再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第63回 ケアマネの「個性」を考える ―ケアマネ交替となったケースをもとに
(2004年4月号(2004年3月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Jさん(居宅介護支援事業所・社会福祉士)
事例の概要
クライアント
Kさん 78歳
マンションの12階で妻(75歳)と2人暮らし。長男と長女は他県在住。
ADL等の状況
要介護4。4年ほど前にALSと診断される(症状が出始めたのは8年ほど前)。上肢の筋力がほとんどないが、下肢筋力や呼吸器の機能は保たれており、ゆっくりであれば歩行可能。コミュニケーション能力は、会話もでき、意思疎通にも理解力にも問題はない。奥さんに遠慮している感じで、自分からは積極的に話はしない。元高校の教師。
妻について
自身のことはほとんど語らず、また聞きにくい雰囲気がある。2年ほど前から、泥棒に入られたとたびたび訴えるようになる。Kさんの病状や介護の話になると、疲れた心配そうな様子になるが、Kさんの元気な頃や出身大学等の話になると、誇らしげに話をする。
紹介経路
Kさんの妻より電話がある。「今まで頼んでいたケアマネジャーが馬鹿にしたような物言いをするので断った。市(基幹型在宅介護支援センター)に相談したところ、いくつか紹介され、お宅に電話した」とのこと。「介護保険で引き続きベッドを使いたいので、ケアマネジャーをお願いしたい」
- ここから先は、誌面のPDFファイルにてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。