教えて! 境界知能のこと
教えて! 境界知能のこと
1 そもそも、境界知能とは?
境界知能の定義
境界知能とは、国際的な診断基準としての定義はありません。知的障害と健常の間にある状態であり、知能検査の結果においてIQが70~84程度の範囲にある人を指すことが多いです。
どのくらいの人がいるのか
境界知能の人をIQの分布に当てはめて考えると、日本の人口の約14%、つまり約1700万人いることとなります。これは、7人に1人が該当し、学校のクラスでたとえると、35人クラスの場合約5人が境界知能に該当する計算になります。
何か困ることが生じるの?
知的障害や発達障害の社会的理解は進んでおり、福祉的なサービスも用意されています。では、境界知能の人はどうなのでしょうか。外見上はごく普通にみえますが、平均的知能にはない、とても曖昧な存在といえるでしょう。
そのため、社会的な理解は進んでおらず、低年齢の頃は「ちょっと勉強ができない子ども」としか大人の目には映らないかもしれません。しかし、健常の人と比べると実行機能の弱さが目立つ場合があり、日常生活をはじめ、学習、仕事などで困難を抱えることがあります。課題としては、知的障害や発達障害とは診断されないため、必要な支援を受けにくいことが挙げられます。
2 発達障害とは違うの?
まちがわれやすい障害
境界知能の人は、発達障害と誤解されることがあります。もちろん発達障害と併存する場合も多いのですが、境界知能は発達障害とは異なる特性があります。
境界知能の人の特性
境界知能の特性として、学習面では「勉強が全般的に苦手」であり、特に抽象的な概念や複雑な内容の理解が難しい点が挙げられます。また、実行機能の弱さがあり、計画を立てたり、状況に応じて行動を切り替えたりすることが苦手です。
コミュニケーションにおいては、簡単な会話はできますが、複雑な話になると理解が追いつかないことがあります。わかったふりをして相槌を打つなど、大人しいと思われることもあるでしょう。
二次障害の危険も
本人は努力しているのに「なぜできないのだろうか」と悩み、周囲からも「できない子ども」とみられることが多いため、自己肯定感の低さが積み重なり、不安やうつなどの精神的な不調をきたす場合も少なくありません。
3 どんな支援が必要なの?
早期支援の必要性
小学校に入ると、学習面ではだんだん難しいレベルに入っていきます。この段階で合理的配慮などの支援が入ることが望ましいのですが、周囲からはなかなかわかりづらいため、支援につながらないことが多いです。頑張ってもできないことを自覚しはじめ、メンタルヘルスの不調へとつながってしまうこともあります。早めに本人の困難に気づき、苦手さに応じた支援がなされるべきです。
「1 そもそも境界知能とは」のところでお伝えしたように、知的障害でも、発達障害でもない場合、福祉的サービスにつながることは難しいのですが、就学時健診や5歳児健診などを活用し、境界知能の可能性を早期に把握することは重要です。そして、専門家による心理検査や面談を通じて、個々の特性を正確に把握する必要があります。
自立するためによりよい就労へつなげる
境界知能の人は仕事がなかなか続かず、離職を繰り返してしまうケースがあります。自立して生活をしていくためにも、本人に適した仕事をみつけることはとても大切です。そのためにも、社会生活を念頭に置いたライフスキルを早い段階から意識して身につけていくことが重要です。
書籍紹介
教師、支援者、親のための
境界知能の人の特性と支援がわかる本
境界知能について、その特性と支援の内容を詳細しています。障害者就労支援の第一線で活躍されている著者の梅永雄二先生が、本人に適した就労へつながるためのスキルを伝えます。
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