メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

今月のおはよう21

おはよう21

介護専門職の総合情報誌『おはよう21』最新号の内容をご紹介します。

副作用・誤薬・服薬困難への対応がわかる 薬の基礎知識&服薬介助のポイント

『おはよう21』2024年11月号から、特集(副作用・誤薬・服薬困難への対応がわかる 薬の基礎知識&服薬介助のポイント)の内容を一部ご紹介いたします。

多くの利用者は、持病を抱え、さまざまな薬を服用しています。
しかし、加齢による内臓の機能低下で薬が効きすぎてしまったり、副作用が生じることで、生活に支障をきたすことがあります。
認知機能の低下や嚥下障害により、服薬そのものが難しいケースもあるでしょう。

そんな利用者が抱える薬の困りごとに気づくことができるのは、ふだんの生活をみている介護職です。
本特集では、介護職が知っておきたい薬の基礎知識と服薬介助のポイントを解説します。


事例でわかる 服薬で注意したいポイント

CASE1 抗精神病薬を服用すると過鎮静気味になる

認知症グループホームに入居しているAさん(80代・男性)。認知症があり、抗精神病薬のクエチアピン12.5mgを昼食後に服用しています。

しかし、夜間にせん妄がみられます。そわそわして自室から出て、廊下をうろうろするといった行動が増えたため、寝る前にもクエチアピンが昼と同量追加されました。(1日総量25mg)。

通常用量(25mg~100mg)ではあったものの、過鎮静気味で、日中は傾眠やふらつき、ADL低下がみられるようになり、転倒リスクが増大。薬が原因と思われるアカシジア(静座不能症:じっとしていられず、そわそわ動き回る症状)もみられます。

解決のヒント
介護職の対応で薬を減らす

抗精神病薬の副作用がみられたことから、何とか減薬ができないかと考え、グループホームの職員は、Aさんの状態を再度確認しました。

すると、抗精神病薬を服用する前の昼食前や、薬の効果がなくなり始める17時前後にも、認知症の行動・心理症状はみられないことに気がつきました。
要因として日中帯は職員数が多く、Aさんの対応や見守りができていることが考えられました。

一方、夜間は、行動・心理症状が出るため、夜勤の職員だけでは、対応が難しい状況です。

医療職にAさんの状態と生活環境、介護職の対応を報告・相談したところ、昼の投薬は中止されました。

その後、服用を中止した日中帯でもAさんに行動・心理症状の発現はありません。
日中から夕方にかけて表れていた傾眠やふらつき、アカシジアといった副作用もほぼなくなりました。

情報提供の大切さ

利用者の生活リズムや体調、性格などの情報を最も把握しているのが介護職です。
利用者の情報を医療職にしっかりと伝達することが、減薬や薬の適正化につながります。
コミュニケーションをためらい、伝えるべき情報が一部のみになってしまうと、生活に支障をきたしている副作用が見落とされたまま、投薬されることになります。

一日の流れを伝えることで、不必要な薬を増やさずに済んだり、服用するタイミングの変更などで、減薬が可能となることは少なくありません。
利用者のADLの改善につながるだけでなく、それにより介護職の負担軽減にもなります。転倒リスクも低下するため、介護職も安心して見守りを行うことができるようになります。

CASE2 抑肝散の副作用による低カリウム血症がみられる

認知症グループホームに入居しているBさん(80代・男性)。入居時より長期的・慢性的に抑肝散を服用しています。

入居前のかかりつけ医の処方であるため、服用期間は不明ですが、入居して約1か月もすると、下肢の浮腫(むくみ)が出てくるようになりました。

医療職に症状の報告と相談をしたところ、利尿薬が検討され、併せて採血を実施。採血の結果、低カリウム血症と判断されました。

解決のヒント
副作用を見極めて薬の変更を相談する

抑肝散は認知症の行動・心理症状である興奮などに対してよく用いられる漢方薬で、神経の高ぶりを鎮める効果があります。
一方、低カリウム血症などの副作用が発現することがあります。

Bさんにも低カリウム血症が発現しましたが、ただちに薬物を中止するわけにはいきません。

まずは、Bさんの興奮などの症状がいつ・どのように・何をきっかけに発現したかを医療職に伝え、ほかの薬物への変更が可能かを尋ねましょう。

Bさんの場合、抑肝散は入居前の独居の頃より服用していたものでした。
入居後は、興奮することも少なく、穏やかに過ごしていたため、薬の必要性を再検討。
医師の判断によって一時中止し、しばらく様子をみることになりました。

「偽アルドステロン症」 とは

アルドステロンとは、副腎から分泌されるホルモンで、水分やナトリウム、カリウムなどの濃度を調整するはたらきがあります。

アルドステロンが過剰分泌されると、低カリウム血症や血圧上昇につながります。
偽アルドステロン症とは、アルドステロンが増えていないにもかかわらず、それと同じ症状が表れる状態です。
抑肝散などに含まれる「甘草」の副作用として引き起こされることがあります。

カリウムは、人体に必要なミネラルの一種で、細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つはたらきがあります。
神経の興奮性や筋肉の収縮に関わっており、体液のpHバランスを保つ役割も果たしています。

カリウムの血中濃度が低くなる低カリウム血症の初期症状として、血圧上昇、下腿浮腫のほか、手足のしびれ、つっぱり感、こわばりや徐々に進行する四肢の脱力・筋力低下がみられます。
症状がみられたら、医療職にすぐに相談しましょう。

続きは本誌でご覧いただけます。

執筆
小嶋文良 寒河江市立病院薬局
小林輝信 合同会社SparkleRelation フォーライフ薬局
冨沢道俊 冨沢産業株式会社 とみざわ薬局
雜賀匡史 さいがケアファルマ合同会社 さいが薬局

以上は、『おはよう21』2024年11月号の特集の内容の一部です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。


特集

副作用・誤薬・服薬困難への対応がわかる 薬の基礎知識&服薬介助のポイント

  • 1 疾患別 介護現場でよく使われる薬
  • 2 事例でわかる 服薬で注意したいポイント
  • 3 薬に関するQ&A 服薬介助で押さえておくべき豆知識
『おはよう21 2024年11月号』
  • 本書のお買い求めは、中央法規オンラインショップが便利です。
    年間購読(増刊号2冊含む計14冊)のお客様は、1冊あたりの割引に加えまして毎月の送料をサービスさせていただきます!
    さらに、年間購読の方限定の動画配信サービスもご利用いただけます!
  • 電子版も好評発売中!
    販売サイトはAmazon富士山マガジンサービスから順次拡大予定!