかけてしまう
このようなときに、その人のこだわりが表れます。チームメンバーのこだわりを尊重し合い、活かし合おうとすること。そして、そこから見えてきたお互いの「こだわりの違い」を、チームを豊かにする「個性」として認め合い、深くわかり合おうとすることが必要です。
リーダーが陥りがちなこと
ところが、リーダーは無自覚のうちに、この原則に反して「相手の至らなさ」にライトを当ててしまうことが、少なくないのです。言うなれば、「相手の無能さを露呈させる」ために活用される〝問いかけ〞です。このような〝問いかけ〞は、相手の「個性」や「こだわり」を引き出すどころか、たいていの場合、相手を「謝罪」に誘導して終わります。
ひどいケースでは、相手がすでに「すみませんでした」と謝罪しているにもかかわらず、「本当にわかっているのか?」「わかっていたら、こんなことやらないだろう」などと詰め寄り、論理的に弁明しようがない理屈を掲げて、さらなる謝罪を要求することもあります。
これはもはや、〝問いかけ〞の目標が「自分の苛立ちを鎮める」「失敗によって受けたストレスを発散させる」にすり替わってしまっています。このようなコミュニケーションが続けば、ポテンシャルが引き出されるどころか、職員は「なるべくミスをしないようにしよう」「ミスをしたら、リーダーの機嫌をとらなければ」と考えるようになり、チームの関係性は悪化する一方です。
Rule2 適度に制約をかけ、考えるきっかけをつくる
自由度が高ければ自由に発想できるとは限らない
冒頭でも紹介した、ミーティングにおいて頻発する「何か意見はないですか?」という〝問いかけ〞は、あまりにも漠然としていて、制約がまったくありません。
フォローするように、「何でもよいですよ」「自由に考えてほしい」などと付け加えたとしても、これでは考える糸口がないため、発想が深まりません。人間の思考には、自由度が高すぎると、かえって自由に発想できなくなるという不思議な特性があります。特に、自分の発言の〝良し悪し〞が少しでも「評価される」場面においては、自由はかえって不安の源泉になるのです。
私が以前、ある仕事で有名美術大学出身のアーティストたちとディスカッションしていたときのことです。ふとした場面で「何でもいいから、この白い紙に自由に絵を描いてみてもらえませんか?」と言われて、何を描いてよいかわからず、フリーズしてしまったことがありました。
絵心に自信があったわけではないうえに、特に「描きたいもの」があったわけではないため、本当に何も思い浮かばなかったのです。
けれども、もし「好きな動物でも食べ物でも、何でもよいから、この白い紙に自由に絵を描いてみてもらえませんか。適当にスマートフォンで画像を検索して、それを参考にしてもいいですよ」と言われていたら、手が動いたかもしれません。
相手の思考を動かす
相手の思考を動かすためには、〝問いかけ〞に適度な「制約」を設けて、考えるきっかけをつくってあげることが重要です。
たとえば、「何か意見はないでしょうか。改善点を挙げるのでも、追加したい要素を挙げるのでも構いません」などと、意見の方向性をいくつか示すことも有効でしょう。
あるいは、それでも意見が出なければ、「すでに出た意見のなかで、最も共感したものはどれですか。それはなぜですか?」などと問いかければ、どんな人でも回答はできるはずです。
- 執筆 安斎勇樹
株式会社MIMIGURI
代表取締役Co-CEO
以上は、『おはよう21』2023年2月号の特集の内容です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。
特集
施設長・リーダーが〝問いかけ〞を変えれば職員・チームは生まれ変わる
1 現場によくあるコミュニケーションの課題と〝問いかけ〞の重要性
2 よい〝問いかけ〞とはどんなもの?
3 〝問いかけ〞の4つのルール
4 〝問いかけ〞の3つのサイクル
- 『おはよう21 2023年2月号』
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