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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第70回 援助者への攻撃や妄想の多いひとり暮らし高齢者の在宅生活をどう支えていくか
(2006年3月号(2006年2月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Iさん(権利擁護センター・専門員)

提出理由

 妄想がひどく、関係機関(ケアマネ・ヘルパーなど)を攻撃対象にし、頻繁に事業所や担当者を変更している方である。関係機関は本人の妄想を怖れ、かなり引き気味の支援をしている。また、本人自身も安心した生活を送ることができない。どのようなアプローチをすれば、安心した生活を送れるようになるのだろうか。

事例の概要

Uさん・87歳・女性・独居
相談経路
平成16年10月6日 担当ケアマネから相談。
「2カ月前に退院された利用者。5月に大腿骨骨折で入院、同室になった方の娘さんと親しくなり、その方がキーパーソンとなって現在の生活に入った。しかし、その方に物を盗られたとヘルパーに訴えるようになり、今は関係が切れている。誰かに頼らないといられないが、関係が近くなると猜疑心をもつようになる。ヘルパーに対しても物盗られを訴えるようになっている」とのこと。
治療歴など
・平成16年5月 自宅で転倒。ヘルパーに発見され救急車で病院搬送。左大腿骨骨折で手術。3カ月後、病院の静止を振り切り退院。その後、当市へ。
・平成16年10月当時:要介護2・障害老人の自立度B2・認知症老人の自立度Ⅰ
・現在:要介護4・障害老人の自立度C1・認知症老人の自立度Ⅰ
・精神科医師の見立てでは「被害妄想型の統合失調症か境界型の人格障害」(診断名はついていない)
・多少血糖値が高いが、食事に留意すればよい程度。
福祉サービス利用状況
訪問介護:毎日(朝0.5・午前1・午後2・夜間0.5)
訪問看護:週2回、訪問リハビリ:週1回
往診:月2回、介護ベッド・ポータブルトイレ
1カ月の福祉サービス利用料:約30万円

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。