再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第46回 膠着状況にある利用者と家族にどうアプローチするか
(2002年11月号(2002年10月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Fさん(在宅介護支援センター・ソーシャルワーカー)
事例の概要
Nさん 79歳 男性
病歴
変形性腰椎症、慢性気管支炎、胃1/2切除
ADL
変形性腰椎症のため腰が曲がっている。下肢筋力の低下もあり、そろそろと歩く。外出時には電動バイクを使用している。
生活歴
- ・県内で生まれる。
- ・31歳で結婚。独身時から鉄工所に勤めており、結婚してからは自宅横に工場を建て、鉄工所を経営する。
- ・67歳の時、不景気を理由に鉄工所を閉め、以後農業に専念する。
- ・平成10年7月に妻をがんで亡くし、独居となる。隣の市に住む息子夫婦がときどき訪ねて来る。
- ・本人にはアルコール依存があり、ビールを食事代わりに飲んでいるため、食事管理ができていない。
- ・脱水と肺炎のため、平成10年8月に10日間入院となる。
- ・その入院中、本人より支援センターに、「家に帰ってからの家事ができない。特に食事が困る」と相談があり、長男とも相談し、退院後ホームヘルプサービスと配食サービスを利用することになる。
- ・その後も、持病の腰痛、気管支炎、脱水等で入退院を繰り返す。
- ・長男は、ひとり暮らし生活を心配し、平成13年5月、本人が住んでいた家を建て替え、同居する。
紹介経路
前担当者より引継いで、平成12年10月から担当することになった。本人の了解を得るため、同行訪問する。本人の情報については、そのつど前担当者から聞くつもりで、詳しくは把握していなかった。
- ここから先は、誌面のPDFファイルにてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。