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認知症の人のかすかな記憶をめぐる旅
――『サクラサク』公開記念インタビュー
自分の親におかしな行動がみられたら、あなたはどうしますか? 目の前の現実から目をそむけますか? それとも病院に連れて行って診断を受けますか?
2012年の厚生労働省の調査では、65歳以上の4人に1人が認知症(MCI含む)という結果も出ていて、決して他人事ではない認知症。専門職として認知症の人と接していても、いざ自分の家族がとなると、いろいろな葛藤が生まれるのではないでしょうか。
今回は、そうした葛藤を通して家族の再生を描いた映画「サクラサク」の公開を記念して、認知症になった俊太郎を演じた藤竜也さんにお話を伺いました。
- 映画のあらすじ
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大手家電メーカーに勤める大崎俊介(緒形直人)は部下からの信頼も厚く、将来を嘱望される会社員。しかし家庭では、妻・明子(南果歩)との関係は冷え切り、息子の大介(矢野聖人)はアルバイトを転々とする毎日。娘の咲子(美山加恋)は高校生だというのに毎晩帰りが遅く、何を考えているのかわからない。
そんなとき、同居する父・俊太郎(藤竜也)が認知症を患い、おかしな行動をとるようになる。…
そこに俊太郎がいた
――認知症を患う俊太郎という役を演じるにあたり、心がけたことはありますか?
藤 実際に認知症を患う人に会う機会を作りました。その人の状態がよいときに、娘さんなどを交えて世間話をしたんですよ。僕は役を演じるときに、その人がどこで生まれて、いつ大学を出て、いつ結婚をして、いつ子どもができたという履歴書を自分で作りますが、その履歴書にぴったりの人でした。たたずまいに品があって、紳士。当初は何人かの当事者に会うつもりだったけれど、この方だけで十分だと感じました。そこで、俊太郎という役割ができ上がったんです。そこに俊太郎がいました。
――認知症は、自分自身が失われていく怖さをもつ疾患です。実際に演じてみた感想はいかがですか?
藤 どうしようもないという一言。それが命、生き物の宿命だということですね。実際に本人が病気とどう向き合っていくかは人それぞれでしょう。僕自身がそうなったら、どう受け止めていいのやら…。映画では、俊太郎はきちんと認知症と対峙し、家族がいたおかげでハッピーエンドになりました。しかし、本当に大変なのはこれからでしょうね。
――映画では、父親の病気を通した家族の再生が描かれています。
藤 十分あり得る話でしょうね。家族の中でトラブルがあると、結びつきが強くなる場合とそうでない場合もあります。だから、それまで築き上げてきたものが大切。普段から、お互いを大事にすることでしょうね。僕も含めて、うまくいっているときはわかりません。
映画を観る人によって、出演者それぞれの立場に立って、改めて家族というものを見直す機会になってもらえればと思います。
あったかい人に介護してもらいたい
――本サイトは、認知症の人を介護する専門職の人も多く閲覧します。藤さんは「自分だったらこういう人に介護されたい」というのはありますか?
藤 冷たい人よりはあったかい人がいいかな。たとえ認知症にならなくても、冷たい人よりはあったかい人がいいね。あったかいというのは、いろいろなことを聞いてくれる人です。認知症は、人としての尊厳が崩壊していく悲しさがあるわけなので、人として接してくれる人がいいですね。
――家族も大変ですが、認知症の人を介護する専門職も大変です。
藤 演じてみて感じたのは、専門職の人も仕事に見合うだけの報酬を受けていればいいなということです。大変な仕事だと思います。知識も必要だろうし、人間性もあるでしょう。簡単にできる仕事ではないね。
映画のポイントについて尋ねると、「真っ白な状態で、映画を観た人それぞれが、感じてくれればいい」と藤さん。俊太郎の記憶をたどる旅は、観た人に何をもたらすのでしょうか。映画は4月5日より公開です。
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原作・主題歌/さだまさし
原作:『サクラサク』(『解夏』幻冬舎文庫収録)
主題歌:『残春』(ユーキャン)
緒形直人 南 果歩 矢野聖人 美山加恋 藤 竜也
監督/田中光敏
公式ホームページ http://sakurasaku-movie.jp/