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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第60回 施設入所は正しい選択だったのか ―援助の「根拠」を考える
(2004年1月号(2003年12月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Nさん(居宅介護支援事業所・介護福祉士)

事例の概要

 以前は別のケアマネジャーが担当していたケース。平成13年5月に緊急入院後、転院の話が出てきてから担当になった。入院前にはクライアントとの面識はなかった。
 緊急入院した病院からリハビリ病院へ転院の話が持ち上がってから、介護者の娘と連絡が始まる。在宅復帰後は、娘を精神的に支え在宅生活の維持を目的としてかかわっていたが、娘がストレスから飲酒を始め、短期間のうちにアルコール依存症の傾向が見られるようになり、親子ゲンカを繰り返すようになった。また、児童期の虐待についての訴えとクライアントを殴りそうになるとの訴えが頻回になり、急遽施設入所へ方向転換した。

クライアント

Dさん 女性・67歳
昭和63年 脳内出血で入院。右半身麻痺・言語障害が残る。1年半入院。
平成13年5月 脳梗塞で緊急入院。その後、リハ病院に移り、老人保健施設へ入所となる。

ADL等に関する基本情報

移動:自宅内は伝い歩きで移動、デイサービス・外出は車いすを利用する。
排泄:着衣の上げ下ろしに一部介助を要する。
食事:配膳すれば自立・常食。
入浴:自宅ではシャワー浴のみ介助で行う。デイサービスで施設入浴を利用。
会話:構音障害あり。ゆっくり話せば何とか通じるが途中で興奮してしまう。
その他:思い込みが激しく、一度思い込むとなかなか訂正がきかない。金銭への執着が強い。
収入:生活費は夫からの仕送り(15万円)、年金収入は月6.7万円、貯金・株の状況は不明。
要介護度:要介護3

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。