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今月のおはよう21

おはよう21

介護専門職の総合情報誌『おはよう21』最新号の内容をご紹介します。

重度化防止に役立つ ポジショニング・シーティング・ノーリフティング

『おはよう21』2025年3月号から、特集(重度化防止に役立つ ポジショニング・シーティング・ノーリフティング)の内容を一部ご紹介いたします。

手足が拘縮している、首が反り返り口が開いている、嚥下できずご飯が食べられない、車いすに座れない、身体が硬くなっている……

「重度化」と呼ばれるこうした状態変化の理由をすべて「高齢だから」「病気だから」で片づけるのは要注意です。
利用者を取り巻く環境が要因であることも少なくありません。
裏を返せば、環境の不適合を改善することが利用者の重度化予防につながります。
もちろん、ケアを行う介護職も環境を形成する大事な要因です。

今回の特集では、利用者を重度化させない環境づくりについて、ポジショニング・シーティング・ノーリフティングの体系的実践という観点から考えていきます。


状態別 ポジショニング・シーティング・ノーリフティングの実践

首の反り返り

首が反り返ることで口が閉じなくなり、下顎は下がったままとなります。
円背や身体が後方に突っ張る方によくみられる症状です。

首が反り返ると、舌も落ち込みやすくなります。
舌は筋肉であるので、緊張すれば硬くなり、動きも悪くなります。
そのため、舌の状態は摂食嚥下機能に大きな影響を与えることになります。

口から食べる際は顎を動かして食べ物と唾液を混ぜ、飲み込みやすい状態にします。
そして、下顎と上顎を合わせ、唇を閉じて舌を上顎に押し上げることで嚥下します。
口が開いたままだと、この一連の動作が難しくなるのです。

また、首の反り返りで気管が開くと、誤嚥のリスクが高まります。
口が開いたままになることで嚥下しにくい状況となり、口から食べることができなくなっていると言えるかもしれません。

さらに、誤嚥性肺炎のリスクも高くなります。
誤嚥をしやすくなっているとともに、口腔内が乾燥することで細菌が増えているためです。
口が開いたままの状態は、不快感があることはもちろんのこと、日ごろの健康状態にも大きな悪影響を及ぼします。

ポジショニング

首の反り返りがある場合は、クッションを用いて仰臥位で上半身を支えます。

頭をタオルで安定させ、首に力が入りにくい状況をつくりましょう。
首の角度は少しうつむくくらいに調整します。
口が閉じ、呼吸が落ち着くことがベストです。

嚥下には胸元と下顎の距離が4横指ほどになるのがよいとされています。
フェイスタオルやバスタオル、折り方や枚数で微調整しましょう。

下半身の安定も重要な要素です。
大腿部をしっかりと支えるようにしましょう。

仰臥位で舌が落ち込み(舌根沈下)、無呼吸や異常呼吸音がみられる方は、そもそも仰臥位は適していないかもしれません。
ポジショニングにより全身の緊張が緩み、状態改善に向かっている方は様子見でよいと思いますが、そうでない場合は90度側臥位か、呼吸状態を確認しながら30度側臥位をとりましょう。
舌の落ち込みや唾液でのむせが酷い方は、90度側臥位がベターでしょう。

ノーリフティング

首の反り返りに対してもリフトでの移乗がおすすめです。
脚分離型スリングシートで大腿部をしっかり支えるようにします。
あわせて、枕などで頭を支え、反り返りにくい状況をつくるのがポイントです。

スライディングボードは使用時の刺激によって、余計に首を反り返らせてしまうかもしれません。
寝たままでの横への移乗も同様のことが起きやすくなりますし、首の反り返りの改善にはつながりません。

シーティング

シーティングとしては、ティルトリクライニング式車いすがおすすめです。
首の反り返りが何から引き起こされているのか(円背や突っ張りなど)によっても対応は変わりますが、基本的には安定した姿勢で、リラックスして座ることが大切です。

座面と背面でしっかりと身体を支え、ティルト機能で安定させます。
ティルト角度は、身体の真上にバランスよく頭が乗る位置に調整します。

休憩する場合にはさらにティルトさせて、背中側(後方)に重心を移していきます。
可能な範囲でヘッドサポートを調整し、頭をしっかり支えて口が閉じやすい姿勢(胸と下顎が4横指程度の距離)になるようにしましょう。

続きは本誌でご覧いただけます。

執筆
香川寛 特定非営利活動法人リハケアリングネットワーク一般社団法人日本重度化予防ケア推進協会

以上は、『おはよう21』2025年3月号の特集の内容の一部です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。


特集

重度化防止に役立つ ポジショニング・シーティング・ノーリフティング

  • 1 重度化はなぜ起こる? 環境からの影響を見直そう
  • 2 状態別 ポジショニング・シーティング・ノーリフティングの実践
    首の反り返り/ねじれ/円背/突っ張り/拘縮
『おはよう21 2025年3月号』
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