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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第56回 なぜ「クライアント不在」の援助になってしまったのか
(2003年9月号(2003年8月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Bさん(在宅介護支援センター・社会福祉士)

提出理由

 痴呆のある全盲の男性クライアント。現実認識ができていないため、こちらで援助を進めたが、本当に妥当な援助の方向性だったのか、ご本人を抜きにしてしまったのではないか、足りない部分はなかったかなどを検証したい。

クライアント

Dさん 81歳、男性、全盲、自宅でマッサージの仕事をしてきた

援助の経過

平成15年4月6日
 Dさんの同居人Sさんが来所。
 平成14年8月に発熱が続き、体調不良が顕著になった。近くの病院を受診して検査を受けると、結核菌が検出されたため、療養所に入院となった。最近になって、療養所から「結核菌は出ていない。前立腺がんの疑いがあり、こちらでは手術等ができないので、泌尿器科のある病院に転院したほうがいい」と再三連絡がある。
 同居人である自分(Sさん)は血縁ではないし、仕事ももっているため、自分がみていくことはできない。身の回りのことをこちらがしなくてもいいような病院に転院させたいので教えてほしいとのこと。
 まず、DさんとSさんの関係を聞き、現在の病状が実際にどのくらいなのかを確認するため、当方より療養所へ連絡を入れることにする。その上で、転院が必要なら行き先を考えていくことにする。
 同日、療養所の婦長に連絡。結核については問題なし。「前立腺がんの疑いが強く、腎臓にも転移している可能性がある。早く転院したほうがいい」と言われる。
 病院情報を集める。隣市に療養型をもっていて泌尿器科を有する病院がある。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。