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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第36回 ともに要介護状態にある老夫婦世帯を支えるために必要な情報収集のあり方を考える
(2002年1月号(2001年12月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Bさん(在宅介護支援センター・ソーシャルワーカー)

事例の概要

クライアント
Nさん、大正4年生まれ 85歳

家族構成
 夫婦二人暮らし。妻は81歳。子どもはいない。夫婦とも要介護状態であり、訪問介護等のサービスを使いながら家での生活を続けている。近くに甥が住んでおり、緊急時等には車で病院へ連れて行ってくれたり、手続きをしてくれるが、甥も70歳を超えており、介護については困難な様子。

経済状態
 夫婦で合わせて月28万円くらいある(夫20万、妻8万)。家は一戸建てで持ち家。

これまでの経緯

 平成7年、Nさんの妻が慢性関節リウマチ、極度の貧血、変形脊椎症と診断される。貧血により動作時の息切れがひどい状態であり、杖が必要であった。リウマチによるこわばり、痛みもあった。
 平成8年、Nさんが右大腿骨骨頭骨折で入院したが手術ができず、以来車いすでの生活になる。それから2年間は誰の助けもほとんど借りずに生活を続けていたが、妻の貧血症状の悪化にともない動作時の息切れ状態が多くなり、家事全般が困難になっていく。その状態を主治医がみかねて、在宅介護支援センターに連絡してきた。週4回のヘルパー利用を開始する。
 平成12年9月、NさんのADL低下によりベッドから車いすへの移乗ができなくなる。また、ポータブルトイレへの移乗もできなくなり、おむつ交換が必要になる。Nさんは妻に気をつかって、夜間の排泄等でも自分でポータブルトイレに行こうとするため、妻も気になって寝られない(実際にベッドから落ちてしまったこともある)。妻も心身ともに疲れが溜まってしまい、少し休みたいとの希望がある。また、車いすへの移乗、着替え、おむつ交換が妻にはできないため、今後の生活に不安をもっていた。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。