今月のおはよう21
介護専門職の総合情報誌『おはよう21』最新号の内容をご紹介します。
ケアに役立つ“認知症の薬”の基礎知識 抗認知症薬からBPSD・不眠に使われる薬まで[特集記事から]
『おはよう21』2022年5月号から、特集(ケアに役立つ“認知症の薬”の基礎知識 抗認知症薬からBPSD・不眠に使われる薬まで)の内容を一部ご紹介いたします。
利用者の多くは複数の薬を服用しています。そのなかには、身体疾患の治療薬だけでなく、認知症に関連する薬もあります。本特集では、抗認知症薬のほか、向精神薬や漢方薬、睡眠導入薬など、認知症の利用者が服用することが多い薬について、基礎知識をわかりやすく整理します。
押さえたい基礎知識と素朴な疑問Q&A
アルツハイマー型認知症の薬
認知症の薬といったら、皆さんは、ドネペジル(アリセプト®)、ガランタミン(レミニール®)、リバスチグミン(リバスタッチ®パッチ、イクセロン®パッチ)、メマンチン(メマリー®)を思い浮かべるでしょう。
ご存じの通り、認知症にはアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などいくつもの種類がありますが、前述の薬は、保険適応上では、主にアルツハイマー型認知症に用います。もちろん、臨床上アルツハイマー型認知症以外の認知症でも、効果が見込める場合は、用いることがあります。
ここでは、認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症に対して用いることを前提に、これらの薬のメカニズムや効果、副作用についてお話しします。
アルツハイマー型認知症の薬のメカニズム
まず、神経細胞のお話をします。1章でも触れていますが、神経細胞はお互いがネットワークをつくって結ばれています。図3のように、細胞同士はシナプスでつながっており、シナプスの間には隙間(シナプス間隙)があります。
アセチルコリン
アセチルコリンは代表的な神経伝達物質で、神経細胞同士だけでなく、神経細胞と筋細胞の信号伝達も行っています。アルツハイマー病では、このアセチルコリンが脳内で減っており(図4-❷)、いかにアセチルコリンをらさないようにするかが重要になります。
ところで、アセチルコリンは正常な状態でも常時分解されています(図4 -❶)。それを行っているのが「コリンエステラーゼ」という酵素です。したがって、このコリンエステラーゼがはたらかないようにすれば、アセチルコリンは分解されずに生き残ります。
コリンエステラーゼをはたらかないようにする薬に「コリンエステラーゼ阻害薬」があり(図4 -❸)、それがドネペジル(アリセプト®)、ガランタミン(レミニール®)、リバスチグミン(リバスタッチ®パッチ、イクセロン®パッチ)です。主な薬理作用や副作用は表3に示すとおりです。
グルタミン酸
グルタミン酸も代表的な神経伝達物質です(図5 -❶)。 グルタミン酸には、動物を興奮させるはたらきがあります。さらに、細胞にダメージを与える(神経毒性)物質であることもわかっています。
つまり、グルタミン酸は神経細胞に適度に作用することが必要で、過度に作用しすぎないようにすることが大切です。
グルタミン酸を受け取る受容体にはいくつか種類があり、その一つにNMDA受容体があります。このNMDA受容体にグルタミン酸をつかないようにさせる薬「NMDA受容体拮抗薬」があります(図5 -❷)。それがメマンチン(メマリー®)です。主な薬理作用や副作用は表3に示してあります。
コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬は、作用メカニズムが違うので、併用して用いられることも多くあります。
最後に私見ですが、これら4種類の薬は、神経細胞によい環境を与えるものだと考えています。神経細胞によい環境を与えるのは、薬だけではなく、適切なケアも重要だと思います。
- 執筆
山口晴保 認知症介護研究・研修東京センター、群馬大学名誉教授
田中聡一 高崎健康福祉大学 保健医療学部 教授
木村武実 熊本駅前 木もれびの森心療内科精神科 院長
大澤 誠 大井戸診療所 院長
木村修代 特定医療法人晴和会 CEO
以上は、『おはよう21』2022年5月号の特集の内容です。このほかにも下記のような内容を解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。
特集
ケアに役立つ“認知症の薬”の基礎知識 抗認知症薬からBPSD・不眠に使われる薬まで
- 1 “認知症の薬”の種類と主な特徴
- 2 押さえたい基礎知識と素朴な疑問Q&A
- 3 “認知症の薬”はこれからどうなる?
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