再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第68回 眼疾患による苛立ちを訴える妻と懸命に介護する夫の在宅生活をどう支えるか
(2006年1月号(2005年12月刊行)掲載)
スーパーバイザー
高橋 学
(プロフィールは下記)
事例提出者
Kさん(居宅介護支援事業所・看護師)
提出理由
長男世帯と同居しているものの、日中は老老介護となるYさん夫婦。ケアマネジャーはYさん(妻)を献身的に介護する夫の疲労が気になっており、夫の求めるデイサービスをケアプランに組み込んだ。当初、Yさんは喜んで通ってくれていたのだが、暑くなるにしたがってデイを休みがちになった。夫は「無理には勧められないし……」と困っている。
Yさんの精神面の問題にもっと早い段階で(できれば初回面接で)気づき、アプローチできていれば、もう少し違う展開になったのではないかと考えている。どのようにアプローチすればよかったのか、振り返ってもよくわからないため、提出させていただいた。
かかわりのきっかけ
Yさんは緑内障と変形性膝関節症のため、歩行が困難になってきており、外出する機会が減った。眼科・整形外科への通院は夫が付き添っている。IADL面でも夫が全面的支援をしている。しかし、夫自身も前立腺肥大などを抱えているため、いつまで自分が介護できるかという不安をもっている。そのため、病院の相談室に相談したところ、当事業所を紹介された。
利用者と家族の状況
- ・利用者:Yさん(女性・76歳)
- ・家族構成:夫(79歳)、長男(49歳)、長男の妻(46歳)、孫(大学生と高校生2人、全員男子)。長女(46歳)は他県へ嫁いでおり、年に数回孫をつれて遊びに来る程度の交流。
- ・家族との関係等:長男家族と同居しているが、日中は夫婦のみとなる。
- ここから先は、誌面のPDFファイルにてご覧ください。
プロフィール
高橋 学(たかはし まなぶ)
1959年生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学。東邦大学医学部付属大森病院、北星学園大学を経て昭和女子大学大学院福祉社会研究専攻教授。専門は、医療福祉研究、精神保健福祉学、スーパービジョン研究、臨床倫理など。