再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第55回 痴呆の妻を抱える家族をどう理解し、かかわるか
(2003年8月号(2003年7月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Aさん(民間居宅介護支援事業所・社会福祉士・介護福祉士)
事例の概要
Nさん 女性 61歳
6年前にアルツハイマー病を発病。夫(月~金、9:00~20:00就労で不在)と次女(就労で日中不在)との3人世帯。長女(生後6カ月児を育児中)と長男世帯(主に長男の妻)が近所に在住しているため介助に訪れている。
本人は専業主婦。大学で教壇に立っている夫(現在、教授)を支えながら子育てをこなしてきた。また、夫の職業上来訪者も多く、その対応もしてきた。どちらかといえば人見知りするタイプで、上品なおとなしい性格。痴呆の進行とともに人見知りが強くなり、外部の人には緊張してしまう。こちらの問いは理解できている面もあるが、本人からの発語は理解不能。お茶を入れるなどの動作もできなくなっている。時折、不安が強くなると近所の知人宅に行ってしまうなど徘徊もあり、常時見守りが欠かせない。痴呆のほかには、病気はなし。
紹介経路
平成14年3月、本人の友人で地区担当の民生委員より電話相談。「痴呆があり、要介護2の認定を受けた知人がいる。まだサービスは利用していないが、介護をしている娘が世話をできなくなるので、その代わりにヘルパーを頼んだほうがいいのではと思い、相談した」とのこと。
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プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。