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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第58回 多問題家族へのかかわり方を考える
(2003年11月号(2003年10月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Kさん(在宅介護支援センター・ソーシャルワーカー)

事例の概要

A氏 男性・78歳
病歴 気管支喘息、糖尿病、老人性痴呆
生活歴 昭和37年、知的障害者の妻と結婚(当時妻は身重)。息子(B氏)が離婚した後は孫(Cさん)の養育もしてきた。
 平成10年、妻に生活能力がまったくないことから離婚。現在、妻は救護施設へ入所中。
職歴 国鉄の線路やごみ処理場の清掃業務等。
経済状況 厚生年金(月10万円)。持ち家があったが、息子の借金(1000万円)返済のために売却し、借家暮らしとなる。現在は老人保健施設入所中。金銭管理は知人のT氏が担う(T氏は借家の保証人でもある)。
B氏 男性・43歳
病歴 シンナー中毒後遺症
生活歴 中学生の頃からシンナーを吸い、現在も、仕事がなく精神的に不安定な時は吸っている様子(精神科入院歴あり)。平成12年4月、刑務所より出所後は、父親と同居している。
職歴 大型建設機器や電気関係の資格を有するため、仕事があるときは真面目に働く。
経済状況 経済観念が乏しく、給料が入ると友人との飲食代に回す。お金がなくなると両親名義で銀行やサラ金でローンを組んだり、勝手に家財を売ったりする。
Cさん 女性・16歳
生活歴 乳児のころ両親が離婚(母親は行方不明で一度も会いに来たことがない)。父親(B氏)が売春行為をさせようとしたことから、中学2年の時に児童養護施設へ入所。平成13年4月、卒業と同時に夜間高校進学を理由に父親が引き取るも、1日も登校せず。現在、一応父親と同居のかたちになってはいるが、友達の家などを泊まり歩き、不在のことが多い。
職歴 何度か面接を受けるも、「中卒」ということで不採用が多く、本人の就労意欲も低い。
経済状況 男友達や彼氏から援助してもらっている様子。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。