再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第65回 ターミナルケースへの支援を振り返る
(2004年6月号(2004年5月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Yさん(在宅介護支援センター・社会福祉士)
事例の概要
クライアント
W氏・86歳・男性
既往歴
糖尿病、心臓弁膜症、アルコール依存症(50歳頃~70歳頃まで精神科への入退院を十数回繰り返す)、外傷による硬膜下血腫(70歳頃)
ADL (平成13年12月時点)
移動:掴まり歩き、食事:自立
排泄:一部介助、更衣:一部介助
清潔:自立、要介護2
聴力:かなり低下している
家族構成
妻(81歳、要支援:訪問介護による家事援助を利用)と2人暮らし。一人娘(52歳)が町内居住。
収入
軍人恩給、国民年金、厚生年金=月10万円程度。
生活歴
大正5年、隣県にて8人きょうだいの次男として出生。戦時中は南方に出征。終戦後、現在の土地へ移住。結婚後、農業を営むが、南方でかかったマラリアの後遺症のため思うように身体が動かず、主に妻が働く。本人はビルの守衛の仕事を得、娘も誕生する。その頃から徐々に飲酒量が増え、50歳頃からは1年のうち数カ月はアルコール依存により入院するようになる。70歳頃から飲酒量は減って、80歳頃までは妻と二人で農業を行う。
平成12年秋頃から糖尿病が悪化し、腰痛が強くなる。周囲から入院をすすめられても拒否していたが、平成13年7月、腰痛に耐えられず入院。ADLが低下し、要介護状態となる。介護力は決して十分とはいえなかったが、本人の強い希望により在宅生活を送ることとなった。同年12月8日に退院するも、翌1月11日に心不全の疑いで再入院。完治しないまま、本人の強い希望で同月28日に退院。2月8日、家族や親戚に囲まれ、自宅にて永眠。
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プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。