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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第64回 介護観の異なる家族をどう調整するか
(2004年5月号(2004年4月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Jさん(在宅介護支援センター・看護師)

提出理由

 母親と二世帯住宅で生活を送っている長男夫婦と、同市内に居住している長女の介護方針が異なることから、姉弟の溝が深まり、最終的に修復が難しくなってしまった事例。援助職者自身が姉と弟の間で振り回され、クライアントである母親の力になれなかったのではないかと反省している。経過を振り返りながら、介護観の異なる家族への援助のあり方について意見をうかがい、今後の仕事に生かしていきたい。

事例の概要

クライアント

Y氏、82歳、女性

既往歴

パーキンソン病、骨粗鬆症、痴呆症

ADL

要介護3

利用しているサービス

デイケア、訪問介護、福祉用具貸与

住居

亡夫が住職を務めていた寺に隣接する二世帯住宅(現在は同居の長男が住職を務める)

家族構成

 長女:肌の色が白く、上品で年齢(57歳)より若く見える。2人の子どもは独立し、現在は夫(58歳)と二人暮らし。
 長男:4姉弟の末子。体格がよく、時々威嚇的な話し方をする。50歳。
 長男の妻:細身だがバイタリティがあり、寺に隣接する保育園の園長と住職の妻、3人の子どもの母の3役をこなしている。47歳。
 次女と三女はいずれも遠方に嫁いでおり、介護にかかわることはできない。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。