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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第67回 初期のアルツハイマー型認知症を患う夫と困惑する妻の在宅生活をどう支えるか
(2005年12月号(2005年11月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Tさん(居宅介護支援事業所・社会福祉士)

提出理由

 平成17年5月からのかかわりのため、まだ数回の訪問面接しか行っていません。しかし、1回1回がしんどく、精神的にこたえるものでした。クライアントは70歳代のご夫婦、アルツハイマー型認知症と診断された夫が外出しなくなり、家の中で暴力をふるう、との妻からの訴えで相談援助は始まりました。ケアマネジャーとして、夫を「利用者本人」ととらえ、基本に則り夫との意思疎通を大事にしようと心がけたのですが、夫との会話をさえぎるように妻が発する夫への罵詈雑言に辟易しているのが現状です。
 このしんどい状況をどうすれば乗り越えられるのか、よい方法を知りたいと思って提出しました。

事例の概要

クライアント
K氏(78歳・男性)
事例の概要
 住環境の整った地域に建つ5階建てのマンションの2階(3DK)に夫婦で居住。子育ての時期は生活環境のよい場所でと郊外の一軒家で暮らしていたが、子ども(息子二人)も独立し、夫婦二人の生活には広すぎるので、3年ほど前に現住居へ転居。
 夫は平成16年5月に散歩中に転倒、その時期から不眠、毎晩の飲酒、うつ状態となる。MRIの検査でアルツハイマー型認知症との診断が出ており、薬が処方されている。
 平成17年3月に夫の状態を不安に思った妻が介護保険の申請を行う。同月、要介護認定調査のために在宅介護支援センターの職員が訪問した。
紹介経路
平成17年5月17日
 A在宅介護支援センターB氏より電話にて、新規ケースとしてケアマネジャーを担当してくれないかとの依頼あり。B氏は認定調査で訪問しており、その際に得た情報などをいただく。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。